
水道管とブルーシートとおむつの会社が、電池づくりを支える
特集|CEATECの電池村
水道管とブルーシートとおむつの会社が、電池づくりを支える
CEATEC 2026の電池サプライチェーン協議会の共同ブースに、デジタルの総合展としては意外な社名が並ぶ。水道管の栗本鐵工所、ブルーシートの萩原工業、紙おむつの素材で知られる日本触媒、釣り糸のクレハ。どの会社も電池の材料か工程を一つずつ担っている。本特集では、この共同ブースを「電池村」と呼ぶ。リチウムイオン電池をつくってから使い終わるまでの流れに沿って、出展する上場10社を紹介する。
公開日 ・著者 ENVALITH(株式会社エンヴァリス)
※本コンテンツは日本語のみで配信しています。
CEATEC 2026と「電池村」
1-1. 開催概要
CEATEC 2026は、2026年10月13日(火)から16日(金)まで幕張メッセ(ホール4〜8)で開かれる。主催は電子情報技術産業協会(JEITA)、開催テーマは「Transformation -企業が、産業が、そして社会が変わる-」。出展者は国内外の821社/団体で、うち海外が31か国・地域から194社/団体、スタートアップ・大学研究機関は246社/団体と、記録が残る2014年以降で最多となった(10月6日の主催者発表)。主催者は11万人超の来場を見込む。
10/13〜16、入場無料。全来場者が事前登録して入場する
うち海外194(31か国・地域)、スタートアップ・大学研究機関246。前回CEATEC 2025は810社/団体
ホール6・6H141、35コマ。資源・精錬から部素材、電池製造、リユース・リサイクルまで
共同ブースの上場企業系34社(ENVALITH集計、10月6日時点)のうち、電池の材料か工程を一つずつ担う10社
出典:CEATEC 2026 公式サイト(2026年10月6日プレスリリース)、CEATEC 2025 実施報告書、出展者一覧(2026年10月6日時点)、電池サプライチェーン協議会の発表(2026年9月29日)をもとに ENVALITH 集計
CEATEC 2026 公式サイト(開催概要・出展者一覧・コンファレンス)
ceatec.com
1-2. ホール6の「電池村」と10社
本特集で取り上げるのは、ホール6にある電池サプライチェーン協議会(BASC)の共同ブースだ。協議会によると、58社・団体が参画し、資源・精錬から部素材、電池製造、リユース・リサイクルまでを一つのブースで示す構成だという。このうち34社は上場企業かそのグループ会社で、JX金属・住友金属鉱山、平田機工・芝浦機械、パナソニックエナジー・トヨタバッテリー・GSユアサ、三井物産・豊田通商といった大手と、本特集の10社が同じブースに出展する。
10社は、リチウムイオン電池の材料か工程を一つずつ担う会社から、工程の流れに沿って選んだ。プライム8社・スタンダード2社で、時価総額は1,000億円以上1兆円未満の中型が6社、1,000億円未満の小型が4社、10社で最大の日本触媒でも3,900億円だ。完成品の展示会では目に入りにくい顔ぶれである。
1-3. 政策資金は、電池の「作る側」にも届く
高市内閣が2026年7月21日に閣議決定した「日本成長戦略」の官民投資ロードマップは、「クラウド・データセンター、蓄電池」の品目全体で2035年度までに32.7兆円の官民投資を想定する。ただしロードマップの金額は目安であり、国の資金が実際に企業へ渡る経路の一つが、経済安全保障推進法にもとづく支援制度だ。企業が蓄電池や部素材・製造装置の設備投資や技術開発の計画、すなわち供給確保計画を国に申請し、認定を受けると「蓄電池の製造サプライチェーン強靱化支援事業」の助成の対象になる。支援は蓄電池そのものに限らず部素材と製造装置に及び、予算は2022年度から2024年度の補正・当初を合わせて1兆52億円である。本特集の10社のうち、クレハ(バインダー)、関東電化工業(電解液添加剤)、日本触媒(電解質)、西部技研(リコーと共同の電極製造装置)の4社が、認定を受けた計画を持つ。
