事業内容
大同特殊鋼は1916年創業を源流とし、特殊鋼鋼材・機能材料・磁性材料・自動車部品・産業機械部品・エンジニアリング・流通サービスの5セグメントを擁する総合特殊鋼グループ。自動車・産業機械・半導体製造装置・航空宇宙・医療など幅広い産業に構造用鋼、工具鋼、ステンレス、高合金、希土類磁石、チタン、精密鋳造品等を供給する。
連結子会社67社・持分法適用会社8社を含むグループ全体の売上収益は578,129百万円(2026年3月期)。国内製造拠点に加え、タイ・シンガポール・マレーシア・台湾・中国・米国・インドネシア・メキシコ等にグローバル拠点を展開し、多様な需要を取り込む体制を構築している。
ビジネスモデル
素材の溶製から二次加工・部品製造・流通・エンジニアリングサービスまでを垂直統合的に手掛け、顧客の多様な仕様要求に対応する。原材料調達(鉄屑・ニッケル等)から製品販売まで一貫した価値連鎖を持ち、コスト上昇分を販売価格に適正転嫁しながらマージンを確保する構造。
研究開発費6,623百万円(2026年3月期)を投じた技術開発力を背景に、高付加価値製品の拡大と成長市場への製品展開で収益性向上を図る。
企業の強み
中国の重希土類(Dy・Tb)輸出規制強化を受け、重希土類フリーネオジム-鉄-ボロン熱間加工磁石の粒界拡散技術を開発し耐減磁性を約10%向上。2026年4月には電動車駆動モータ用磁石製造ラインを新設しており、競合が短期模倣困難な独自プロセス技術と設備投資実績を有する。
ニッケル基超合金Waspaloyの大型ディスクを7,000tプレスで製造するプロセスを確立し、日本鋳鍛鋼会最優秀論文賞を受賞。高合金プロセス改革プロジェクトとして360億円規模の戦略投資を進行中であり、航空宇宙・エネルギー分野向け高合金の製造能力増強を渋川工場・知多第2工場で実施している。
技術開発研究所を中心にグループ全体で300名の研究開発スタッフを擁し、研究開発費6,623百万円を投じる。AIを活用した磁粉探傷検査技術、機械学習サロゲートモデルによる鍛造工程最適化、ICMDプラットフォーム活用など、デジタル技術と素材技術を融合した開発実績を積み重ねている。
エンヴァリスの着眼点
業績トレンド
売上収益は2023年3月期578,564百万円をピークに2025年3月期574,945百万円まで微減した後、2026年3月期は578,129百万円(前期比+0.6%)と微増回復。営業利益は42,081百万円(前期比+6.8%)と増益だが、調整後営業利益は39,920百万円(前期比-9.2%)と実力ベースでは悪化。
外部要因として鉄屑価格が年間を通じて高水準で推移し原燃料コストが高止まりする中、販売価格への適正転嫁に取り組んだ。親会社帰属当期利益は32,605百万円(前期比+15.2%)と増益。
2027年3月期は売上収益630,000百万円(+9.0%)を見込む一方、親会社帰属利益は27,500百万円(-15.7%)と大幅減益を予想しており、設備投資増加に伴う固定費増加と自動車関連需要低迷が重荷となる見通し。
成長戦略
半導体・電動化・航空宇宙・エネルギー等の成長市場へ事業ポートフォリオを変革
航空・宇宙・エネルギー関連分野の将来的な高合金需要拡大を見据えた360億円規模の大型設備投資。生産アロケーション変更に伴う一時費用が2026年3月期の自動車部品・産業機械部品セグメント利益を圧迫したが、中長期的な競争力強化を目指す。
2024年度に知多第2工場(愛知県知多市)へ真空アーク再溶解炉(VAR)2基を導入し、半導体製造装置向け高耐食材料の供給能力を増強。2026年1月以降AI用途需要拡大を受けた在庫積み増しの動きが顕著になっており、受注増加が期待される。
中国重希土類輸出規制強化を背景に需要が上向く重希土類フリー磁石に対応するため、2026年4月に電動車駆動モータ用磁石製造ラインを新設。機能材料・磁性材料セグメントの成長ドライバーとして2027年3月期の調整後営業利益18,600百万円(前期比+5,211百万円)を牽引する計画。
2026年3月期に日本高周波鋼業を新規連結し、特殊鋼鋼材セグメントの製品・顧客基盤を拡充。棚卸資産の増加(16,018百万円増)に新規連結の影響が含まれており、今後の収益貢献が注目される。
2025年10月に新たな株主還元方針を導入し、連結配当性向30%以上に加えDOE(株主資本配当率)2.5%を下限指標として設定。2026年3月期は年間配当49円(配当性向30.3%)、2027年3月期は52円を予定。自己株式取得も継続し、資本効率の向上を図る。
最終更新: 2026年7月19日

