松井証券 1Q 決算プレビュー

委託手数料・金融収支・FXの三本柱が揃い踏みした前期から、相場環境と収益構造の持続性が問われる1Q

配信日2026年7月24日 15:30 JST

サマリー

2026年3月期は営業利益+50.1%、ROE 19.6%と、独立系オンライン証券としての収益力を改めて示した。注目すべきは、委託手数料・金融収支・FXトレーディングの三本柱がいずれも二桁成長を達成し、収益源の分散が実質的に機能した点にある。2027年3月期1Qでは、日経平均が5万円から7万円台を推移する中、個人投資家の売買活性度が前年同期の高水準を維持できるか、また金利環境の変化が金融収支に与える影響を確認する必要がある。加えて、配当性向基準の70%への引上げという株主還元策の変更を踏まえ、利益水準と還元のバランスに市場の関心が集まる。SBI証券や楽天証券が規模拡大とエコシステム強化を加速する中、独自のブランド戦略とサービス品質で顧客単価を高める当社の戦略が引き続き有効に機能するかを注視したい。

翌四半期の注目ポイント

注目点と焦点示唆

売買代金動向1Q期間中の当社株式等委託売買代金の前年同期比推移

前期は市場全体+32%、個人+37%、当社+35%。1Qの月次開示で前年同期比+10%以上を維持できれば、通期増収の蓋然性が高まる

金融収支信用取引貸付金残高および預託金収益分配金の水準

前期末の信用取引残高4,562億円(+22.1%)が維持されるか。日銀の金利政策次第で金融収益20,879百万円の水準が変動する

FXトレーディングFXトレーディング損益の四半期推移

前期5,819百万円(+55.1%)。スプレッド恒久引下げによる取引量拡大効果と収益性のバランスを確認

コスト管理販管費の前年同期比増減率と営業利益率

前期は販管費+19.2%に対し営業利益率44.6%(+4.7pt)。広告宣伝費・人件費の増加ペースが収益成長を上回らないかを確認

資本効率・株主還元ROE水準および新配当方針(配当性向70%基準)の適用状況

前期ROE 19.6%(株主資本コスト8%を大幅超過)。新方針下での初回配当決定が市場評価に影響

セキュリティ対応不正アクセス関連の特別損益の発生有無

前期は支払補償金375百万円、受取保険金212百万円を計上。継続的な費用発生リスクと対策の進捗を注視。但し4Qでは16百万円と、特別損益への影響は軽微な見通し

競争環境新規口座開設数および預り資産残高の推移

SBI証券が預り資産70兆円突破、楽天証券はフィンテック再編を推進。当社の独立系としての差別化が顧客獲得に反映されているかを月次データで確認

前回決算(2026年3月期 通期決算)を踏まえた主要論点

2026年3月期は、日経平均が史上初の5万円突破を経て3月末に51,063円で着地する活況相場を背景に、営業収益52,660百万円(+34.3%)、営業利益23,462百万円(+50.1%)と高成長を実現した。ROEは19.6%に上昇し、株主資本コスト8%を大幅に上回る資本効率を達成。収益源の多様化、配当方針の変更、セキュリティ強化という三つの構造的テーマが次期以降の論点となる。

1. 委託手数料の持続性と市場環境依存リスク

  • 前期: 委託手数料24,805百万円(+31.3%)、二市場個人株式等委託売買代金+37%
  • 今期確認: 4-6月の月次売買代金が前年同期比でプラスを維持するか、市場のボラティリティに伴う取引活性度の変化
  • 注目指標: 当社月次開示の株式等委託売買代金の前年同期比、二市場における個人シェア(前期25%)の維持状況
当社の収益構造は委託手数料への依存度が高く、営業収益に占める比率は約47%に達する。相場環境の変動が業績に直結するため、1Qの市場環境が収益水準を左右する。

2. 金融収支の拡大余地と金利環境

  • 前期: 金融収益20,879百万円(+34.9%)、金融費用3,573百万円(+72.7%)、ネット金融収支17,306百万円
  • 今期確認: 日銀の金融政策動向と短期金利の推移、信用取引貸付金残高の増減
  • 注目指標: 金融収支の四半期推移(当レポート試算:前期通期17,306百万円の四半期平均は約4,327百万円)、預託金収益分配金の水準
金利上昇を背景に金融収支は17,306百万円(+29.0%)へ拡大し、収益の安定化に寄与した。信用取引貸付金は423,617百万円(+27.1%)まで拡大しており、金利環境の変化が収益に与えるインパクトは従来以上に大きい。