政策が「蓄電池」と呼ぶ投資は、セルを作る会社だけでなく、バインダー・混練機・塗工機・スリッター・ドライルーム・電解液と電解質・回収を担う会社の設備投資や受注にも関わる。本特集が取り上げるのは、この「作る側」の10社である。
日本成長戦略(内閣官房)。官民投資ロードマップの決定版 PDF を掲載
cas.go.jp
電池村の10社 ― 電池をつくって、使い終わるまで
10社を、電池の材料・製造・リサイクルの順に並べる。各社の「どんな会社」はENVALITHの企業情報ページの企業概要から、「電池との接点」は各社の製品情報と開示から、「注目ポイント」は沿革と直近の動きから書いた。10社はいずれも電池サプライチェーン協議会の共同ブースに出展する。決算の数字は各社の開示とENVALITHの企業情報ページで確かめられる。
電極をつくる
セルを組んで、液を注ぐ
使い終わった電池
糊
- クレハ
練る
- 栗本鐵工所
塗る
- テクノスマート
切る
- 萩原工業
乾かす
- 西部技研
電解液
- セントラル硝子
- 関東電化工業
- 日本触媒
セル
電池メーカー(10社外)
回収
- 松田産業
- 明和産業
電極をつくる
糊
- クレハ
練る
- 栗本鐵工所
塗る
- テクノスマート
切る
- 萩原工業
セルを組んで、液を注ぐ
乾かす
- 西部技研
電解液
- セントラル硝子
- 関東電化工業
- 日本触媒
セル
電池メーカー(10社外)
使い終わった電池
回収
- 松田産業
- 明和産業
厳密な製造工程図ではなく、本特集の読み順(電池の材料・製造・リサイクルの流れ)。工程の区切りと各社の持ち場はENVALITHの整理で、協議会やCEATEC公式の区分ではない。各社の間の取引関係を示すものでもない
出典:各社の製品ページ・決算資料、CEATEC 2026 公式サイトの出展者一覧(2026年10月6日時点)をもとに ENVALITH 作成
電極をつくる
クレハ|機能樹脂・化学製品・食品包装材を軸に展開する特殊化学品メーカー
どんな会社:1944年設立。フッ化ビニリデン樹脂(PVDF)やPPS樹脂などの機能製品、農薬・医薬の化学製品、家庭用ラップ「NEWクレラップ」と釣り糸「シーガー」の樹脂製品の3つを主な事業とし、売上収益は約1,617億円(2026年3月期)。素材を電池・自動車・医療などの産業に売る事業と、消費者に直接届くブランドの両方を持つ。
電池との接点:糊の係。正極・負極の活物質を金属箔に保持するPVDFバインダー(糊)「KFポリマー」を電池メーカーに供給する。車載用のPVDFバインダーで世界シェア約40%(2022年の会社説明)。
注目ポイント:釣り糸「シーガー」の主な原料は、電極の糊と同じPVDF。いわき事業所で年産8,000トンのPVDF増強(投資予定総額約750億円。試運転費用の計上などで700億円から変更)は2026年4月に完工した。この増強は経済安全保障推進法の供給確保計画の認定を受けている。一部の設備は2026年度下期に固定資産へ編入する予定だ。一方で中国・常熟の増強は2024年に取りやめた。
栗本鐵工所|水道インフラ向けダクタイル鉄管を核に、機械・建材の3事業で社会基盤を支える総合メーカー
どんな会社:1909年創業。水道用のダクタイル鉄管とバルブをつくるライフライン事業が売上高約1,281億円(2026年3月期)の約52%を占め、水道事業体のインフラ更新・耐震化の需要を受ける。鍛造プレス・混練機などの機械システム事業、化成品・建材の産業建設資材事業が続く。管を売るだけでなく、管路の設計・施工・点検・保守まで手がける形へ事業を広げている。
電池との接点:電極スラリーを練る係。二軸連続式の混練装置「KRCニーダ」で、粉体のバインダーと活物質から電極スラリーまでを1台で連続して練る。クボタとは2024年2月に電極スラリー向け連続式生産システムの共同開発開始を発表した。2026年5月には日立ハイテクと、フィジカルAIを使った混練条件の最適化で協業を始めると発表した。
