サマリー
2027年3月期上期は営業収益340億円(前年同期比+43%)、経常利益165億円(同+63%)の増収増益となった。売買代金の倍増と信用取引平残の拡大が牽引した。2Q単独は前四半期比で減収減益となったが、経営陣は1Qと同じ好調水準を保っていると評価する。手数料率の低下を金融収支とFXが補い、収益の多角化が進んでいる。ゆうちょ銀行との提携報道について個別のコメントは控えた。一方で、提携先がどこであっても能動的な投資家を狙う方針は変えず、外部資本を必要とする状況にはないと明言した。
ポイント(決算の要点と成長アクション)
- 経営戦略と市場認識
- 能動的な投資家に絞るポジショニングは他の大手4社との差別化として機能しており、仮に他の企業と提携をするにしても、変えない方針
- 3年連続の増収増益を背景に、外部資本を入れなければならないという発想は持たず、配当政策も変えない姿勢
- メディアは量より質との考え方。YouTubeで生まれる顧客とのつながりを、ブランドと顧客基盤の強化、さらに新事業の土台と位置付ける
- AI検索の普及でアフィリエイトメディアが苦しむ中でも、口座獲得と預かり資産の積み上げは続いているとの認識
- 足元の事業進捗と要因
- 手数料率の低下は2つの要因による。手数料を原則取らない一日信用の比率上昇と、1日あたり手数料上限がかかる大口取引の増加
- 7月以降、AI・半導体銘柄の株価が弱含み、比較的長く保有する顧客の取引が減少。売買が上位5銘柄に集中する比率は6割近くで推移
- 信用買残の評価損益率は9月末から約10pt悪化し、足元の売買は弱含み。一方、上期の顧客の実現益は1,260億円で余力があるとの見方
- FXは7~9月がカバーモデル上は稼ぎにくい相場だった。それでも毎月約5,000口座の新規獲得とスワップ収益が下支えし、収益を確保
- 戦略的な重要施策や変化点
- 松井秀喜氏のCMを10月19日に開始し、その4日後に同氏が読売ジャイアンツの新監督に就任。起用の打診は6月で、監督就任を見込んだものではないと説明
- 上場企業向けIR支援のプレミアムIR動画を2社分公開し、いずれも視聴20万回を記録。通常のIR動画(1~2万回)より1桁多い
- 資本業務提携先のファイブスター投信(議決権20.95%取得)のファンドマネージャーが動画に出演。独自性のある投信の認知を広げ、残高の拡大を狙う
- 信用残高の日次データと独自の東証売買内訳データを組み合わせ、当日中に売買内訳を把握できる環境を提供。経営陣は当社だけのサービスと強調
今後の見通しと戦略
- 開示資料に通期業績予想の数値はない。10月以降は信用評価損の悪化で売買が弱含んでおり、下期の取引動向に注目が集まる
- 配当性向70%以上は通期の目標であり、中間時点の69%は年間で調整する方針
- 広告宣伝費はアフィリエイト中心で口座開設に連動する。下期は監督就任の話題性を生かすためテレビCMを増やす可能性あり
- 今期の投資額は50億円台で、うちサイバー関連はその数分の1にとどまる。セキュリティ費用が大きく膨らむことはない見込み
- 米国株の23時間取引に12月6日から対応し、iDeCoの取扱銘柄も12月1日から追加。2027年1月開始のこどもNISAも予約受付を始め、顧客層を広げる
- IR支援のパイプラインは積み上がっているが、1件ごとの作り込みが必要なため量産は難しいとの認識
ポジティブ要因
- 政策金利が25bp上がるごとに年7.5億円の増収を見込む(会社試算)。2Qの預託金運用収益は24.0億円で、支払利息13.4億円を上回る
- 株式売買代金シェアは8.8%と、直近5四半期で最も高い。他社の手数料無料化の影響は現時点で見えないとの認識
- YouTubeは登録者107万人・総再生2億回で業界トップ。総再生回数でチャンネルの実力の差を示す
- 新規口座に占めるレバレッジ口座(信用・先物オプション・FX)の比率が高水準を維持。ターゲットとする層を効率よく獲得できている
- 自己資本規制比率は304%で、オンライン証券5社平均の251%を上回る。会社は信用残高が増えても安全な水準と評価
懸念事項・リスク
- 一日信用の比率上昇が続き、手数料率は2Qで2.1bpまで低下。売買代金ほど手数料収入が伸びない構造