3. FXトレーディング損益の成長持続性

  • 前期: トレーディング損益5,819百万円、通貨ペア32種へ拡充、スプレッド縮小施策を複数実施
  • 今期確認: スプレッド恒久化後の取引量増加が収益を補えるか、為替ボラティリティの水準
  • 注目指標: 月次のFX取引高推移、トレーディング損益の四半期推移
FXトレーディング損益は5,819百万円(+55.1%)と急成長し、営業収益の約11%を占めるまで拡大した。スプレッド恒久引下げは取引量拡大を促す一方、単位収益の低下リスクも内包する。

4. コスト構造と営業利益率の維持

  • 前期: 販管費25,625百万円、営業利益率44.6%、取引関係費8,448百万円
  • 今期確認: 広告宣伝投資の継続度合いと人件費の増加トレンド、コールセンター体制拡充コスト
  • 注目指標: 営業利益率40%以上の維持(前期39.9%→44.6%)、販管費の前年同期比増減率
販管費は25,625百万円(+19.2%)と増加したが、収益成長が上回り営業利益率は44.6%(+4.7pt)へ改善した。広告宣伝費(取引関係費+25.1%)、人件費(+24.6%)、事務費(+19.0%)の三項目が増加の主因であり、いずれもブランド構築・サービス強化に向けた戦略投資と位置付けられる。

5. 株主還元方針の変更と資本政策

  • 前期: 年間配当50円(配当性向83.2%、DOE 16.3%)、純資産82,347百万円(+7.5%)
  • 今期確認: 新配当方針に基づく中間配当の水準、自己株式取得の可能性
  • 注目指標: 配当性向70%基準と実際の利益水準の整合性、ROE水準の持続性(前期19.6%)
配当性向基準を60%→70%へ引上げ、DOE基準を廃止した。前期の配当性向83.2%・DOE 16.3%は旧基準を大幅に上回る水準であり、新方針は実態に即した基準の再設定と評価できる。業績予想非開示の中、新基準下での初回配当がどの水準で設定されるかが注目される。

今期中の主要な適時開示

  • 2026/06/30
    FX 27通貨ペアのスプレッド引下げ恒久化 - キャンペーン施策を恒久化し、FX取引の価格競争力を強化。取引量拡大が期待される一方、単位収益率への影響を注視。 FXサービス 27通貨ペア、縮小スプレッド引き下げ恒久化のお知らせ
  • 2026/06/26
    MATSUI Bank円普通預金金利を最高年0.75%に引上げ - 前期の0.65%から引上げ。預り資産の囲い込み強化と銀行連携サービスの競争力向上に寄与。 MATSUI Bank、円普通預金金利を業界最高水準の年0.75%(税引前)に引上げ
  • 2026/06/01
    JCBクレカ積立新規利用キャンペーン開始 - 投信残高ポイント最大4倍増量により、投信残高拡大と新規顧客獲得を促進。 松井証券、投信残高へのポイント還元を最大4倍に増量するキャンペーン開催
  • 2026/05/26
    SpaceX上場日からの米国株取り扱い開始を公表 - 話題性の高い大型IPO銘柄への即日対応で米国株サービスの訴求力を強化。 上場初日より、スペースXの取り扱いを開始します。

前四半期の着地(2026年3月期 通期実績)

松井証券は、個人投資家向けオンライン証券取引サービスを単一事業として展開する独立系ネット証券。大手5社の中で唯一コングロマリットに属さず、「投資をまじめに、おもしろく。」のスローガンの下、アクティブ投資家をコアターゲットとした質重視の戦略を採る。2026年3月期は、日経平均が史上初の5万円突破を記録する活況相場の恩恵を受け、委託手数料・金融収支・FXトレーディングの三本柱がいずれも二桁成長を達成。営業利益率は44.6%に改善し、ROE 19.6%と株主資本コスト8%を大幅に上回る資本効率を実現した。

項目金額前年同期比会社計画比備考
営業収益52,660百万円+34.3%-委託手数料・金融収益・FXの三本柱が牽引
純営業収益49,087百万円+32.2%-金融費用3,573百万円(+72.7%)を控除後
営業利益23,462百万円+50.1%-営業利益率44.6%(前期39.9%)
経常利益23,813百万円+55.7%-投資事業組合運用益614百万円を計上
当期純利益15,480百万円+47.4%-金融商品取引責任準備金繰入れ1,474百万円、支払補償金375百万円を特損計上
EPS60.11円+47.3%-期中平均株式数257,523,635株

※当社は証券業の業績が相場環境に左右されるため業績予想を開示しておらず、会社計画比は算出不可。

会社情報

  • 会社名
    : 松井証券株式会社
  • 証券コード
    : 8628
  • 上場市場
    : 東京証券取引所 プライム市場
  • 決算期
    : 3月
  • 主要事業
    : 個人投資家向けオンライン証券取引サービス(株式、信用取引、FX、投資信託、米国株等)
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