サマリー
2027年3月期中間期は売上高と全段階利益で中間期の過去最高を更新した。空調設備工事、化学品、エネルギーが増益をけん引した。中東情勢によるサプライチェーンへの影響と調達コスト上昇は期初想定を下回り、商社の調達力を生かした代替提案も業績を押し上げた。経営陣は下期偏重型から上期に数字を積み上げられる企業体へ変わってきたと説明した。一方、中東情勢がなお読めないことから、通期予想は減収減益のまま据え置いた。株主還元では中間配当を増配し、3〜4カ月以内に着地が見えれば業績予想を修正する方針を示した。
ポイント(決算の要点と成長アクション)
- 経営戦略と市場認識
- 期初予想は、中東情勢による一時的な混乱が上期中に収束する前提で作成された。社長は、上期にダメージを受けても通期で回復させる前提の計画だったと説明した。
- 経営陣は、下期偏重の傾向は残るものの、豊富な案件で上期から利益を積み上げられる企業体に変わりつつあると認識している。
- AI台頭でSIerの存在価値は移ると社長は認識している。AIがアクセスしやすいシステム整備(AIオペラビリティ)を捉えれば事業機会が増えるとした。
- 社長は今後の方針として、事業分野を重ねてつなげるイノベーション創出と、仕入先の潜在能力を開拓する商社機能の発揮を掲げた。
- 足元の事業進捗と要因
- 化学品では、電子部品関連顧客の稼働増と、中東情勢下での代替提案が国内とベトナムの化成品販売を押し上げた。原料を供給する製品が農水省の承認を得たことで、機能性素材の受託製造も伸びた。
- 化学品の有価金属回収事業は取扱量が増え、銅の回収量増加と銅価格の上昇も追い風となった。医薬品原薬は前年同期の自社製品大口販売の反動で減収となった。
- 空調設備工事は、北陸地区の大型新築工事の進捗と高付加価値化で売上高・営業利益とも3期連続の過去最高となった。受注は、首都圏と北陸の前年同期にあった過去最大案件の反動で減少した。
- 情報システムの減収減益は、前年同期のNEXT GIGAスクール大型案件の反動による。社長は、同案件を除けば増収・増益基調が続いていると説明した。
- 戦略的な重要施策や変化点
- 中東情勢への対応として、海外製エチレンの品質保証付き供給、植物由来アルコールや紙資材への代替、外部と連携したシンナーの製造委託など、サプライチェーンを組み替える提案を展開した。
- 中間配当を5円から6円に増やし、年間配当予想を14円とした。増配は、3年分の配当原資を確保する方針に基づいて判断した。
- アクティブファーマの連続フロー法では、1品目に1プラントを割り当て、品目と需要に応じてプラントを増設する方針を示した。プラントは電話ボックス2つ分ほどの大きさで、バッチ式の約10分の1のスペースで済む。
- 多様なリスク情報をAIが読み込みやすい形に正規化する技術で米国特許を取得した。付加価値分配計算書も初めて開示し、ステークホルダーへの分配バランスを示した。
今後の見通しと戦略
- 通期計画は売上高113,000百万円、営業利益3,000百万円、経常利益3,900百万円、純利益2,600百万円で、減収減益予想を据え置いた。上期時点の営業利益進捗率は61.7%、純利益の進捗率は73.1%に達した。
- 据え置きは、期初に想定した打撃が下期に起こり得るとの判断による。社長は、3〜4カ月以内に着地が見えれば必要に応じて業績予想を修正するとした。
- 社長は、減収減益予想を覆し、期末に増収増益だったと評価される水準を目指す姿勢を示した。業績が想定を上回れば、配当予想もさらに見直しを検討する。
- 環境ビジネスでは、回収できる金属の種類を増やし、廃品構成の変化に対応する。今後増えるとみるリチウムやコバルトの回収サプライチェーン構築も視野に入れている。
- 投資先のヘリカルフュージョンは、商用発電がおよそ10年先の見通しである。当社はパイロットプラント段階から資材調達や建築設計で事業機会を探る。Movus technologiesとはインドネシアでの実績をもとに、東南アジアでの事業連携を検討する。
ポジティブ要因
- 調達難の局面で、代替品、別の調達ルート、製造委託を組み合わせた提案力が、商社としての競争力を示した。
- アクティブファーマの連続フロー合成は、イグラチモドで全工程収率75%、純度96%超を達成した。成果は査読付きのACS誌に掲載された。