注目ポイント:同じく水道管を手がけるクボタが、電池では共同開発の相手。中期経営計画では「二次電池等粉体関連事業」を成長牽引事業に置き、2026年4月に電池サプライチェーン協議会に加入した。10月13日の取材では、電池の製造設備を2030年に向けた成長分野と位置づけ、研究開発の初期段階から量産の立ち上げまで顧客に伴走する形へ転換を進めていると説明した。電池の製造では混練がバッチ式から連続式へ移りつつあり、同社の連続式混練機の納入実績と案件規模は、すでに海外が国内を上回るという。
インタビューレポート(CEATEC 2026特別編)2026年10月14日 13:05 JST
国土強靭化に加え電池向け設備もテーマに、連続混練技術と伴走ソリューションを活かし電池投資拡大局面を捉える
テクノスマート|塗工乾燥装置を核とする受注生産型産業機械メーカー。ディスプレイ・機能性フィルム・エネルギー分野に展開
どんな会社:1912年に大阪で井上鉄工所として創業し、2012年に現社名に。フィルム・金属箔・紙に機能を付ける塗工乾燥装置を、顧客ごとの一品一様の受注生産でつくる。主な顧客はスマートフォンやテレビ向け光学フィルムのメーカーや車載用リチウムイオン電池のメーカーなどで、輸出比率は54.3%(2026年3月期)。売上高は約207億円、受注残高は約237億円(2026年3月末)。
電池との接点:塗って乾かす係。電極スラリーをアルミ箔・銅箔に塗って乾かす「2次電池電極用塗工乾燥装置」と、セパレーター用の塗工乾燥装置をつくる。
注目ポイント:1929年に繊維工場の乾燥機用エロフィンチューブの製法を国内で初めて開発した(会社沿革)。会社は、この開発以来、さまざまな業界の塗工・乾燥工程のソリューションを手がけてきたと説明する。2025年3月には滋賀事業所の新実験棟でテスト機3台を稼働させた。中期経営計画では、全固体電池とペロブスカイト太陽電池を「既に受注実績がある領域の例」として掲げる。
萩原工業|フラットヤーン技術を核に合成樹脂加工製品と産業機械を製造・販売する総合メーカー
どんな会社:1962年、岡山・倉敷で花ござの縦糸用のポリエチレン糸から始まり、1964年に開発したフラットヤーン(フィルムを細く裂いて延ばした糸)でブルーシート「ターピー」や土のう袋、農業・包装資材をつくる。合成樹脂加工製品が売上高約319億円(2025年10月期)の約82%、スリッターなどの機械製品が約18%。インドネシア・米国・パラグアイ・中国・タイにも拠点を持つ。
電池との接点:幅を切る係。電池の正負極の集電体に使う銅箔・アルミ箔の長尺原反を所定の幅に切って巻き直す「金属箔用スリッター」をつくり、2025年10月期に初号機を納めた。
注目ポイント:シートを「切る・巻く」技術を金属箔向けに展開したのが、電池向けのスリッター。2023年にIHI物流産業システムから金属箔スリッターの技術を取得し、会社は「スリッター業界国内トップシェア」と説明する(率・基準年は示していない)。
セルを組んで、液を注ぐ
西部技研|ハニカムローター技術を核に、デシカント除湿機・VOC濃縮装置を世界50か国以上に展開する空調機器メーカー
どんな会社:1965年設立、福岡の空調機器メーカー。吸着剤を含ませたハニカムローターを心臓部にしたデシカント除湿機・VOC濃縮装置・全熱交換器をつくり、50か国以上に販売網を持つ。機器の販売に加えて、ドライルームの設計・据付工事・定期メンテナンス・ローター交換までのサービスも手がける。売上高は約343億円(2025年12月期)で、2023年10月に東証スタンダードに上場した。
電池との接点:乾いた空気の係。リチウムイオン電池の製造工程では空気中の水分が電池の品質を損なうため、低湿度のドライルーム(供給露点マイナス90℃まで対応)をつくる。
注目ポイント:創業者は九州大学工学部の研究助手で、大学に勤めながら企業の研究を受託したのが始まり。2025年12月期のデシカント除湿機の受注高は、前期比48.6%増の223.7億円だった。リコーと共同の電極製造装置の計画が経済安保の供給確保計画に認定されている。子会社の西部技研DRエンジニアリングが認定を受けていた蓄電池製造装置の計画は、2026年7月に認定事業者が合弁会社SwiftfabEnergySystems(2026年4月設立。西部技研DRを含む9社が出資)に変わった。
