通期決算を踏まえた評価点
純利益870億円(前年比+9.3%)・EPS152.25円と過去最高を更新。営業利益は不動産販売業の反動減で横ばいながら、持分法投資利益239億円(同+121億円)と東急REIT負ののれん66億円が経常・最終利益を押し上げた。不動産販売業を除く営業利益889億円(同+2.9%)は内部成長の着実な進捗を示す。
- ホテル・リゾート事業の営業利益97億円(前年比+46.0%)。ADR26,681円(同+2,761円)、渋谷ホテル外国人宿泊比率80%超がけん引
- 生活サービス事業の営業利益218億円(同+13.0%)。東急レクリエーション+14億円、東急パワーサプライ52億円(同+12.1%)とICT・メディア領域が利益貢献
- 東急電鉄の輸送人員1,117百万人(同+3.1%)、運賃収入1,528億円(同+1.8%)と輸送人員増加基調が継続
- 不動産賃貸業の既存物件ベース賃料収入+25億円(同+2.5%)。渋谷エリアS・Aクラスビル空室率0%を維持し、渋谷エリアの高いオフィス需要を確認
- 2027年3月期はEPS158.15円(同+5.90円)を予想、中計策定時の116円を大幅に上回る水準で推移
通期決算を踏まえた懸念点
営業利益1,031億円は2月予想比▲28億円の未達。東急電鉄や不動産賃貸業を中心に修繕費の前倒し等のコストによる下振れが発生し、費用コントロールの精度に課題を残した。有利子負債は1兆3,847億円(前期比+930億円)に拡大し、支払利息118億円(同+27億円)が経常利益を圧迫。
- 営業利益率9.5%(前年比▲0.3pt)。人件費・修繕費増が増収効果を相殺、交通事業の営業利益273億円は同▲5.7%
- 有利子負債/東急EBITDA倍率6.1倍(同+0.0倍)、純有利子負債/EBITDA倍率6.8倍(同+0.3倍)と財務レバレッジが上昇
- 不動産販売業の営業利益142億円(同▲16.4%)。前年の大型物件反動に加え、マンション引渡戸数218戸(同▲115戸)と減少
- 2027年3月期の経常利益予想1,114億円(同▲4.1%)。東急REIT負ののれん相当額の反動減に加え、支払利息153億円(同+34億円)増が重荷
- 投資CF▲1,749億円(同▲609億円)、FCF▲472億円と支出先行。分譲土地建物取得840億円が拡大し資金調達依存が増加
注目点/今後確認したいポイント
- 不動産販売業を除く営業利益の来期計画955億円(前年比+7.5%)の達成可否。人件費+70億円増を賃料引上げ・ADR上昇・生産性改善でカバーできるか、四半期ごとの進捗確認が不可欠
- 東急REIT投資口追加取得による負ののれん66億円が今期の一時的利益となった一方、来期は反動減が見込まれる中で、EPS158.15円への到達に必要な追加施策(資産売却・株式売却等「切れるカード」)の具体化
- 有利子負債1.44兆円(来期予想)への拡大に対し、金利上昇局面でのNet Debt/EBITDA6.6倍の維持可能性と、渋谷再開発の工期延長が投資回収スケジュールに与える影響
- 不動産販売業を除く営業利益+7.5%の内訳として、賃料引上げ・ADR上昇・生産性向上の各施策が寄与する金額の内訳
- 東急電鉄の修繕費130億円(前年比+18億円)の性質(先行投資的支出か恒常的費用増か)と来期以降のコスト正常化の見通し
- 不動産賃貸業における既存物件ベースの賃料上昇率目標と、再開発に伴うテナント退去の影響が解消する時期
- 社債型種類株式(最大1,000億円規模)の発行判断基準と、普通株EPSへの影響の定量的説明
- 総還元性向40%目途における配当性向30%到達の時間軸と、自社株買い規模の中長期的な考え方
- 渋谷再開発の工期延長に伴う投資計画3か年▲300億円減の詳細(延長期間、コスト増見込み)
- 不動産販売業における回転型ビジネス(ファンド組成・REIT売却)の利益水準の中長期目標(150〜160億円→200億円の到達時期)
- 分譲土地建物取得支出が3か年で2,200億円(前回計画比+1,100億円)に拡大した背景と回収サイクルの見通し
- 金利上昇環境下での支払利息コントロール方針(固定・変動比率、デュレーション管理)
主要業績ハイライト
| 勘定科目 | 数値 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 営業収益 | 1,086,179百万円 | +3.0% |
| 営業利益 | 103,193百万円 | ▲0.3% |
