原子力発電の稼働制約リスク
法令・基準変更や訴訟の結果により原子力発電所の運転停止を余儀なくされる場合、代替電源費用の発生や設備投資の増加など業績に大きな影響を与える可能性がある。日本原燃株式会社に対して2026年3月末時点で779億円の保証債務を保有しており、同社の財務状態悪化時には保証履行を求められるリスクも存在する。対応として国の審査・安全対策工事を適切に進めるとともに、訴訟では当社の主張を十分に尽くしている。
燃料価格変動リスク
主要燃料であるLNGや石炭の調達価格は、燃料調達先の設備・操業トラブル、自然災害、政治・経済動向による国際市況変動および外国為替相場の変動の影響を受ける。2026年2月に中東危機が発生したが当社は同地域から燃料を調達しておらず影響は限定的であるものの、危機長期化によるLNG価格上昇リスクは残存する。燃料費調整制度により業績への影響は一定程度緩和されており、調達先の分散化や為替予約・燃料価格スワップ取引も活用している。
金利変動・財務リスク
国内電気事業の設備建設・更新に多額の資金が必要であり、2026年3月末時点の有利子負債残高は3兆6,970億円(総資産の62%相当)に達している。今後の市場金利上昇は新規資金調達コストの増加を通じて業績に影響を与える可能性がある。現状は有利子負債残高の97%を固定金利で調達することで変動リスクを限定化しているが、新規調達分については金利動向を見極めながら適時適切な調達に努めている。
電気事業制度変更リスク
政府は「第7次エネルギー基本計画」や「GX2040ビジョン」のもとエネルギー政策の制度設計・市場整備を進めており、制度変更に伴う設備投資・費用の増加や発電設備稼働率の低下、各種電力取引市場からの収益変動が業績に影響を与える可能性がある。カーボンプライシング制度(化石燃料賦課金・排出量取引制度)の規制強化により化石燃料使用への追加負担が課された場合、電力供給設備への投資・費用が増大するリスクも含む。対応として関連情報を積極的に収集し、関係箇所で連携して戦略・具体的対応を検討している。
自然災害による設備被害
地震・津波・台風・集中豪雨などの自然災害が発生した場合、発電設備・送変電設備・配電設備などの電力供給設備やサプライチェーンが被害を受け、広範囲・長期間の停電により社会経済活動に重大な影響を及ぼす可能性がある。収益の減少や多額の復旧費用の発生により業績に影響を与えるとともに、社会的信用の低下も懸念される。対応として設備の耐力強化・復旧資機材の事前確保、自治体・自衛隊との協力体制構築、一般送配電事業者10社連名の「災害時連携計画」による迅速な復旧体制を整備している。
サイバー攻撃リスク
当社グループへのサイバー攻撃は年々増加し攻撃方法も巧妙化・悪質化しており、機密情報・個人情報の流出や業務支障、電力供給設備への攻撃による停電発生の可能性がある。2024年6月にはグループ会社が第三者による不正アクセスを受け個人情報が漏洩したおそれがある事案が実際に発生している。対応としてサイバーセキュリティ対策室を中心に組織的・人的・物理的・技術的な多層防御を講じ、グループ全体の情報セキュリティレベルの維持向上を図っている。
法令違反・コンプライアンスリスク
2023年3月に公正取引委員会から独占禁止法違反として排除措置命令・課徴金納付命令を受け、同年7月には経済産業大臣から電気事業法に基づく業務改善命令を受けた(取消訴訟係争中)。また九州電力送配電株式会社での行為規制に係る情報漏洩・不正閲覧により業務改善命令・個人情報保護委員会からの指導等を受けており、2026年5月には個人情報を保存した外部記憶媒体の所在不明事案も発生した。法令違反が判定された場合や社会的要請に反した場合、行政処分・信頼失墜・事後対応費用が発生し業績に影響を与える可能性があり、業務改善計画に基づく再発防止に取り組んでいる。
地政学リスク・海外事業リスク
海外事業において競争環境の激化、カントリーリスク、市況変動(物価高騰・電力・燃料価格・金利・為替変動)、環境・エネルギー政策の見直しなど多様かつ複雑なリスクが存在し、当初想定のリターンが得られず業績に影響を与える可能性がある。2026年2月の中東危機発生を受け、アラブ首長国連邦に派遣していた従業員・帯同家族全員の国外退避を実施したが、現時点では事業継続や案件収益性への重大な影響は確認されていない。案件ごとの管理体制整備・収益性確認・リスク評価、資産売却・入替えによるポートフォリオ最適化を通じてリスク低減を図っている。
人材確保困難・エンゲージメント低下
少子化に伴う労働力人口の減少により、事業戦略の実現に必要な多様な人材の獲得・育成や九電グループ全体での安定的な人材確保が困難となれば、事業継続や中長期的な企業価値に影響を及ぼす可能性がある。従業員の就業意識・価値観の多様化に対応できなければエンゲージメントが低下し、生産性の停滞や人材流出を招くおそれがある。対応として経験者・高度専門人材の採用拡大、複線型処遇の導入、QX(Qden Transformation)の全社展開、柔軟な働き方制度の充実、DE&I推進による多様な人材活躍環境の整備に取り組んでいる。
設備高経年化・DX停滞リスク
大規模発電所や超高圧送電線などで経年劣化による故障発生確率が上昇し、重大な設備事故が発生した場合、経済損失の発生や広範囲・長期間の停電による社会的信用低下の可能性がある。またAI等の技術革新を活用したDXの取組みが停滞した場合、利益創出機会の逸失や生産性の低下を招くリスクが高まる。対応として設備巡視・きめ細やかなメンテナンス・計画的な高経年設備更新を進めるとともに、DX推進本部のもと生成AI活用・データ分析基盤強化・DX人材育成を推進し、副社長(CIO)が委員長を務める全社IT推進委員会でガバナンスを確保している。
重要度・発生可能性は企業の開示情報に基づいて表示されています
最終更新: 2026年7月19日