- AIプロトタイプをできたそばから公開する方針で、取引のなかった企業から問い合わせが増えた。クマ検知システムは企画から約30日でリリースした。
- 情報セキュリティでは、POWER EGG以外の顧客からも引き合いがあり、投資計画づくりなどのコンサルティング案件が増えている。
- 樹脂・エレクトロニクスでは、AI自動外観検査機の処理速度を高め、検査人員を生産へ振り向けている。人件費が上がるベトナムで優位に立つための布石となる。
- IRではリアルの露出機会を増やしている。社長によると、株価は1年半前の2倍以上の水準で推移している。
懸念事項・リスク
- 中東情勢はなお不透明で、下期に想定外の産業的ダメージが起こる可能性を経営陣も認識している。
- AIがSI事業に与える影響はまだ定まっていない。システムインテグレーターとしての価値の移り先を読み違えると、マイナスに働くリスクがある。
- 社長は、AIが攻撃側にも使われる情報セキュリティを、コロナ禍や中東情勢より小さいとは言えないリスクと捉えている。体制強化のコストが業績に影響するとの認識も示した。
- 人件費の上昇、価格転嫁への要請、仕入先からの値上げ要請など、コスト上昇要因が複合的に重なっている。
- 住宅設備機器は、オリジナルブランドのプロモーション費用が続き、営業損失が残っている。
- 空調設備工事の受注が前年の過去最大案件の反動で減っており、来期以降の売上の厚みを確認する必要がある。
業績ハイライト
中間期の売上高は56,780百万円(+0.3%)、営業利益は1,850百万円(+9.2%)で、中間連結会計期間として過去最高となった。売上高は5期連続、営業利益・経常利益は2期連続、親会社株主に帰属する中間純利益は4期連続で過去最高を更新した。利益は空調設備工事がけん引し、情報システムと樹脂・エレクトロニクスの減益を吸収した。
セグメント別業績
| セグメント名 | 売上高 | 前年同期比 | 営業利益 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| 化学品 | 23,546百万円 | +7.3% | 595百万円 | +31.0% |
| 空調設備工事 | 10,647百万円 | +11.3% | 1,463百万円 | +50.1% |
| 住宅設備機器 | 6,565百万円 | ▲7.3% | ▲378百万円 | 損失縮小 |
| 樹脂・エレクトロニクス | 6,348百万円 | +11.7% | 579百万円 | ▲31.7% |
| 情報システム | 5,993百万円 | ▲30.9% | 749百万円 | ▲10.4% |
| エネルギー | 3,437百万円 | +4.3% | 111百万円 | +33.1% |
| その他 | ― | ― | 94百万円 | ― |
- 経常利益: 2,389百万円 (前年同期比 +4.8%)
- 親会社株主に帰属する中間純利益: 1,900百万円 (前年同期比 +3.3%)
- 化学品 営業利益の計画進捗率: 72.5%
- 樹脂・エレクトロニクス 営業利益の計画進捗率: 69.0%
- 空調設備工事 営業利益の計画進捗率: 63.6%
- エネルギー 営業利益の計画進捗率: 23.4%
Q&A 一覧
- Q
抗リウマチ薬イグラチモドについて、今回は連続フロー法のプロセスを開発したという内容だったが、実用化に向けて今考えている具体的な取り組みがあれば教えてほしい。例えばパイロットプラントを作るといったことか。
Aパイロットプラント自体は、現在アクティブファーマの工場内で稼働させているものがある。イメージとしては、昔の電話ボックス2つ分くらいの中で1ラインが完結するサイズである。従来の釜で反応させるバッチ式では、その10倍ほどのスペースが必要だったと思う。連続フローは前回タムスロシン、今回イグラチモドと品目を増やしてきた。釜の場合は、例えばタムスロシンの製造に使った後に洗浄し、イグラチモドの製造に向けた段取り替えを毎回行っていた。今後は連続フロープラント1機分で1品目を作り続けるため、品目が増えるたびにプラントの数を増やして対応していく。1品目1プラントに限るわけではなく、製造量の多いものは1品目につき2プラントを作ることもできる。今後は品目を増やしながら、需要を見て工場内の連続フロー製造工程を増やしていきたい。