| 経常利益 | 116,132百万円 | +7.8% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 87,071百万円 | +9.3% |
| EPS | 152.25円 | +12.9% |
| 包括利益 | 108,227百万円 | +7.5% |
| 営業収益営業利益率 | 9.5% | ▲0.3pt |
| ROE | 10.0% | +0.2pt |
| 総資産経常利益率 | 4.1% | +0.1pt |
| 事業利益 | 104,700百万円 | +2.0% |
| 東急EBITDA | 227,900百万円 | +6.4% |
| EBITDA | 191,700百万円 | +0.9% |
| 持分法投資損益 | 23,920百万円 | +12,160百万円 |
| 1株当たり純資産 | 1,598.61円 | +157.61円 |
事業セグメント別の業績
| セグメント名 | 売上高 | 前年同期比 | 営業利益 | 前年同期比 | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 交通事業 | 226,946百万円 | +2.9% | 27,341百万円 | ▲5.7% | 12.0% |
| 不動産事業 | 262,995百万円 | +3.6% | 43,595百万円 | ▲9.9% | 16.6% |
| 生活サービス事業 | 533,271百万円 | +1.1% | 21,868百万円 | +13.0% | 4.1% |
| ホテル・リゾート事業 | 139,346百万円 | +9.8% | 9,710百万円 | +46.0% | 7.0% |
- ホテル・リゾート事業:営業利益+46.0%。都心エリアのインバウンド取込みでADR26,681円(+2,761円)、渋谷エリア+キャピトルホテルのRevPAR43,917円(+3,127円)。外国人宿泊比率は全ホテル50%超、渋谷ホテル80%超を維持
- 生活サービス事業(ICT・メディア):営業利益146億円(前年比+13.8%)。東急レクリエーションが19億円(同+315.1%)と急回復、東急パワーサプライ+5億円
- 不動産賃貸業(既存物件ベース):賃料収入+25億円(+2.5%)、利益+18億円(+6.7%)。渋谷エリアS・Aクラスビル空室率0%、全体空室率0.95%と低水準を維持
- 不動産販売業(資産回転型ビル事業等):引渡棟数14件(+11件)、営業利益72億円(前年比+57億円)。ファンド・REIT向け売却の回転型ビジネスが本格化
- 交通事業(東急電鉄等):営業利益228億円(前年比▲9.2%)。輸送人員+3.1%・運賃収入+1.8%と増収も、人件費+13億円、修繕費+18億円、減価償却費+7億円の費用増が利益を圧迫
- 不動産販売業(住宅):営業利益44億円(同▲97億円)。前年の大型マンション引渡しの反動で引渡戸数242戸(▲94戸)に減少
- 不動産賃貸業(全体):営業利益242億円(同▲7.9%)。既存物件は増益も、再開発に伴うテナント退去等の特殊要因が全体を押し下げ
- 東急バス:営業利益17億円(同▲23.2%)。輸送人員▲0.4%に加え、人件費・燃料費増が収益を圧迫
業績予想比の進捗率
通期実績であるため進捗率の概念は適用されないが、2月予想比では営業収益▲18億円(▲0.2%)、営業利益▲28億円(▲2.6%)と小幅未達。一方、持分法投資利益の上振れにより純利益は+30億円(+3.7%)の上振れとなった。2027年3月期予想は営業収益1兆1,400億円(+5.0%)、営業利益1,100億円(+6.6%)、純利益900億円(+3.4%)と増収増益を見込む。来期の不動産販売業を除く営業利益955億円(+7.5%)は経営陣も「チャレンジング」と位置付けており、人件費+70億円増の吸収が鍵。
| 勘定科目 | 数値 (通期実績) | 2月予想 | 達成率 |
|---|---|---|---|
| 営業収益 | 1,086,179百万円 | 1,088,000百万円 | 99.8% |
| 営業利益 | 103,193百万円 | 106,000百万円 | 97.4% |
| 経常利益 | 116,132百万円 | 117,600百万円 | 98.8% |
| 純利益 | 87,071百万円 | 84,000百万円 | 103.7% |
- 第4四半期(1-3月)は年度末の不動産販売物件引渡し集中により売上・利益が偏重する傾向
- ホテル事業は第3四半期に稼働率がピーク化する傾向