- 信用買残の評価損益率は10月22日時点で▲13.3%、グロース市場では▲18.5%。AI・半導体銘柄に偏った顧客の売買が鈍っている
- 信用貸付の拡大に伴い借入金は4,458億円に増加。上期の金融費用は前年同期比+110%で、調達コストの上昇が重荷
- 業界で情報漏えいが相次ぎ、口座開設を止める他社も出ている。アフィリエイト経由で業界全体の口座開設に影響する可能性があり、10~11月の動向を注視
- ゆうちょ銀行との提携は検討中で、決まった事実はない。スイープ機能など具体的な形は未確定
- 米国上場の日本株レバレッジETFは当局判断で取り扱えない。23時間取引の起爆剤が一つ欠ける形に
業績ハイライト
上期は営業収益34,048百万円(前年同期比+43%)、経常利益16,528百万円(同+63%)、当期純利益10,435百万円(同+60%)だった。販管費は14,374百万円(同+19%)にとどまり、営業収益経常利益率は前年同期の43%から49%に上昇した。2Q単独では営業収益16,750百万円(前四半期比▲3%)、経常利益7,672百万円(同▲13%)となった。
セグメント別業績
| セグメント名 | 売上高 | 前年同期比 | 営業利益 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| 証券業(営業収益合計) | 34,048百万円 | +42.8% | 16,484百万円 | +60.6% |
| うち受入手数料 | 16,109百万円 | +42.0% | ― | ― |
| うちトレーディング損益 | 3,005百万円 | ▲1.6% | ― | ― |
| うち金融収支 | 11,735百万円 | +48.1% | ― | ― |
※前年同期比(小数第1位)は当レポート試算
- 株式売買代金(上期): 63.3兆円 (前年同期比 +100%)
- 信用取引平残(上期): 5,145億円 (前年同期比 +54%)
- 純営業収益(上期): 30,858百万円 (前年同期比 +38%)
- 預かり資産(9月末): 6.2兆円 (前年同期比 +26.5%、当レポート試算)
- 投資信託残高(9月末): 7,563億円 (前年同期比 +65.5%、当レポート試算)
- 総口座数(9月末): 1,837,434口座 (前年同期比 ―)
- FX建玉残高(9月末): 3,715億円 (前年同期比 ―)
- ROE(上期): 24.8% (前年同期比 ―)
Q&A 一覧
- Q
サイバー犯罪について、昨今の情報流出や本人確認の面にも影響が出ていると思う。顧客のアクティビティや口座開設といったトップラインに影響は出ていないか。
A当社ではまだそうした事案が起きていないこともある。心配になって口座を閉鎖する顧客の数は増えているが、閉鎖した顧客はすでに口座に残高のない人がほとんどで、収益に影響する顧客という観点ではほぼ影響はないと考えている。ただ1点、口座開設を止めている会社が出てきている。それに伴って広告も止まるため、アフィリエイトメディア等に影響が出て、回り回って証券界全体の口座開設に多少影響している部分はあるのではないか。そこは10月、11月の口座開設を見ていきたい。
- Q
一方で、コスト面で手当てしなければならないことはあるか。
A昨年、今回のAI等とは別に不正アクセスの問題が起き、当社は多要素認証の強化などを実施した。その結果、昨年と今年はそれ以前と比べ、それまでなかった費用が毎年数億円程度発生するようになっている。最近はサイバー攻撃が非常に活発になっており、今後ももちろん色々やっていかなければならない。ただ基本的な部分はこれまでやってきたことの延長線上にあるので、セキュリティのためにさらに多額の費用をかけることにはおそらくならない。お金を払ってセキュリティを買ってくるというものでもなく、普段の業務をきっちり回していくことが基本になる。販管費の中でサイバー対策費用が非常に大きな割合を占め、それがどんどん増えていくというイメージは持っていない。セキュリティ投資については、今期は50億円台の投資を予定しているが、サイバー関連はその数分の1程度の比率で、巨額の投資にはならない。お金でどうにかできるのであれば逆に簡単である。お金でない部分、つまり経営の意識や業務の構築でしっかり対応することが、金銭的なコストよりも重要だと考えている。
