松井証券 通期 決算速報

株式売買代金+35%・金利上昇が収益を押し上げ営業利益+50%、配当性向基準を次期より70%以上へ引き上げで還元姿勢を鮮明化

配信日2026年4月27日 15:45 JST

通期決算を踏まえた評価点

営業収益52,660百万円(前年比+34.3%)、営業利益23,462百万円(同+50.1%)と全利益項目で過去最高を更新。株式売買代金の拡大と金利上昇の二重追い風が収益構造全体を押し上げ、ROEは19.6%と株主資本コスト8%を大きく上回った。

  • 委託手数料24,805百万円(前年比+31.3%)。当社株式売買代金73.7兆円(同+35%)、市場シェアは4Q単独で9%に上昇
  • 金融収支17,306百万円(同+29.0%)。政策金利0.75%への引き上げで預託金運用収益が拡大、4Q単独で17.1億円に到達
  • FXトレーディング損益5,819百万円(同+55.1%)。FX口座数26.1万口座・建玉残高2,932億円と拡大継続
  • 営業収益経常利益率45%(前年39%)。販管費増加率+19.2%を収益増加率+34.3%が上回り、オペレーティングレバレッジが発現
  • IPO引受参入率68.5%で業界2位。YouTube登録者80.6万人・総再生1.8億回と認知度向上施策が顧客基盤拡大に貢献

通期決算を踏まえた懸念点

収益の大部分が相場環境に依存する構造は不変であり、市場急変時の業績変動リスクに留意が必要。販管費は25,625百万円(同+19.2%)と増加ペースが加速し、広告宣伝費は同+41%と突出して伸長した。

  • 広告宣伝費3,840百万円(前年比+41%)。認知度向上は進むも費用対効果の持続性を見極める必要あり
  • 先物・オプション委託手数料1,024百万円(同▲5.6%)。株式手数料無料化後の収益多角化柱として期待されるも減収
  • 信用売残シェアが4Q時点で2%に低下(前年度末6%)。信用取引における売方顧客の離反リスクに注意
  • 不正アクセス関連で特別損失(支払補償金375百万円、金融商品取引責任準備金繰入1,474百万円)を計上。セキュリティ投資の継続負担
  • 金融費用3,573百万円(同+72.7%)。金利上昇は借入コスト増にも直結し、信用取引借入金は53,901百万円と前年比約5倍に膨張

注目点/今後確認したいポイント

  • 配当性向基準70%への引き上げ後の内部留保蓄積ペースと、信用取引拡大に伴う自己資本規制比率307%の推移。信用残拡大と資本政策のバランスが焦点
  • 2026年度に予定するCFDサービス展開・米国株式市場23時間化対応の具体的収益貢献時期。手数料無料化後の収益源多角化が構造転換を左右
  • 日銀追加利上げ時の金融収支へのネット影響。会社試算では政策金利+25bpあたり年6.5億円の増収だが、MATSUI Bank金利(最大年0.65%)の引き上げコストとの相殺度合いを確認
経営陣への論点
  • 広告宣伝費+41%増に対する顧客獲得単価(CAC)の推移と投資回収基準
  • 信用売残シェア低下(6%→2%)の要因と改善施策
  • CFDサービスの対象商品・リリース時期・初年度収益目標
  • エージェントIGホールディングスとの資本業務提携による保険領域の収益貢献見通し
  • 不正アクセス被害の再発防止策とサイバー保険のカバー範囲
  • MATSUI Bank残高683億円の今後の伸長目標と預託金運用収益への影響
  • 個人株式売買代金に占めるオンライン比率9割超の中での追加シェア獲得余地
  • 配当性向70%基準への変更後、自己株買いの可能性
  • 投信残高5,626億円のストック収益(信託報酬還元)の規模感
  • 米国株ビジネス(約5,000銘柄)の収益貢献の定量的な開示予定