業績予想の変更有無
2026年3月期決算と同時に2027年3月期の通期業績予想を新規開示。中期3か年経営計画(2025年5月にローリング計画公表)の2026年度数値からは上方修正。
- 営業収益:従来11,050億円→新11,400億円(+350億円)
- 営業利益:従来1,050億円→新1,100億円(+50億円)
- 純利益:従来810億円→新900億円(+90億円)
- 修正理由:足元の事業環境が良好で、マンション販売増加(引渡戸数345戸、+103戸)、不動産賃貸業の賃料引上げ、ホテルADR上昇(27,887円、+1,206円)等を織り込み
株主還元への言及
2026年3月期の年間配当は30円(前年24円、+6円増配)。配当性向19.7%。2027年3月期は年間32円(+2円増配)を予想し、配当性向20.2%。決算と同時に自己株式取得200億円(上限1,300万株、2026年5月13日~2027年3月31日)を決議。総還元性向は当面40%程度を目安とする方針を継続。中長期では配当性向30%を意識しつつ、安定増配と機動的な自社株買いを組み合わせる姿勢。
財務状況
自己資本比率31.2%(前期比+0.5pt)、D/Eレシオ1.5倍と財務健全性を維持。有利子負債は不動産開発投資の拡大に伴い増加するも、利益蓄積とその他包括利益の拡大が自己資本を押し上げ。
- 主要数値
- レバレッジ指標
| 勘定科目 | 数値 | 補足情報 |
|---|---|---|
| 現金及び現金同等物 | 79,626百万円 | 前期比+36.6% |
| 総資産 | 2,920,289百万円 | 前期比+8.2% |
| └ 流動資産合計 | 566,677百万円 | 前期比+23.3% |
| └ 固定資産合計 | 2,353,611百万円 | 前期比+5.1% |
| 自己資本 | 911,128百万円 | 前期比+10.0% |
| 純資産 | 957,767百万円 | 前期比+9.8% |
| 有利子負債 | 1,384,728百万円 | 前期比+7.2% |
| └ 短期借入金 | 324,677百万円 | - |
| └ 長期借入金 | 534,051百万円 | - |
| └ 社債 | 371,000百万円 | 1年内償還含む |
| └ CB | 60,000百万円 | 2028年・2030年満期 |
| └ CP | 95,000百万円 | - |
| 東急EBITDA | 227,900百万円 | 会社開示値 |
決算発表と同時に出たニュース
足許四半期中の主要発表
- 2026/03/23東急、東急電鉄、イッツ・コミュニケーションズ、東急建設の4社が鉄道高架下でモジュール型小規模データセンターの実証実験を2026年6月から開始 都市型データセンターの導入検討に関する実証実験を開始します
- 2026/03/26NTTデータとSecuritize Japanのデジタル証券プラットフォームを活用した個人向け社債「Q SKIP債」を発行し、調達資金を東急電鉄の改札機更新に充当 デジタル特典付個人向け社債として「Q SKIP債」を発行します
- 2026/03/30東急、東急不動産、小田急不動産などが参画する登戸駅前地区再開発で権利変換計画の認可を受け新築着工。2029年度完成予定 「登戸駅前地区第一種市街地再開発事業」権利変換計画認可・着工のお知らせ
- 2026/03/31東急などが出資するSPCが東急電鉄向けに合計約98MW-DCの太陽光発電所を新設し、2028年度には鉄道運行電力の約3割を再エネ由来電力に転換する計画 東急電鉄向けに約98MW-DCの太陽光発電所を新設
- 2026/04/08東急と東急パワーサプライが総開発規模46MW/184MWhの系統用蓄電所事業を推進、東京都の大規模蓄電池導入支援事業に2年連続採択 東急(株)グループが系統用蓄電所事業を推進
過去1年間の大量保有報告/重要提案
- 野村證券: 5.11%→5.23%(2025/10/06) - 証券業務に係る商品在庫、投資信託・投資一任契約等に基づく運用
- 三井住友信託銀行: 6.91%→7.07%(2025/09/19) - 投資信託・投資一任契約等に基づく運用、信託業務・取引関係等(商号変更に伴う提出)
- 三井住友信託銀行: 7.93%→6.91%(2025/08/21) - 投資信託・投資一任契約等に基づく運用(保有割合1%以上減少)
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