エグゼクティブ・サマリー
エンヴァリスは、同社のCEATEC参加を機に、⼭崎⽒(執⾏役員 機械システム事業部⻑)、藤本⽒(機械システム事業部 業務部⻑)、⼋⽊⽒(総合企画室 IR‧SR部長)の取材機会を得た。 栗本鐵⼯所は、機械システム事業で電池製造設備を2030年に向けた戦略的成⻑分野に位置づけた。装置を納めて終わる売り⽅から、研究開発の初期段階から量産⽴ち上げまで顧客に伴⾛するソリューション提供型への転換を進める。⽇⽴ハイテクとのフィジカルAIを活用した混練技術で協業、電池サプライチェーン協議会(BASC)への参加はいずれもこの⽅針に沿う施策であり、顧客の具体的な引き合いを根拠に、2027年頃からの投資再開に向けた準備を進める。⾜元では、パイプシステムと化成品が第1四半期の業績を押し上げた。業績予想の修正では主に第1四半期の上振れ分を反映し、第2四半期以降は期初計画を据え置いた。資本政策では減配をさけ配当水準を維持しながら、事業が⼤きく伸びる局⾯では成⻑投資を惜しまない姿勢を⽰した。
企業からのメッセージ
お客様の研究開発の初期段階から量産の⽴ち上げまで、伴⾛するパートナーという⽴ち位置が⼤事だと考えている。当社は実験の場所や設備に加え、準備を担う⼈員を提供し、⽇⽴ハイテクの運⽤ソフトとを活用して条件設定を行う。これにより、試験研究から量産までの⼀連のプロセスをお客様と共に作り上げていく。
インタビューで示された主な論点
電池製造設備を2030年に向けた戦略的成長分野に位置づけ
主な納⼊先は電池メーカーと⾃動⾞メーカーで、電極材料メーカーがこれに続く。材料メーカー向けは上流⼯程が中⼼で、混練機以外にも粉砕機や乾燥機が主⼒となる。 電池製造は、⼈⼿で材料の仕込みや払い出しを行うなど人の技量に依存する要素が高いバッチ式混練から、安定して生産できる連続式混練へ移りつつある。同社の連続式混練機はこの技術変化の受け⽫となり、納⼊実績と案件規模はすでに海外が国内を上回る。
装置の売り切りから、研究開発から量産まで伴走するソリューション提供へ
⽇⽴ハイテクと協業するフィジカルAIを活用した混練技術は、装置に付けて提供するだけでなく、導⼊後の混練条件の最適化も継続して⽀援する形を想定する。 背景には、顧客が抱える⼈材と資⾦の制約がある。実験環境と設備は同社、ソフトは⽇⽴ハイテクが担い、ラボから量産⼯場までを⼀貫して⽀える体制を⽬指す。 2025年5月頃に始めた取り組みであり、二次電池以外の用途への展開も視野に入れる。
収益基盤の強化と規律ある資本配分
パイプシステムは価格改定の浸透と加賀屋‧堺両⼯場の上流⼯程統合で収益⼒の底上げを進め、化成品も原材料⾼を販売価格に転嫁した。 2027年度から始まる次期中期経営計画においては、資本政策とのバランスを鑑み、各部⾨が要望する投資には優先順位をつけて取捨選択する⽅針である。 株主還元は配当水準を維持することを基本とし、還元と成⻑投資の配分が次期中計策定の焦点となる。
エンヴァリスの着眼点
電池の製造⼯程は、バッチ式から連続式へ移りつつある。同社は連続式混練機を持ち、この技術変化の流れに乗れる⽴場にある。国内では評価試験の案件が多い⼀⽅、実際の納⼊規模は投資への意思決定が早い海外が中心となっている。電気⾃動⾞(EV)市場の停滞が指摘されるなかでも、データセンター向けの定置⽤蓄電システム(ESS)など、需要先が広がっている点を経営陣は重視している。
フィジカルAIを活用した混練技術は、装置に付けた提供と導⼊後の最適化⽀援の両⽅を想定しており、装置販売に加えて継続的な収益源となる可能性を持つ。⽇⽴グループが掲げるLab to Fab(研究開発から製造までをつなぐ考え⽅)の構想に同社の実験インフラが組み込まれる意義は⼤きく、量産段階での装置採⽤の確度を⾼める効果も⾒込める。収益化の時期は明らかにしていないが、⼆次電池以外の⽤途にも広げられる点は事業規模の拡⼤余地として注⽬に値する。
今回の上⽅修正はほぼ第1四半期の上振れ分の上乗せにとどめ、第2四半期以降は期初計画の水準に据え置いた。パイプシステムでは2024年10⽉以降の受注分に適⽤した約10%の値上げが、回転の速い⼩⼝径管から先に効き始めている。2026年7⽉に始まった両⼯場の上流⼯程統合は、中⻑期で⽣産効率を⾼める要因となる。機械事業は売上計上が後ろにずれたが、案件そのものが失われたわけではなく、翌四半期以降に計上されることになる。
