サマリー
エンヴァリスは、5月13日14時から開催された東急の通期決算説明会に参加する機会を得た。2025年度は営業収益1兆861億円(+3.0%)、当期純利益870億円(+9.3%)と3期連続の最高益を達成。2026年度は営業利益1,100億円(+6.6%)、当期純利益900億円(+3.4%)と4期連続の最高益を計画し、中計数値を上方修正。説明会では堀江社長が不動産販売業を除く営業利益で1,000億円を目指す方針を改めて表明し、既存事業の内部成長とクリエイティビティによるトップライン拡大を全事業に求める姿勢を鮮明にした。株主還元では総還元性向40%を当面の目安として新たに提示し、200億円の自社株買いと年間32円(+2円)の増配を決議した。
ポイント(決算の要点と成長アクション)
- 経営戦略と市場認識
- 世界経済の不透明感を認識しつつ、人流改善と賃料・販売価格の引き上げによる良好な事業環境の継続を前提
- 人件費は前年比+70億円を織り込むが、従業員のクリエイティビティ発揮と内部成長で吸収する方針
- PBR低下の要因として株主資本コスト上昇(5.1-6.5%→5.7-7.9%)と成長期待低下を自認、次期中計で対応策を提示予定
- 足元の事業進捗と要因
- 不動産賃貸業は既存物件ベースで賃料収入+25億円(+2.5%)と内部成長が進展、渋谷エリアのオフィス賃料の増賃合意率は70%程度
- ホテル事業はADR 26,681円(+2,761円)と過去最高水準を更新、渋谷ホテルの外国人宿泊比率は80%超を維持
- 東急電鉄の輸送人員は+3.1%と回復基調も、人件費+13億円や修繕費+18億円の費用先行により▲23億円の減益
- 戦略的な重要施策や変化点
- Global Hotel Alliance(GHA)に日系ホテルチェーンとして初加盟、3,400万人の会員基盤へリーチし直接予約増を狙う
- 社債型種類株式の発行登録を実施、デジタル特典付個人向け社債等を発行するなど、これまでの枠にとらわれない多様なファイナンス手法を整備
- 私募ファンド「TR1リアルティ」を組成し賃貸住宅5棟・約140億円を売却、フィー収入を伴う回転型ビジネスを拡大
今後の見通しと戦略
- 2026年度は営業利益1,100億円、当期純利益900億円(EPS 158.15円)を計画、中計公表値から営業利益+50億円の上方修正
- 2027年度目標はEPS 164.88円、営業利益1,120億円、当期純利益920億円と前回からさらに上方修正
- 渋谷再開発3プロジェクト(Shibuya Upper West Project/渋谷スクランブルスクエアⅡ期/宮益坂地区第一種市街地再開発事業)推進、2035年度に渋谷駅周辺の賃料収入を約450億円→約900-950億円へ倍増目標
- 渋谷駅周辺の関与床は2035年度に約86万㎡(現在約65万㎡から+32%)へ拡大見込み
- 海外事業ではベトナム・ビンズンで毎年平均1,000戸の供給体制を構築、オーストラリア・ヤンチェップに230億円の追加投資を決定し、2035年度には事業利益で150億円規模の目標感
- リテール事業における日用品小売、飲食領域においては、店舗網の拡大に加え、新規事業やM&Aも成長戦略の選択
- 次期中計は2026年度内に策定・開示予定、長期経営構想のアップデートも検討
- 堀江社長は不動産販売除く営業利益1,000億円到達への強い意志を表明、各事業にクリエイティブな内部成長を要請
ポジティブ要因
- EPS 152.25円は中計策定時想定(96円)を約59%上回り、構造改革と内部成長の成果が顕在化
- 渋谷エリアのオフィス空室率は0.0-0.2%と極めて低く、既存物件でも月坪6万円程度のトップレント水準を獲得
- 東急電鉄の輸送人員は2000年3月期比119.5%と関東民鉄平均を上回る成長、新横浜線と目黒線の合算増収が全体の34%を占める
- R&I AA-、JCR AAの高格付けを維持、平均調達金利0.88%・平均調達年限約7年・固定金利比率70%と金利上昇耐性を確保
- CDPの気候変動評価で最高評価Aリスト、FTSE・MSCI等の主要ESG指数にも2年連続選定
懸念事項・リスク
- 中東情勢の影響は業績予想に未織り込み、エネルギーコストやインバウンド需要への波及リスクが残存
- 支払利息は118億円→153億円(+34億円)と増加見込み、有利子負債残高は14,400億円(+552億円)まで拡大
- 建築費指数は2021年比+36%と高騰が継続、建築費がさらに+50%高騰した場合の保留床ROAは1.2%に低下するシナリオも
- ROE 9.6%(2026年度予想)は前年度10.0%から低下、株主資本コスト(5.7-7.9%)との差が縮小
- PBRは1倍を上回っているものの低下傾向
業績ハイライト
2025年度はホテル・リゾート事業と生活サービス事業の増益がけん引し、全セグメント増収を達成。営業利益は不動産販売業の反動減で前年並みにとどまったが、負ののれん計上と持分法投資利益増により当期純利益は870億円(+9.3%)で過去最高を更新した。2026年度は全セグメント増益を見込み、営業利益1,100億円への到達を計画する。
セグメント別業績
