地政学リスクと事業制限
国家間対立・貿易摩擦・輸出入規制の厳格化により、世界190以上の国・地域で展開する販売・調達活動が制限される可能性がある。特に自国産業保護の動きが強まる国では現地生産への移管が必要となり、コスト増加や供給体制の再構築が求められる。対応としてインドに診断薬・機器双方の生産機能を備えた新拠点を本格稼働させ、中国・インドでの現地原材料調達を推進している。
中国医療費抑制政策の影響
中国における必要最小限の原則や集中購買制度等の医療費抑制政策の影響が既に顕在化しており、設備投資意欲の低下や製品販売機会の減少につながっている。世界的な経済情勢悪化時には各国政府の医療財政ひっ迫や医療機関の予算縮小が連鎖する可能性もある。対応としてロボティクス・AI活用による医療機関の収益向上ソリューション提供や、インド・ブラジル・中東・アフリカ等グローバルサウスへの戦略商品展開で成長を補完している。
為替変動による業績影響
連結売上高に占める海外売上高比率が2026年3月期88.3%と高水準であり、円高局面では海外売上・資産の円換算額が減少し業績に悪影響を及ぼす。2026年3月期の為替1円変動の影響はUSDで売上高798百万円・営業利益207百万円、EURで売上高596百万円・営業利益71百万円、CNYで売上高4,089百万円・営業利益2,993百万円と試算されている。対応として外貨建債権債務への為替予約によるヘッジと、診断薬を中心とした生産拠点のグローバル分散により為替影響の軽減を図っている。
コンプライアンス違反リスク
グローバル展開に伴い関連法令・規制が多岐にわたり、法令違反・不正が発生した場合は社会的信用の失墜や訴訟・賠償リスクが生じる。実際に独占禁止法違反の疑いで公正取引委員会の調査を受け、2025年2月に確約計画が認定されており、現在その履行を進めている。対応としてコンプライアンス委員会の設置、グローバルコンプライアンスコードの制定、グローバル内部通報体制の整備、及び継続的な役職員教育を実施している。
薬事規制対応と販売機会損失
各国での薬事承認要求事項の複雑化・高度化に加え、デジタル技術・ソフトウェアを活用した新診断手法の普及により規制の枠組みが見直される動きがあり、対応コスト増加や新製品発売遅延による市場獲得機会の喪失リスクがある。中国の集中購買制度や保険点数引き下げ等の影響は既に顕在化している。対応として2025年度にグローバルQARA統括部を新設し、各国業界団体への参画を通じた最新情報把握と適時的確な薬事承認取得・維持体制を強化している。
技術革新への対応遅延
AI・ロボティクス等の技術が急速に高度化し、遠隔医療ソリューションやAI診断の進展によりヘルスケア領域のビジネスモデルが大きく変化する可能性があり、対応が遅れた場合は競争優位性の低下を招く。社内デジタル化・データ活用が十分に進展しない場合、業務効率性の低下や事業推進コストの増加につながるリスクもある。対応として大学・研究機関・企業とのオープンイノベーション推進、アルツハイマー病検査試薬の国内初製造販売承認取得、検査室自動化・AI活用検査結果解析システムの開発を進めている。
サプライチェーン寸断リスク
希少鉱物を含む部品・原材料の調達困難、国家間紛争・貿易摩擦による流通ルート遮断、生産工場・倉庫での大規模自然災害・火災・パンデミック等により、世界各国の医療機関への製品安定供給が停止するリスクがある。診断薬は2026年3月期連結売上高の61.6%を占める主力であり、供給停止の業績影響は甚大となりうる。対応として複数拠点での生産・相互供給ネットワーク構築、原材料の複数社購買・在庫積み増し、BCP策定・訓練、シスメックスRA新工場のBCP機能強化を実施している。
サイバー攻撃・情報漏洩リスク
医療機関を標的としたサイバー攻撃により当社製品が感染した場合、検査業務の停止や患者個人情報への不正アクセスが発生する可能性がある。社内情報システムへの侵入・障害による機密情報漏洩や、生成AI利活用における情報管理不備による誤情報提供・権利侵害も業務の信頼性低下につながりうる。対応としてPSIRT・CSIRT設置、製品セキュリティポリシー・情報セキュリティポリシーの制定、24時間監視体制、不正通信検知・マルウェア隔離の仕組み導入を実施している。
M&A・投資効果の不発リスク
研究開発・生産拠点拡充、ITインフラ・最新技術への投資、企業買収・資本提携において、経営環境の変化や予測し得なかったリスクの顕在化により期待効果が十分に発揮されず、戦略目標の達成が遅延する可能性がある。日本電子の生化学検査事業譲受等の案件においてもPMIの巧拙が業績に影響しうる。対応として事前の十分なデューデリジェンス、経営会議等での審議・意思決定、定期的なPMIモニタリングによる管理プロセス強化に取り組んでいる。
人材確保・流出リスク
グローバルな人材獲得競争の激化により事業推進に必要な高度専門人材・次世代リーダーが確保できない場合、業績に影響を及ぼす可能性がある。職場環境の安全衛生確保が不十分な場合、従業員の心身の健康悪化や士気低下・人材流出につながるリスクもある。対応としてジョブ型人事制度の導入、キャリア段階に応じた教育プログラム提供、ハイブリッドワークスタイルの全従業員導入、信託型株式報酬等の魅力ある処遇制度整備、ISO30414取得による人的資本情報の透明性向上を推進している。
重要度・発生可能性は企業の開示情報に基づいて表示されています
最終更新: 2026年7月19日