関東電化工業|フッ素技術を核に半導体用特殊ガス・電池材料を世界供給する化学メーカー
どんな会社:1938年設立、群馬県渋川市と岡山県倉敷市(水島)に工場を持つフッ素化学メーカー。売上高約654億円(2026年3月期)の約80%が精密化学品事業で、三フッ化窒素などの半導体用特殊ガスをつくる。主な販売先はサムスン電子(売上の22.0%)とキオクシア(18.9%)。同じフッ素の電解技術でリチウムイオン電池用の電解質もつくる。
電池との接点:液に溶かす塩の係。電解液の塩にあたる電解質LiPF6(六フッ化リン酸リチウム)を水島工場でつくり、年5,400トンから8,000トンへ増強中。稼働時期は需要動向を見て判断するとしている(2026年5月の決算説明資料)。
注目ポイント:会社の説明では、LiPF6を国内で唯一生産し、中国を除く生産企業は同社を含めて2社だけ(2026年3月の会社資料)。2023年には米Mexichem Fluorに製造技術をライセンスし、契約上は技術支援料とロイヤリティを受け取る。経済安保の供給確保計画では、LiPF6の増強とは別に「電解液添加剤」で認定を受けている。
日本触媒|アクリル酸・高吸水性樹脂を基幹に多様な高機能化学品をグローバルに製造販売する化学メーカー
どんな会社:1941年にヲサメ合成化学工業として設立し、同年に無水フタル酸を国内で初めて工業化。紙おむつに入る高吸水性樹脂(SAP)を米国・ベルギー・インドネシア・中国などでつくり、米国・ベルギー・インドネシアでは原料のアクリル酸から一貫生産する。事業はこのマテリアルズ事業と、電子材料・電池材料・触媒などのソリューションズ事業の2本柱で、売上収益は約3,999億円(2026年3月期)。研究開発スタッフはグループ全体で約870人、連結従業員の約2割。
電池との接点:もう一つの塩の係。電解質LiFSI「イオネル」(主電解質にも添加剤にも使われる)をつくり、中国・湖南省の合弁(出資比率38%)で2027年に年12,400トン体制、北九州市若松区に年3,000トンの国内工場(2028年12月に商業運転予定)を計画する。
注目ポイント:紙おむつに使う高吸水性樹脂で世界トップシェア(会社説明、2022年の自社調べ)の会社が、電池の塩もつくる。北九州工場の投資額は2026年8月に約430億円へ増えたが、会社は経済安保の供給確保計画の最大助成額約125億円に変更はないとしている。
セントラル硝子|フッ素化学技術を核に電子材料・エネルギー材料・ガラスを展開する素材メーカー
どんな会社:1936年に宇部曹達工業として設立。社名にガラスを掲げるが、今は半導体プロセス用の特殊ガス(電子材料)、リチウムイオン電池用の電解液(エネルギー材料)、医療化学品・肥料など(ライフ&ヘルスケア)、建築・自動車用ガラスやガラス繊維(ガラス)を主な事業とする素材メーカーで(開示セグメントはこの4つに「その他」を加えた5つ)、売上高は約1,445億円(2026年3月期)。研究開発費は77億円。
電池との接点:注ぐ液の係。電解質・溶媒・添加剤を電池メーカーごとに調合した電解液を、日本・韓国・中国・チェコでつくる。
注目ポイント:電解液を含むエネルギー材料は、売上高が2023年度の324億円から2024年度に150億円へ半減し(会社の表現)、能力増強の投資計画を見直した。一方で半導体向けの特殊ガスは、次世代メモリーや2ナノ世代以降のロジック向けの新製品を2024年に量産開始した。2026年3月期の電子材料の売上は262億円(前期比8.1%増)。2023年4月には国内の建築用・自動車用ガラス事業を吸収分割で子会社に承継させている。
使い終わった電池
松田産業|貴金属リサイクル・電子材料と食品加工原材料のグローバル調達を両輪とする専門商社・製造会社
どんな会社:半導体・宝飾・歯科の現場から貴金属を含むスクラップを回収し、自社で製錬して金・銀・白金族の地金や電子材料にして売る貴金属関連事業が、売上高約6,878億円(2026年3月期)の約83%。もう一つの柱は、海外拠点を使って世界各地から水産・畜産・農産の食品原材料を調達し、国内の食品メーカーに供給する食品関連事業。金・銀の地金はロンドン地金市場協会(LBMA)の認定を受けている。