- Q
樹脂・エレクトロニクスで、事業拡大に向けた投資の実施により営業利益が減少したとの記載があるが、具体的な中身を教えてほしい。
A近年リリースを出してきたものも含むが、自動外観検査機への投資を積極的に行ってきた。当社はプラスチック製品を品目ごとに何万個単位で作っており、従来は1アイテムにつき10か所ほどを人手で点検して良品判定し、出荷していた。これをAIとカメラで自動点検する取り組みで、主にサイクルタイムの向上に力を入れてきた。例えば機械が1分間に10個出すのに、検査が1分間に8個だと滞留が生じる。これを1分間10個にするのが当社のアプローチである。4ラインで40個出るなら8個ずつ処理できる検査機を5台置けば勘定が合うという発想もあるが、当社はまずAIの反応速度を上げて処理速度を高め、自動で外観検査できる品目を増やしていく。そうすれば同じ人員数でも、検査に充てていた人を生産に回せるため、投資として非常に意義を感じている。ベトナムでも人件費が上がってきており、非常に有利な展開を可能にするための布石と考えている。
- Q
エネルギーで、中東情勢の影響により産業用燃料の単位利益が増加したとあるが、産業用燃料の相場上昇で利益を積み上げられたという理解でよいか。
Aおっしゃるとおりで、その理解で合っている。
- Q
化学品の環境ビジネスが増加したとあるが、この取り組みの意義や今後の見通しをもう少し詳しく教えてほしい。
A回収できなければ埋め立てられてしまうものが多いが、さまざまな電子部品には金属が使われている。近年多かったのは耐用年数を超えたソーラーパネルで、当社は廃品の回収を手伝っている。集めた廃品から金属を分離できる処理業者を見つけて委託し、リサイクルされた金属を回収している。意義は、地球環境や小資源国である日本への対応という一般的な理解のとおりである。私が見ているもう1つの意義は、小さな町工場や、これまで金属回収に携わってこなかった事業者も巻き込んでいる点である。委託先を開拓することは商社の基本的な価値の1つである。ただ、委託先は金属回収を受けると明示しているとは限らず、自社の工場や生産能力が何に使えるかを知らないケースもある。当社がこうすればできると示し、途中で有害ガスが出るプロセスがあれば、当社の資産として仕入先の工場内に排ガス処理プラントを設置し、一緒に稼働させることもある。受託して委託する商社は実際のものづくりに携わっていないと言われがちだが、仕入先の能力を当社の力で開拓するところにも意義を感じている。日本にはまだ眠っている潜在能力のある会社がたくさんあると信じている。ホルムズ海峡を巡る中東情勢で急に作るものがなくなった会社にも、金属回収事業を一緒にやらないかと持ちかけた。金属回収に限らず、こうした活動は常に行っており、非常に意義があると考える。近年は銅が値上がりしており、銅の回収量の増加と価格上昇が好影響を与えている。最近の取り組みは、取り扱える金属の種類を増やすことである。ソーラーパネルも最初の世代が一巡すると、次の世代は製造時の金属使用量が少ないものもあり、処理に必要な能力や対応金属を増やさなければならない。廃品に何が多く出てくるかという時代の流れを読みながら、回収できる金属を増やしている。使用量が減った金属のリサイクルは出てくる量も減るため、対応金属の種類を増やすことで売上を確保している。リチウムやコバルトなども今後増えてくると思うので、回収できるサプライチェーンを作る仕事だと考えている。
- Q
環境ビジネスの売上高は現時点でどのくらいの規模か。
A開示していない。まだそれほど大きくはない。
- Q
エリアは全国が対象か。
A全国である。九州には化学品の拠点がないが、一般の業者を開拓したり、その能力を当社と一緒に開拓したりしている。北海道でも行っている。
- Q
情報システムが減収減益になったのは、今期が低調だったのではなく前期に大規模案件があったためで、今期に特段のマイナス要素があったわけではないという認識でよいか。
Aそのとおりである。NEXT GIGAスクール案件は、GIGAスクールの時と同様に一気に何十億円も乗ってくる。参考にすべきは一昨年やその前の年の数字だと考え、資料にも並べている。GIGAスクール案件を除けば増収・増益基調で来ていることを理解してほしい。