| セグメント名 | 売上高 | 前年同期比 | 営業利益 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| 交通 | 226,900百万円 | +2.9% | 27,300百万円 | ▲5.7% |
| 不動産 | 262,900百万円 | +3.6% | 43,500百万円 | ▲9.9% |
| 生活サービス | 533,200百万円 | +1.1% | 21,800百万円 | +13.0% |
| ホテル・リゾート | 139,300百万円 | +9.8% | 9,700百万円 | +46.0% |
- EPS: 152.25円(前年同期比 +17.44円、+12.9%)
- ROE: 10.0%(前年同期比 +0.2pt)
- 東急EBITDA: 2,279億円(前年同期比 +6.4%)
- 東急電鉄 輸送人員: 1,117百万人(前年同期比 +3.1%)
- ホテル事業 ADR: 26,681円(前年同期比 +2,761円)
- ホテル事業 RevPAR: 21,233円(前年同期比 +2,137円)
- オフィス空室率(全体): 0.95%(2026年3月)
- 不動産賃貸(当社)既存物件賃料収入: 前年比 +25億円(+2.5%)
- 配当: 年間30円→32円(+2円増配予想)、自己株式取得200億円
株式会社エンヴァリス(以下「エンヴァリス」といいます。)は、国内外の機関投資家、国内の個人投資家に対して、本邦の上場会社への投資を検討する際に必要な情報を提供することで、グローバルならびに本邦資本市場の発展に貢献することを目的として、専属リサーチ・カバレッジ業務を行っております。
- 目的と投資判断に関する免責
本レポートは、情報提供のみを目的として作成されたものであり、有価証券その他の金融商品の取得、売却、または保有を勧誘するものではありません。また、特定の投資、財務、または税務に関する助言を構成するものでもありません。本レポートに含まれるいかなる意見、判断、または推奨も、投資活動の誘導を意図するものではなく、投資決定は、投資家ご自身の責任と判断に基づき行われるべきものであり、エンヴァリスおよび対象企業は当該投資決定にいかなる関与もしない点、ご留意ください。
- 情報源、正確性、および保証の否認
本レポートは、対象企業からの正式な依頼に基づき、当該企業への取材や提供された情報を利用して作成されています。本レポートの利用にあたっては、以下の点をご承諾いただいたものとみなします。 1. 情報源 エンヴァリスは、公に入手可能な情報、対象企業より開示された情報および取材等で提供された情報が真実かつ信頼できるものである前提で本レポートを作成しています。エンヴァリスにおいて、これらの情報の真実性に関する独自の事実確認や検証は行っておりません。 2. 正確性 本レポートに記載されている提供情報の解釈、分析、およびそれに基づく仮説や結論は、前項の情報を基に、エンヴァリスが独自の視点と分析手法を用いて独立して導き出したものです。 3. 保証の否認 対象企業により開示された情報に誤りや遺漏があった場合、それに起因する本レポートの内容の誤謬について、エンヴァリスおよび対象企業は一切の責を負いかねます。本レポートの正確性、安全性、妥当性、完全性等ならびに対象企業の過去のパフォーマンスや将来のパフォーマンスについて、明示的にも黙示的にもエンヴァリスおよび対象企業はいかなる保証もいたしません。
- 責任の限定
本レポートまたは本レポートから得られた情報を利用したことにより発生したいかなる費用、損害、または損失(直接的、間接的、付随的、結果的、または懲罰的損害を含む)についても、エンヴァリスおよび対象企業は一切の責任を負いません。本レポートの利用者は、その利用が自己の責任において行われることを承諾するものとします。
- 利益相反の可能性
エンヴァリスは、対象企業と、現在または将来において、取引関係を有する可能性があります。したがって、本レポートの客観性に影響を及ぼす可能性のある利益相反が存在する可能性があることを、投資家の皆様はご認識ください。
- 報告内容の変更・更新義務の否認
本レポートの内容および意見ならびに本レポートの作成の前提とした情報は、作成日時点のものであり、今後、予告なく変更される場合があります。エンヴァリスは、本レポートの内容を最新のものに更新する義務を負わず、投資家の皆様は情報の最新性についてご自身でご確認いただく必要がある点、ご留意ください。
- 言語の優先順位
本レポートは、日本語、英語および中国語で作成されていますが、各言語版の内容に相違または解釈上の差異が生じた場合には、日本語版を正本として取り扱い、日本語版の内容が優先されるものとします。
- 著作権
本レポートに関する一切の権利(著作権を含む)はエンヴァリスに帰属します。エンヴァリスの事前の書面による許可なく、本レポートの全部または一部を複製、再配布、またはその他の方法で利用することを禁じます。
- 他の投資商品への利用
本レポートならびにエンヴァリスおよび対象企業の商標および商号は、エンヴァリスが書面により事前に承認した場合を除き、いかなる投資商品(価格、リターン、パフォーマンスが、本レポートに基づいている、または連動している投資商品、例えば金融派生商品、仕組商品、投資信託、投資資産等)の情報配信・取引・販売促進・広告宣伝に関連して使用することを禁じます。