電池との接点:回収の係。車載用・定置用の大型リチウムイオン電池を全国から回収して4か所の積替保管施設で解体する。太平洋セメントとの共同スキームでは、焙焼した処理物を破砕・選別して、ニッケル・コバルト・リチウムを含むブラックマスを回収する。
注目ポイント:1935年に写真フィルムから銀を回収する事業として始まり、1948年には近くのマヨネーズ工場で捨てられていた卵白をかまぼこのつなぎにする提案から食品事業が生まれた。会社の説明では、不用になったものから新たな価値をつくる点が両事業に共通する。2025年2月には電池リサイクル拡大のため2社の全株式を取得し、完全子会社にした。

明和産業|旧三菱商事系の専門商社。化学品・石油製品・資源を国内外で多角展開
どんな会社:1947年、財閥解体で旧三菱商事が解散した際に化工品部門などの49人が設立した専門商社。化学品・石油製品(潤滑油など)・資源・電池材料・自動車部品を仕入れて国内外の製造業に売り、売上高は約1,649億円(2026年3月期)。1962年に中国の「友好商社」に指定され、中国ビジネスは売上のおよそ3分の1(会社説明。2026年3月期の顧客所在地別では28.3%)。
電池との接点:材料を届ける係。正極材・負極材・電解液・セパレーターとその原料を扱い、負極材原料の球形化黒鉛をつくる中国・青島の合弁(設立時の出資比率14%)と、湖南省長沙で中古の車載電池を蓄電システムとして再利用する会社(17%。トヨタ中国も17%)に出資する。
注目ポイント:2025年7月に廃プラスチックのリサイクル会社タカロクを完全子会社にし、会社はサーキュラーエコノミー事業の推進を取得の理由に挙げる。
ENVALITHの整理と見解
CEATEC 2026のテーマは「Transformation」。各社の転換が開示にどう表れているかを、3点にまとめる。
本業からの広がり
10社には、電池とは縁遠い事業で知られる会社が多い。いずれもその事業は続けたまま、電池にも手を広げている。水道管の栗本鐵工所は混練機を、ブルーシートの萩原工業はスリッターを電池向けにも展開し、釣り糸のクレハは、それと同じ樹脂で電極の糊をつくる。紙おむつの素材で知られる日本触媒は、電解質を手がける。
EV減速の逆風と、次の需要
EV需要の減速は、各社の数字と説明に表れている。セントラル硝子の電解液を含むエネルギー材料は売上高が2023年度の324億円から2024年度に150億円へ半減し(会社の表現)、テクノスマートのエネルギー関連機器の売上高は2026年3月期に2024年3月期から約24%減った(ENVALITH算出)。一方で、全固体電池、定置用蓄電池、ペロブスカイト太陽電池といった次の需要も各社の計画に並ぶ。パナソニックエナジーはデータセンター向け蓄電システムの売上を2028年度に1兆円規模へ伸ばす計画を示しており、定置用の需要は車載とは別の経路で電池村に関わる。
経済安保と、中国との距離
クレハはいわき事業所のPVDF増強(約750億円)を2026年4月に完工させた一方で、中国・常熟の増強は2024年に取りやめた。関東電化工業は、電解質LiPF6の国内で唯一の生産者だと説明する。逆に明和産業は、中国の黒鉛合弁と中古電池の再利用会社に出資し、中国ビジネスが売上のおよそ3分の1を占める(会社説明)。日本触媒は北九州市に電解質の国内工場を建てながら、中国・湖南省の合弁でも増産を計画する。同じブースの中に、国内に投資する会社と中国に接点を持つ会社、その両方を持つ会社が並ぶ。
おわりに
本特集では、CEATEC 2026のテーマ「Transformation」を、電池村の10社の開示で追った。各社の転換は、完成品の展示を見ているだけでは分かりにくい。各社がどこに投資し、何を受注しているかは、開示の数字に表れる。10社それぞれの事業と業績、直近の動きはENVALITHの企業情報ページにまとめているので、あわせて確認してほしい。




