事業内容
太平洋セメント株式会社は1998年に秩父小野田と日本セメントが合併して発足した国内最大手のセメントメーカーで、子会社197社・関連会社103社から構成される大規模グループを形成する。セメント・生コンクリートを中核に、骨材・石灰石等の資源事業、廃棄物リサイクルを担う環境事業、コンクリート二次製品・ALC等の建材・建築土木事業、さらに不動産・運輸・情報処理・電力供給等の多角的事業を展開する。
国内に加え、米国(カルポルトランド)、ベトナム(ギソンセメント)、フィリピン、インドネシアに海外拠点を持ち、環太平洋地域でのプレゼンス拡大を図っている。主要顧客は建設会社・生コン業者・公共工事発注者等で、国内インフラ投資と海外成長市場の双方を取り込む事業構造を有する。
ビジネスモデル
セメントの製造・販売が売上高898,441百万円の約74%を占める中核収益源であり、国内販売・輸出・海外現地生産の三経路で収益を確保する。資源事業では石灰石・骨材の採掘・販売、環境事業ではセメントキルンを活用した廃棄物リサイクルで安定収益を積み上げる。
建材・建築土木やその他事業がグループ内需要を補完し、多層的な収益構造を形成している。設備投資(2026年3月期110,508百万円)を継続的に実施し、生産基盤の強靭化と新規事業への展開を図る。
企業の強み
国内セメント販売数量は受託販売分を含め1,193万トン(2026年3月期)と国内最大規模を誇る。東ソー・日立セメント・トクヤマとの受託販売・業務提携契約を締結し、他社ブランドの販売も取り込む独自の販売体制を構築している。全国に複数の製造拠点と生コン会社を擁し、安定供給体制を維持している。
環境事業セグメントは売上高78,368百万円・セグメント利益9,262百万円(2026年3月期)を計上し、石炭灰処理・廃棄物リサイクル・脱硫材等でセメント製造プロセスの特長を活かした高付加価値事業を展開する。リニア建設発生土の埠頭中継業務や災害廃棄物処理など、社会インフラ需要を継続的に取り込む実績を有する。
1990年に米国カルポルトランドを買収し、2022年にはカリフォルニア州でVulcan Materials社から生コン事業用資産を買収するなど、米国西海岸での事業を段階的に深化させてきた。ベトナム・フィリピン・インドネシアにも製造拠点を持ち、環太平洋での多拠点展開を30年以上にわたり積み上げてきた実績は競合他社が短期間で模倣困難な固有資産である。
エンヴァリスの着眼点
業績トレンド
売上高は2022年3月期708,201百万円から2026年3月期898,441百万円へ5期間で着実に拡大し、2026年3月期は前期比2,146百万円(+0.2%)の微増収となった。営業利益は2023年3月期の4,456百万円から2025年3月期77,750百万円へ急回復したが、2026年3月期は74,620百万円と小幅減益。
当期純利益は減損損失25,328百万円の計上により25,401百万円(前期57,428百万円)と大幅に落ち込んだ。外部要因として、国内セメント需要の低迷・原燃料コスト高・円安による輸入コスト増が収益を下押しする一方、価格改定効果と米国事業の好調が下支えとなった。
成長戦略
国内事業再生・グローバル戦略推進・カーボンニュートラルの3軸で持続成長を目指す26中期経営計画
2025年4月出荷分より1トン当たり2,000円以上の価格改定を実施。コストアップ分の価格転嫁を継続的に推進し、国内セメント事業の収益基盤を強化する。2026年3月期のセメントセグメント利益は49,332百万円と前期54,426百万円から減少しており、価格改定効果の持続と需要減少の相殺が課題。
ロサンゼルス五輪・米国インフラ投資法案に基づく公共投資の本格化を取り込み、現地販売価格の上昇と販売数量の拡大を図る。持分法投資損益がセメントセグメントで前期△82百万円から当期1,232百万円へ改善しており、海外事業の収益貢献が顕在化している。
石炭灰処理・建設発生土中継・バイオマス燃料販売等を軸に環境事業の収益基盤を強化。リニア中央新幹線関連工事に伴う建設発生土処理需要や災害廃棄物処理需要を継続的に取り込む。2026年3月期のセグメント利益は9,262百万円と前期8,972百万円から増加し、着実な成長を確認。
2026年3月期の有形固定資産及び無形固定資産の増加額は110,508百万円(前期126,474百万円)と高水準の投資を継続。減価償却費は70,518百万円(前期60,876百万円)へ増加しており、生産効率改善・カーボンニュートラル対応設備への投資が進行中。投資回収期間の見極めが今後の焦点。
セメント製造工程のCO2排出削減に向けた技術開発・設備投資を推進するとともに、廃棄物リサイクルによるサーキュラーエコノミーへの貢献を強化。26中期経営計画の3軸の一つとして位置付けられており、ESG投資家からの評価向上にも寄与する取り組み。
最終更新: 2026年7月19日