- Q
2期前と比べれば好調であるという認識でよいか。
A特別な年だけこういう状況になる。教育関係などである。
- Q
クマ検知システムを構築した背景をもう少し詳しく聞きたい。
Aもともと当社のエンジニアの1〜2人が、面白がって画像から何かを検出するプロトタイプを自主的に作っており、いつか何かに使えたらよいと話していた。金沢の兼六園でもそれ以前から出没していたが、去年から今年の初めにかけてクマ出没のニュースが世の中を騒がせた時期があった。その時に、これをクマに使えばよいのではという話になり、クマ用にカスタマイズしてすぐにできたシステムである。プロトタイプがあったこともあり、企画から30日以内でリリースしたはずで、非常に軽やかにリリースできた事例としても示したかった。背景として一番大きいのは、クマ出没に対する世の中の感度の高まりである。
- Q
クマ検知システムが実際に被害を防いだ事例はあるか。
Aまだ検知されていないし、出てほしいとも思わない。会社の都合で、クマのリスクが高い丘陵地のオフィスに社員に勤務してもらっているので、安心して働けていることが今のところ非常に大きな効果だと考えている。
- Q
災害発生時のBCP対策システムは、どのような対応体制を構築するシステムか。能登半島地震や奥能登豪雨などを背景に作られたものか。このシステムは、能登半島地震や奥能登豪雨などを背景に作られたものか。
A例えば能登半島地震の時は、能登半島地震の時は三谷産業にどんどん物資が集まってきた。遠方の企業や団体が、石川県に水を何トン送る、集めた物資を受け取ってほしいなどと連絡してきた。県の事情は察するしかないが、倉庫がおそらくいっぱいで受け取れない時期があり、三谷産業が中間物流拠点の役を買って出る形になった。さまざまな企業やタレントの方など、それまで縁のなかった方々からも物資が届いた。その対応をシステムで効率化できるようにしようというのが、文脈の1つである。
- Q
能登半島地震の経験を今後の防災・減災に生かしたいという思いもあるシステムか。
A災害発生時に初めて使うシステムもこうした場面では多い。働き方が変化し、リモートで勤務する社員がいる会社も増えている。その中で、例えば安否確認や物資の管理などを、AIで作り上げるシステムで効率化できる。そうした有事の際に稼働するシステムを開発してきている。
- Q
今年も全国で災害が多かったが、今後そうした場面で生かしたいということか。
A平時の会社にこうした提案ができるかというと、一度痛みを感じないと感度が上がらないケースも多いと思う。ただ、これだけ全国であらゆる災害が起きている中では、備えあれば憂いなしという考え方で、これまでのBCP管理になかった切り口のAI活用への需要が生まれると考えている。
- Q
地元石川県で被災を体験したからこそ、痛みを感じたことのない会社にも感度高く伝えられるということか。
Aそうである。当社もそれほど甚大ではなかったが被災したし、本社が能登への中間物流拠点になった時期もあった。当事者の視点で必要だと感じたものは、既存システムとして存在しないものが非常に多かった。それをAIでスピーディーに作ってきたので、さまざまな顧客に使ってもらえるものになるのではないかと考えている。
- Q
通期業績予想を減収減益としているのは、中東情勢の影響が大きいという認識でよいか。
Aそうである。期初の目標や通期予想では、上期までに不安定な情勢がいったん収束するという想定を持っていた。しかし9月末を過ぎても風向きが読めない状況が続いており、まだ油断できない。当初の通期予想は死守し、それ以上を狙いたいという思いは当然ある。上期がこれだけ良かったのに保守的だと言われるかもしれないが、下期に予想しえなかった産業的ダメージが起こり得るという想定の下で、今のところ通期予想を変更しない選択をしている。3〜4カ月のうちにはある程度着地点が見えてくると思うので、必要に応じて業績予想の修正は行いたいが、今はまだその時期ではないと判断している。
- Q
通期業績について、中東情勢以外に想定しているネガティブ要素、ポジティブ要素があれば聞きたい。