主要業績ハイライト

勘定科目数値前年同期比
営業収益52,660百万円+34.3%
純営業収益49,087百万円+32.2%
営業利益23,462百万円+50.1%
経常利益23,813百万円+55.7%
当期純利益15,480百万円+47.4%
EPS60.11円+47.3%
潜在株式調整後EPS59.96円+47.3%
営業収益営業利益率44.6%+4.7pt
営業収益経常利益率45.2%+6.2pt
ROE(自己資本当期純利益率)19.6%+5.8pt
総資産経常利益率1.9%+0.6pt
1株当たり純資産318.39円+7.4%
年間配当50.00円+10.00円
配当性向83.2%▲14.8pt
DOE(純資産配当率)16.3%+2.8pt

事業セグメント別の業績

セグメント名売上高前年同期比営業利益前年同期比利益率
オンライン証券取引サービス(全社)52,660百万円+34.3%23,462百万円+50.1%44.6%
好調な事業
  • 株式・ETF委託手数料:23,782百万円(前年比+33.6%)。二市場個人売買代金+37%を背景に市場シェア4Qで9%へ拡大
  • FXトレーディング:5,819百万円(同+55.1%)。スプレッド縮小・通貨ペア拡充(32ペア)で売買代金558.6兆円に拡大
  • 金融収支:17,306百万円(同+29.0%)。預託金749,012百万円(同+20.6%)と金利上昇の二重効果
  • 投資信託:残高5,626億円(前年度末3,375億円比+66.7%)。積立金額は4Q単独で197億円と過去最高
不調な事業
  • 先物・オプション委託手数料:1,024百万円(前年比▲5.6%)。市場シェア21%を維持するも、売買代金伸長が委託手数料に結びつかず

業績予想比の進捗率

当社は証券業の業績が相場環境に左右されることから業績予想を開示しておらず、通期計画に対する進捗率の算出は不可。業績に重要な影響を及ぼす株式等委託売買代金等の主要業務数値や、委託手数料収益等の主要収益項目は月次で開示している。

勘定科目数値(通期実績)通期計画進捗率
営業収益52,660百万円非開示-
営業利益23,462百万円非開示-
当期純利益15,480百万円非開示-
  • 株式市場のボラティリティが高まる局面(年度末の権利確定、政治イベント等)で売買代金が増加する傾向。当期は2月の株価史上最高値更新(58,583円)と3月の急落で4Qの売買代金22.7兆円が突出

業績予想の変更有無

業績予想は非開示のため、修正該当なし。

株主還元への言及

年間配当50円(中間25円+期末25円予定)、配当性向83.2%、DOE16.3%。次期(2027年3月期)より配当性向基準を60%以上→70%以上に引き上げ、DOE基準は廃止し配当性向に集約。株主還元重視の姿勢を明確化。

財務状況

証券業の特性上、総資産の大半が顧客預託金・信用取引資産で構成され、自己資本比率6.1%は業態固有の構造。純資産は82,347百万円(前年比+7.5%)と利益蓄積が進み、自己資本規制比率307%(オンライン5社平均292%)を確保。

  • 主要数値
  • レバレッジ指標
勘定科目数値補足情報
現金及び現金同等物81,748百万円前期比+0.0%
現金・預金76,149百万円前期比+13.0%
預託金749,012百万円前期比+20.6%
信用取引貸付金423,617百万円前期比+27.1%
純資産82,347百万円前期比+7.5%
└ 自己資本82,016百万円前期比+7.5%
短期借入金316,900百万円前期比+4.6%
信用取引借入金53,901百万円前期比+390.6%
投資有価証券11,044百万円前期比+43.5%

決算発表と同時に出たニュース

該当なし

足許四半期中の主要発表

  • 2026/02/27
    2026年3月期の期末配当予想を1株25円(年間50円)とし、次期より配当性向基準を70%以上に引き上げ、DOE基準を廃止 2026年3月期の予定配当額および株主利益還元策の変更について
  • 2026/02/03
    2026年3月期第3四半期決算短信を開示(期中レビュー完了) 2026年3月期第3四半期 決算短信〔日本基準〕(非連結)
  • 2026/01/28
    東証売買内訳データを用いた分析画面を機能改善し、信用残・信用倍率の推移でより詳細な分析が可能に 東証売買内訳データを利用した売買分析画面の機能改善