- Q
ゆうちょ銀行との提携検討について、今後どのような顧客基盤を広げていく意向か。アクティブな顧客なのか、カジュアルな資産形成層を狙うのか。
A先日日経に記事が出た件について、個別のコメントは差し控える。プレスリリース以上のことは申し上げられない。ただ資本提携等の一般論として、当社は他の4社と違い、投資に能動的な顧客をターゲットとするポジショニングでこれまでやってきており、それは非常にうまく機能していると考えている。したがって、どの提携先と組むことになっても、そのターゲットを大きく変えることはないという考え方である。
- Q
資本関係について、事業を長期的に伸ばすために望ましい外部資本の比率は20%、50%、100%のどれか。資本政策に変化は生じるのか。
Aどの程度の資本を入れたらよいかという点も、当社は3年連続で増収増益であり、この上期も増収増益である。どこかと組まなければやっていけないほど追い込まれているわけではない。ある雑誌がオワコンではないかといったおかしなことを書いていたが、そのようなことは全くない。したがって、外部資本をどの程度入れなければならないという視点は持ち合わせていない。資本政策の観点では、配当政策等も特段大きく変える方針はない。
- Q
フォローアップとして、仮に銀行と提携すれば先方には大きな預金がある。そうした銀行口座とのスイープ機能は、御社の資金導入チャネルとして必須になるのか。
A相手がまだ確定したわけではないので、仮定の質問にはお答えできない。ただ資本業務提携をするのであれば、顧客基盤の拡大が重要なポイントの一つになるので、それにつながる施策には取り組んでいきたい。
- Q
金利上昇の業績への影響について、支払利息の前四半期比の増加幅が預託金運用収益の増加幅より大きく、前期4Qから1Qへの変化幅よりも大きく見える。その要因を詳しく教えてほしい。
A支払利息と預託金運用収益の増加には、残高が増える部分と金利水準そのものが上がる部分がある。グラフは両方を合わせた実額としての収益と費用を示している。預託金はそれほど増えていないが、借入金は信用取引貸付金の増加に連動して残高そのものが増えている。加えて1Qと2Qを比べると、運用側と借入側の平均金利がそれぞれ2割程度上がっている。こうした2つの要因によって実額の差が変わってくる。
- Q
広告宣伝費について、以前は状況に応じて増やしていくと説明していた。今期1Q、2Qの10億円程度という水準が今後の下限になるのか、下期に向けた方向性を教えてほしい。
A当社の広告宣伝費の多くはアフィリエイト、つまり成果連動型の広告であり、基本的には口座開設に連動すると考えてもらえばよい。ただ松井秀喜さんのCM起用に加え、監督就任で話題性もあるので、予定を変えてテレビCMを増やすなど、今がチャンスだと考えており増やしていく考えである。したがって第3四半期、第4四半期はその部分の広告費が比較的増える可能性がある。
- Q
余談だが、松井秀喜さんの監督就任と時期が重なったのはたまたまとのことだった。就任するのではないかという思いはあったのか。
Aそうした思惑は全くなかった。話があったのは6月で、松井証券の松井という名前の知名度を上げるために、同じ松井姓の松井秀喜さんを起用するのは面白いのではないかと考えただけである。それ以上の思惑は何一つなかった。
- Q
YouTube戦略について、IR支援動画が2社で20万回再生されているのは素晴らしい。今後のパイプラインや予定は積み上がっているのか。また、すでに実施した2社の反応を可能な範囲で教えてほしい。
Aミークについては、先方が非常に喜んでいる。もう1社のトレードワークスはネット証券全社のIR動画に出演したと聞いており、当社の動画は再生回数が他社と1桁以上違うと聞いている。その点で成果を出せたと考えている。パイプラインもかなり積み上がっている。ただ1件1件をかなり作り込む取り組みなので、量産は難しいと考えている。
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