Aさまざまな要素が複合的に来ている状況である。人件費の上昇があり、価格転嫁のある種の義務化など、国から民間企業への要請の質も変わってきている。全国の中堅・大企業は、仕入先からの値上げ要請に関するポリシーを変更してきていると思う。いろいろなものが値上がり基調にある中でホルムズ海峡の出来事があり、中東では今も攻撃のニュースを時々見るが、長期的にどうなるかはまだ読めない。それからAIの台頭がある。SaaS企業の株価が一斉に下がり、アンソロピックショックとも言われたが、AIが企業向けシステムインテグレーションの仕事にどのような悪影響を与えるかは定説が定まっていない。SaaS is deadとも言われたが、当社はそれほど悲観していない。ただ、役割は間違いなく変わっていく。ごく小規模な企業なら、リスクをあまり考えずにAIで構築したシステムで業務を回すのも1つの手だと思う。しかし数十人規模の会社でそれをやると、処理のロジックや論拠が開発担当者個人のAI会話記録の中にしか残らない。他の人がリバースエンジニアリングしようとしても分からず、本人もAIが作ったので分からないといった状況が生じると考える。したがってSaaS is deadではないが、何が重視されるかは変わっていくと見ている。具体的には、これまで情報システムは人が触るものだったが、AIが読み込みに行き、操作しに行く場面が増えていく。AIオペラビリティという考え方があり、AIがアクセスしやすく、間違えないための準備や整備が必要になる。人が触って使うことだけを想定してシステムを組むと今後はまずいと思うが、AIと人が協働する社会の情報システムという位置づけをしっかり捉えられれば、仕事の量はむしろ増える可能性があり、ポジティブにも転化できると考えている。それと地続きの話として、セキュリティの問題も同時に複合的に起きている。当社から見て超大企業の方々が大変苦労されているのを見ているので、対岸の火事と思わず、自社と、情報資産を預かる顧客企業のセキュリティの考え方や体制整備をうまく舵取りできれば、ポジティブに転化できる材料になると考えている。
- Q
AIは使い方を正しくすれば武器になり、間違えれば良くないものになるので気をつけるべきだという認識でよいか。
A使い方ももちろんそうだが、AIがビジネスの世界にここまで入ってきたことの意味をどう捉えるか次第だと感じている。環境が変わっているので、その中でシステムインテグレーターとしての存在価値がどこに残り、どこに移るのかを読み間違えれば良くない方向に行く。読み間違えなければ、むしろ好機を捉えて事業を拡大できる。経営者としてはそのように考えている。
- Q
三谷産業のグループ各社も含め、情報漏洩で大きな被害は今のところ確認されていないということでよいか。
A今回の一連の流れの中では、当社グループでは確認されていない。以前からゼロ件と胸を張って言いたいところだが、過去何十年か遡ると紙の帳簿をなくした事例が数件あり、その都度顧客にお詫びをしてきた。ファイアウォール的なソフトウェアで守る部分、ネットワーク構成で守る部分に加え、人の動き方の部分もある。紙の帳簿がなくなること自体が問題だが、その結果として紙を廃止してデジタルへの移行が進んだり、帳簿を持つ集金担当者の動き方の標準が整備されたりして、全体として漏洩リスクを下げてこられたと思う。当社の顧客の中にも、幸いにもこれまで漏洩を経験してこなかった企業がある。そうした企業には、システム面やサイバーセキュリティの強化だけでなく、運用レベルのもっと素朴な不備が残っているケースがあるのではないかと考えている。これまで幸いにも何もなかった企業が、経験不足による対応の遅れでより大きな漏洩やセキュリティ事故につながると、もう幸いだったとは言えなくなる。当社の経験や、多くの他社が辛い思いをされているところからも学びながら、自社と顧客の両方の情報セキュリティレベルを高めることが当社の役割だと感じている。
- Q
中東情勢や、古い話で恐縮だがコロナ禍ほどではないにせよ、情報セキュリティはかなり大きなリスクになっているという意味合いか。