過去1年間の大量保有報告/重要提案

  • 松井道夫: 保有比率46.99%(▲2.88pt) - 保有減少の変更報告書を提出。保有目的の詳細はEDINET原本で確認要
免責事項

株式会社エンヴァリス(以下「エンヴァリス」といいます。)は、国内外の機関投資家、国内の個人投資家に対して、本邦の上場会社への投資を検討する際に必要な情報を提供することで、グローバルならびに本邦資本市場の発展に貢献することを目的として、専属リサーチ・カバレッジ業務を行っております。

  • 目的と投資判断に関する免責

    本レポートは、情報提供のみを目的として作成されたものであり、有価証券その他の金融商品の取得、売却、または保有を勧誘するものではありません。また、特定の投資、財務、または税務に関する助言を構成するものでもありません。本レポートに含まれるいかなる意見、判断、または推奨も、投資活動の誘導を意図するものではなく、投資決定は、投資家ご自身の責任と判断に基づき行われるべきものであり、エンヴァリスおよび対象企業は当該投資決定にいかなる関与もしない点、ご留意ください。

  • 情報源、正確性、および保証の否認

    本レポートは、対象企業からの正式な依頼に基づき、当該企業への取材や提供された情報を利用して作成されています。本レポートの利用にあたっては、以下の点をご承諾いただいたものとみなします。 1. 情報源 エンヴァリスは、公に入手可能な情報、対象企業より開示された情報および取材等で提供された情報が真実かつ信頼できるものである前提で本レポートを作成しています。エンヴァリスにおいて、これらの情報の真実性に関する独自の事実確認や検証は行っておりません。 2. 正確性 本レポートに記載されている提供情報の解釈、分析、およびそれに基づく仮説や結論は、前項の情報を基に、エンヴァリスが独自の視点と分析手法を用いて独立して導き出したものです。 3. 保証の否認 対象企業により開示された情報に誤りや遺漏があった場合、それに起因する本レポートの内容の誤謬について、エンヴァリスおよび対象企業は一切の責を負いかねます。本レポートの正確性、安全性、妥当性、完全性等ならびに対象企業の過去のパフォーマンスや将来のパフォーマンスについて、明示的にも黙示的にもエンヴァリスおよび対象企業はいかなる保証もいたしません。

  • 責任の限定

    本レポートまたは本レポートから得られた情報を利用したことにより発生したいかなる費用、損害、または損失(直接的、間接的、付随的、結果的、または懲罰的損害を含む)についても、エンヴァリスおよび対象企業は一切の責任を負いません。本レポートの利用者は、その利用が自己の責任において行われることを承諾するものとします。

  • 利益相反の可能性

    エンヴァリスは、対象企業と、現在または将来において、取引関係を有する可能性があります。したがって、本レポートの客観性に影響を及ぼす可能性のある利益相反が存在する可能性があることを、投資家の皆様はご認識ください。

  • 報告内容の変更・更新義務の否認

    本レポートの内容および意見ならびに本レポートの作成の前提とした情報は、作成日時点のものであり、今後、予告なく変更される場合があります。エンヴァリスは、本レポートの内容を最新のものに更新する義務を負わず、投資家の皆様は情報の最新性についてご自身でご確認いただく必要がある点、ご留意ください。

  • 言語の優先順位

    本レポートは、日本語、英語および中国語で作成されていますが、各言語版の内容に相違または解釈上の差異が生じた場合には、日本語版を正本として取り扱い、日本語版の内容が優先されるものとします。

  • 著作権

    本レポートに関する一切の権利(著作権を含む)はエンヴァリスに帰属します。エンヴァリスの事前の書面による許可なく、本レポートの全部または一部を複製、再配布、またはその他の方法で利用することを禁じます。

  • 他の投資商品への利用

    本レポートならびにエンヴァリスおよび対象企業の商標および商号は、エンヴァリスが書面により事前に承認した場合を除き、いかなる投資商品(価格、リターン、パフォーマンスが、本レポートに基づいている、または連動している投資商品、例えば金融派生商品、仕組商品、投資信託、投資資産等)の情報配信・取引・販売促進・広告宣伝に関連して使用することを禁じます。