松井証券 インタビューレポート

独立系オンライン証券の戦略的差別化が結実——「能動的投資家」をコアターゲットに据える戦略で収益性と成長性を両立

配信日2026年5月13日 21:50 JST

エグゼクティブ・サマリー

エンヴァリスは2026年5月11日に、代表取締役 社長執行役員 和里田 聰氏より、通期決算発表後の取材機会を得た。松井証券は、大手オンライン証券5社中唯一の独立系として、能動的に投資に取り組むトレーダー層をコアターゲットに据える戦略ポジショニングを鮮明化。2026年3月期は営業利益が前年比50.1%増の234億円、ROE19.6%と大幅増益を達成し、この戦略が着実に成果を上げていることを示した。経営陣は、顧客獲得単価の最適化によるLTV極大化、金利上昇局面での金融収支拡大、CFD等の商品ラインアップ拡充を通じた収益源の多角化を次なる成長の柱と位置付けている。配当性向基準の70%以上への引き上げは実態追認であり、高水準の株主還元と信用取引拡大に必要な資本蓄積の両立に自信を示した。

企業からのメッセージ

SBI・楽天と同じモデルでなければオンライン証券業界でやっていけないというイメージは払拭したい。能動的な顧客にターゲットを絞る我々の戦略はワークしている

インタビューで示された主な論点

  • 能動的投資家をコアターゲットに据える戦略ポジショニングの確立

    同社以外のオンライン証券4社はいずれも1,000万人超の顧客基盤を持つコングロマリット傘下でマス市場を志向するのに対し、松井証券は投資に能動的に取り組むトレーダー層にフォーカス。新規口座開設者に占めるFX口座の開設率43%、信用25%、先物オプション12%と、競合4社対比で顕著に高い水準にあり、投資にアクティブに取り組み、収益貢献度も高い顧客を効率的に獲得できている点を経営陣は強調した。

  • 顧客獲得コストの最適化とLTV極大化への転換

    顧客獲得単価(CAC)については、投資回収期間の基準を2年に設定。直近期は、収益貢献度の高い顧客を効率的に獲得できており、回収率が大幅に向上。今後はCACを若干引き上げてでも獲得数の拡大を優先し、ライフタイムバリュー(LTV)の絶対額を最大化する最適点を探る方針を示した。

  • 金利上昇環境を活かした金融収支の構造的拡大

    預託金運用額約7,000億円、信用取引にかかわる借入金約3,000億円という仮定のもと試算をすると、政策金利25bp引き上げごとにネットで年間約6.5億円の増収効果となる。利上げ局面では構造的に金融収支が拡大する収益体質を有する。

エンヴァリスの着眼点

インタビュー Q&A ハイライト

  • Q

    配当性向70%以上への引き上げにより、信用取引拡大のための資本蓄積に支障は生じないか

    A

    過去10年間の実績配当性向はすでに70%以上を維持しており、今回の変更は実態に合わせたもの。高い配当性向を維持しつつも信用取引事業を支える十分な資本蓄積は可能であり、今期の83%程度であっても問題ないとの認識。流動株比率の観点からも、利益還元は自社株買いよりも配当を中心に継続する方針。

  • Q

    広告宣伝費の増加に対する顧客獲得単価と投資回収の考え方はどうか

    A

    CACの回収期間は約2年という基準を意識しつつも、直近期は回収率が非常に高まっており、今後はCACを若干引き上げて獲得数を増やし、回収率は多少低下しても絶対的な収益額が拡大する最適点を探索する考え。2027年3月期は費用対効果が若干悪化する見込みだが、LTVベースでは絶対額としてプラスの評価になると見ている。

  • Q

    日銀の追加利上げが実施された場合の金融収支へのネット影響はどの程度か

    A

    預託金運用額約7,000億円、信用取引にかかわる借入金約3,000億円という仮定のもと試算をすると、政策金利25bp引き上げごとにネットで年間約6.5億円の増収効果となる。預託金の運用は3ヶ月ロールの定期預金で運用しており、25bp利上げに対し約20bp運用利回りが上昇。一方、借入はほぼコールマネーであり政策金利と同程度に上昇する。

  • Q

    FXにおけるコアタイム制導入の狙いと初動の効果はどうか

    A

    広告効果の向上が主目的。コアタイムに限定してタイトなスプレッドを維持することで、低スプレッドの広告を安定的に出稿できるようになり、今後新規口座獲得数の増加に貢献すると考えている。従来は規制を満たせず広告を取り下げざるを得ない局面があったため、ネガティブ要素の排除という意味合いが強い。取引量自体は相場イベントの影響が支配的である。

  • Q

    株式売買代金シェアが第4四半期に9%へ上昇した背景と、信用残高シェアの変動要因は何か

    A

    売買シェア上昇の正確な要因は各社データの出揃いを待って分析予定。通常、市場活況時には同社シェアは低下する傾向があり、今回の上昇は過去の経験則と異なるため注視している。信用買い残シェアは期末ベースで8%に回復。年度前半はトランプ関税による株価下落で顧客の評価損処理が進み残高が積み上がりにくかったが、第4四半期に急回復した。

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