A世の中的に言えば、見ようによってはコロナ禍のリスクよりも大きいかもしれない。生命に関わることではないかもしれないが、流出すれば生命や生存を脅かす情報もないわけではなく、未知数で読めない。対処の仕方が当初分かりにくかったコロナ禍に比べると、情報セキュリティは何に対応しなければならないかがある程度はっきり見えている部分もある。ただ、それだけでも非常に膨大なコストがかかることは想像できる。なおかつAIが攻撃側に活用され、セキュリティホールや不備が指摘される前に、想定外のスピードで攻撃を受けるようになっている。それを考えると、コロナ禍や中東情勢よりリスクが小さいとはなかなか言えない。当社は情報セキュリティを生業とする部分もある会社なので、グループ内ではやれることを正しくやってきているつもりである。ただ、近年被害に遭った大企業も対応を全くしていなかったわけではなく必ずしていたと思うので、何が落とし穴になるかは読めない。その意味でリスクは非常に大きいと感じている。自社でも強化しなければならないし、顧客への提案も増やしていかなければならないので、会社の業績に何らかの影響を与えることは間違いないと思う。
- Q
POWER EGGなどを使っている会社は多いと思うが、そうした会社からセキュリティの引き合いや強化してほしいという声は届いているか。
APOWER EGGの顧客ではない会社からも、三谷産業のセキュリティの考え方を教えてほしいといった引き合いや問い合わせがある。三谷産業ほどはやれないと言われても、現実としてここまでのリスクは潰そうというシナリオを描き、マイルストーンを作り、投資計画を立てるといったコンサルティングをさせてもらう会社も増えてきた。皆さん悩んでいるのだと思う。当社も100点の回答ができているかは分からないが、極力最新の情報に目を光らせ、攻撃側のトレンドをしっかり追いかけることで対処していきたいという思いである。
- Q
中東情勢や情報セキュリティなどのリスクがある中で、これから1年の経営の見通しや意気込みを社長に伺いたい。
A通期についてはいい意味で覆したい。特に減収減益については、終わってみれば増収増益できたと言ってもらえるくらいに頑張りたい。来年度以降も、今の三谷産業は近年の事業分野を重ねたりつなげたりしながらイノベーションをつくるあり方を大切にしたい。仕入先にあたる会社の能力を開拓するといったことも多方面で発揮しながら、日本のイノベーションに貢献していきたい。
- Q
短信を見ると売上高も最終利益も微増だが、下期偏重の中で利益が上がっている、好決算だという話もあった。前期の業績がよほど良かったのかとも考えられるが、通期で減収減益を予想する中で中間配当の増配を決めた理由を聞きたい。
A当社の配当は、3年分の原資を確保するというポリシーに基づいて金額を決めている。前年までの業績も好調だったことから、1円増配しても通期業績予想に大きな毀損を与えないとまず判断した。3年分の原資を確保したうえで増配させていただく。減配についても、業績が変動した時にたちまち減配しなければならない事態を避けるためのポリシーだと見てほしい。長期保有の一般株主や個人株主が非常に多く、その多くが当社株を長期安定的な金融資産と認識している。それにはこの配当ポリシーも影響していると考えている。数十年にわたって保有する個人株主がこれほど多い会社は珍しいと思う。業績がある年に跳ねたらすぐに配当へ満額を振り向けるのではなく、3年分をしっかり確保して安定配当を実現するという考え方だと理解してほしい。
- Q
中東情勢による化学製品の供給リスクに商社らしく対応できたのなら、上方修正してもよかったのではないか。なぜ固く見ているのか。
Aそもそも今期の業績予想は、上期のどこかで大きな打撃を受ける可能性が高く、そのダメージを回復させながら目指すという考えで作った。通期の前半でダメージを受ける想定を持ちつつ、通期でしっかり数字を合わせていくという前提で提示したものである。上期は非常に好調で、それだけを見れば通期の上方修正は当然選択肢にある。しかし下期に何も起きないとはあまり思っておらず、期初に想定していたことが下期に起きるかもしれない。そうなれば、上期がこれだけ好調でも着地は当初予想どおりの水準になるのではないかと判断し、今回は据え置きとした。ただ、着地点が見える時期は期末の締めより早いので、3〜4カ月以内に着地点が見えれば業績予想の修正を行いたい。
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