事業内容
三菱製鋼は1904年創業を起源とする国内最古水準のばねメーカーを前身とし、特殊鋼鋼材・ばね・素形材・機器装置の4事業を軸に国内外で製造・販売を行う総合特殊鋼グループである。子会社17社・関連会社5社を含む22社体制で、自動車・建設機械・防衛・エネルギー等の幅広い産業に素材・部品・機械を供給する。
国内では室蘭・長崎・千葉等の製造拠点を持ち、海外ではインドネシア・カナダ・米国・インド・中国・タイ・フィリピン等にグローバル生産網を展開。売上高154,557百万円(2026年3月期)のうち、ばね事業が76,203百万円と最大セグメントを形成し、安全保障・エネルギー分野を新たな成長軸として位置付けている。
ビジネスモデル
特殊鋼鋼材を基盤事業として国内外の需要家に供給しつつ、ばね・素形材・機器装置の各事業で付加価値製品を製造・販売することで収益を多角化する。ROICを軸とした資本効率管理のもと、不採算事業(ドイツ・メキシコばね子会社)の整理と戦略事業(精密部品・軟磁性粉末・防護装備品)への資源集中を進め、利益構成の転換を図る。
設備投資は2026年3月期に4,795百万円を実施し、成長分野の生産能力増強に充当している。
企業の強み
インドネシアにPT.MSM INDONESIAおよびPT.JATIM TAMAN STEEL MFG.を擁し、ASEAN唯一の特殊鋼メーカーとしての地位を確立している。現地調達化が進展するASEAN・インド市場において高品質材の拡販と日系・現地系顧客での採用拡大を進めており、2026年3月期においても数量増・売価コスト改善により増益を達成した。
精密ばね部品(戦略事業)は大型案件の量産開始により前中計期間から収益貢献を開始し、2026年3月期のばね事業営業利益は3,981百万円(前期比98.5%増)と大幅増益を達成した。機器装置事業では防護装備品・海外電力機器等の受注好調により売上高11,771百万円(前期比12.6%増)、営業利益890百万円(同25.6%増)を計上し、1994年以来となる新工場建設を決定するなど事業基盤を拡充している。
カナダ・米国・インド・中国・タイ・フィリピン・インドネシアに製造子会社を持ち、インドネシア・インド向けに複数の技術援助契約(最長2029年まで)を締結している。技術開発センターに各セグメントの研究開発機能を集約し、2026年3月期の研究開発費は1,598百万円。
材料から製品までの一貫した研究開発体制が競合他社との差別化を支えている。
エンヴァリスの着眼点
業績トレンド
2026年3月期は売上高154,557百万円(前期比3.1%減)、営業利益4,788百万円(同27.0%減)と減収減益。室蘭コンビナートの高炉トラブル・火災事故による特殊鋼鋼材事業の数量減と生産性悪化が主因。
一方、ばね事業の大幅増益(営業利益前期比98.5%増)と法人税等調整額の戻り(△612百万円)により、親会社株主に帰属する当期純利益は3,055百万円(同29.3%増)と増益を確保。過去5期では2024期に当期損失969百万円を計上した後、2025期・2026期と純利益は回復基調にある。
外部要因として建設機械需要の低迷・自動車生産調整が売上を下押しした一方、安全保障・エネルギー関連需要は堅調に推移した。2027年3月期は高炉再開による特殊鋼鋼材事業の回復を主因に増収増益(売上高166,000百万円、営業利益6,400百万円)を予想。
成長戦略
戦略事業の売上比率拡大と高炉再開による特殊鋼事業の収益正常化
精密ばね・精密プレス品等の戦略事業が2026年3月期に大幅増益を達成。設備投資額1,618百万円を投じ生産能力を増強。北米・アジア向け売上が急拡大しており、2030年に戦略事業売上比率50%を目指す中期目標に向けて着実に進捗している。
2025年9月・12月の高炉・熱風炉トラブルで停止していた高炉が2026年4月に再開。安定操業・受注正常化に一定期間を要するため2027年3月期第1四半期の改善は限定的だが、第2四半期以降に収益回復を想定。事故関連損失900百万円を特別損失に計上済み。
防護装備品・海外電力機器・鍛圧機械等の受注好調を背景に機器装置事業が2026年3月期に売上高11,771百万円(前期比12.6%増)を達成。政府の防衛予算増額・エネルギー政策を外部要因として取り込みつつ、自社の製品技術・受注基盤を活かした成長分野への集中投資(設備投資1,234百万円)を継続。
インドネシア海外事業は2026年3月期に売上数量増・売価コスト改善により増益を達成。為替影響で売上高は前期比横ばいにとどまったが、損益分岐点引き下げによる収益体質強化が進捗。東南アジアの中長期的鋼材需要拡大を見据えた段階的能力増強投資を継続。
2026年3月期に有利子負債を51,012百万円から43,405百万円へ7,607百万円削減。自己資本比率は34.4%へ改善し、1株当たり純資産は3,219円51銭へ上昇。年間配当は81円(前期64円)へ増配し、2027年3月期は104円を予想。配当性向40%程度を維持しながら株主還元を強化。
最終更新: 2026年7月19日