現中計(2024〜2026年度)は損益⾯で計画を⼤きく上回る⼀⽅、取適法関連の対応で営業キャッシュフローが損なわれたが一時的なものである。経営陣は、国⼟強靭化や国の成⻑戦略の追い⾵で営業キャッシュフローは伸びていくと⾒ている。政策保有株式の 売却資⾦も使いながら、有利⼦負債を過度に増やさない形で投資の取捨選択を⾏う考えである。そのうえで、事業が⼤きく伸びる機会には積極的に投資する柔軟さも併せて⽰した。
主なリスクは次の5点: 1. 各国のEV政策の変化に伴う電池投資の時期のずれ 2. 進行基準売上や顧客の検収時期の変動による、機械事業の業績変動 3. 第1四半期の⼀時的な好材料(⼩⼝径管の需要増、統合前の在庫積み増し、化成品値上げ前の駆け込み需要)の反動 4. ナフサなど原材料価格の変動と調達環境 5. 投資拡大に伴う有利子負債の増加
インタビュー Q&A ハイライト
- Q
電池向け設備の事業上の位置づけと、主な納入先の構成は。
A機械システム事業において、2030年に向けて戦略的に取り組む成⻑分野の1つと位置づけている。納⼊先は電池メーカーと⾃動⾞メーカーが中⼼で、 次いで電極材料メーカーとなり、装置メーカー向けは現時点でない。材料メーカー向けは上流⼯程のため、粉砕機や乾燥機が主体で規模も⼤きい。評価試験は国内が圧倒的に多いが、納⼊実績と案件規模はバッチ式から連続式への移⾏とともに投資判断が早い海外が上回るようになった。
- Q
電池向け受注が回復する前提と、その時期をどう見ているか。
A各国の政策や規制が大きな要因だが、最も重視しているのは顧客からの具体的な引き合いという生の情報である。EVの停滞が言われる一方で、データセンター向けのESSは伸びており、顧客はEVも将来必ず成長すると見ている。2027年頃から投資が少しずつ再開し、2030年頃をピークに拡大するとの情報を得ており、それに合わせて準備を進めている。
- Q
日立ハイテクと協業する混練AIの提供形態と、対価の考え方は。
A装置に付けて提供する形と、導⼊後に混練条件の最適化を継続して⽀援する形の両⽅を考えている。狙いは、研究開発の初期段階から量産⽴ち上げま で顧客に伴⾛するパートナーとなることである。同社が実験の場所、設備、⼈員を、⽇⽴ハイテクがソフトを提供する。2025年5⽉頃に始め たばかりで収益化にはもう少し時間がかかるが、⼆次電池以外の⽤途への展開も含め、取り組みを着実に進める。
- Q
IHIから粉体機器事業を譲り受けた狙いは。
A混練機と組み合わせて相乗効果を狙ったものではない。既存の縦竪型ミルの品ぞろえから外れていたサイズを補い、競合他社にシェアを奪われるのを防 ぐための取得である。粉体機器事業の品ぞろえとシェアを固める意味合いが強い。
- Q
第1四半期が好調だったにもかかわらず、通期の上方修正幅が小さい理由は。
A第1四半期の上振れ分を主に上乗せし、第2四半期から第4四半期は期初計画のまま、ほぼ据え置いたためである。パイプの好調は主に3つの要因による。
・ 2024年10月以降の受注に適用した約10%の値上げが、受注から出荷までの短い小口径管で早く効いた ・ 加賀屋・堺両工場の上流工程統合を前に在庫を多めに生産し、稼働率が高まって固定費を吸収できた ・ 学校や病院の耐震化需要が出た可能性がある
化成品は、2026年6⽉出荷分からの値上げを前に駆け込み需要があった。これらは⼀時的な要因を含むため、計画には織り込んでいない。機械事業 は、進⾏基準売上の計上遅れや顧客都合による検収のずれで下⽅修正した。
- Q
自社株買いを含む資本政策の考え方は。
A現中計は損益⾯で計画を上回るが、取適法関連の対応で営業キャッシュフローが⼀時的に損なわれた。そちらの回復に加え、今期以降は国⼟強靭化の追い⾵もあり、伸びていくと⾒ている。次期中計では各部⾨の投資要望に優先順位をつけ、政策保有株式の売却資⾦も活⽤し、有利⼦負債とのバランスを見ながら、株主還元を維持していく。一方で事業が⼤きく伸びる機会があれば投資は惜しまない。
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