東京エレクトロン 1Q 決算説明会速報

エッチング通期売上1兆円、プローバ1,000億円超が視野に、粗利率50%超を2年以内に目指す経営陣の具体的コミットメント

配信日2026年7月30日 19:30 JST

サマリー

FY2027 1Q売上高7,323億円(前年同期比+33.3%)、営業利益2,114億円(同+46.1%)と四半期過去最高を更新。WFE市場見通しをCY2026で$150B以上、CY2027で$190B以上に更新し、上期業績予想を売上高1兆6,200億円へ上方修正。CEOは粗利率50%超を2年以内に達成する方針を明示し、営業利益1兆円が今期視野に入ったと言及。熊本地震の業績影響は軽微と判断。

ポイント(決算の要点と成長アクション)

  • 経営戦略と市場認識
    • WFE市場はCY2026 $150B以上→CY2027 $190B以上、AIデータセンター向けがWFE全体の50%に迫る勢い
    • CY2026内訳はDRAM $40B前半(YoY+30%強)、NAND $10B中盤(YoY+40%以上)、ロジック・ファウンドリ $80B半ば(YoY+15%以上)
    • エージェンティックAIの普及でGPUだけでなくCPU・汎用サーバーにもAI需要が波及、全アプリケーションが全方位的に成長
  • 足元の事業進捗と要因
    • 台湾向け売上が前四半期比+18.9%と急伸し構成比25.4%、中国向けは30.4%で通期30%台前半を想定
    • フィールドソリューション売上1,880億円(前四半期比+15.5%)、パーツ・サービス1,357億円と工場稼働率の高さを反映
    • 不揮発性メモリ向け新規装置が前四半期比+32%と回復傾向
  • 戦略的な重要施策や変化点
    • NVIDIA社との協業拡大を発表、Epsira基盤上でエージェント型AI・ロボティクスソリューションを開発推進
    • 先端ロジック向けデバイスプローバPrexa SDPを4月リリース、プローバ市場の10〜15%を新規SAMとして狙う
    • 粗利率50%超を2年以内に達成する目標を新たに提示。価格適正化に加え次世代装置創出・スタートアップ効率化等5施策を推進

今後の見通しと戦略

  • 上期売上予想1兆6,200億円(前回予想比+500億円)、営業利益4,580億円(同+270億円)へ上方修正。いずれも半期過去最高
  • 下期は上期を上回る成長を想定。顧客からの納期前倒し・追加購入要請が継続
  • 中計目標の売上高3兆円以上・ROE30%以上はOn Track。営業利益率35%はIn Progressだが今期営業利益1兆円が視野
  • NAND 400層向け極低温エッチングがCY2027から量産展開開始。新低抵抗メタル成膜でもPOR獲得済
  • DRAM配線工程エッチング装置は2030年までの累積売上が1兆円
  • 宮城生産革新センターは2027年夏竣工予定、労働生産性4倍・生産キャパシティ3倍を目標に生産体制を強化

ポジティブ要因

  • Q2新規装置売上は四半期過去最高の7,087億円を見込む(前四半期比+33%)
  • 塗布現像YoY+50%超、エッチングYoY+25%超、アドバンスドパッケージングYoY+70%超と主力3事業が高成長
  • エッチング通期売上1兆円、プローバ通期1,000億円超が見通しとして示された
  • 中間配当384円(前年同期264円)と過去最高を更新、1:5の株式分割も投資家層拡大に寄与
  • 最大1,500億円の自己株式取得プログラムを実行中(6月末時点で約115億円取得済)
  • WFE見通しは顧客フォーキャストの積み上げに基づく実需ベースの数字であり、特段の強気前提ではないとCEOが説明

懸念事項・リスク

  • 営業利益率28.9%と中計目標35%には依然ギャップ。価格適正化・コスト構造改善の具体的な定量効果は非開示
  • 中国向け売上比率30.4%と高水準を維持しており、米中規制の変更が業績に与える影響は注視が必要
  • 2Q営業利益率は人件費増(昇給・業績連動賞与)等により1Qから低下する見通し
  • 熊本地震で一部パートナー企業が稼働停止中。余震リスクは引き続き存在
  • 過去5年間のWFEシェアは低下傾向(為替・米中規制・特定顧客の投資縮小が要因とCEOが説明)
  • 中東情勢・サプライチェーンの地政学リスクは現時点で特筆すべき支障なしとしつつも要注視

業績ハイライト

FY2027 1Q売上高7,323億円(前年同期比+33.3%、前四半期比+2.9%)、営業利益2,114億円(前年同期比+46.1%)と売上高・売上総利益・営業利益の3項目で四半期過去最高を更新。営業利益率28.9%、売上総利益率46.8%と前四半期並みの水準を維持。親会社株主帰属当期純利益は1,643億円(前四半期比▲23.3%)だが、前四半期の政策保有株式売却益の剥落が主因。

セグメント別業績

区分売上高前年同期比営業利益前年同期比
連結合計7,323億円+33.3%2,114億円+46.1%
  • SPE新規装置売上高: 5,313億円(前年同期比+34.5%)
  • フィールドソリューション売上高: 1,880億円(前年同期比+33.1%)
  • パーツ・サービス売上高: 1,357億円(前年同期比+37.5%)
  • 中古・改造売上高: 523億円(前年同期比+23.1%)
  • 売上総利益率: 46.8%(前年同期比+0.6pt)
  • 営業利益率: 28.9%(前年同期比+2.6pt)
  • 研究開発費: 720億円(前年同期比+15.9%)
  • 設備投資額: 399億円(前年同期比▲24.4%)
  • フリーキャッシュフロー: 805億円
  • 手元資金残高: 4,096億円
  • 1株当たり中間配当予想: 384円(前年同期264円、+45.5%)

Q&A 一覧

  • Q: CY2026・CY2027のWFE市場見通しについて、アプリケーションごとの伸び率を教えてほしい。またフィジカルイヤーで見た場合、下期に向けてどのようなアプリケーションが成長を牽引するのか
    A: 昨年はロジック・ファウンドリ65%、メモリ35%だったが、今年はメモリの伸長が大きく、ロジック60%・メモリ40%程度になる。カレンダーイヤーとフィジカルイヤーで大きな違いはなく、エージェンティックAI向けの引き合いが非常に強い。HBM、NAND、GPU、さらにCPUの用途も広がっており、エージェンティックAIが最先端エリアを中心にWFE全体を牽引している。
  • Q: CY2026のWFE $150B以上について、DRAMとNANDそれぞれの構成イメージと、CY2027での構成変化があれば教えてほしい
    A: CY2026はDRAMが$40B前半、NANDが$10B中盤、ロジック・ファウンドリが$80B半ば、ファクトリーオートメーション・ウェーハレベルパッケージが約$10Bで合計$150B。YoY成長率はDRAM+30%強以上、NAND+40%以上、ロジック・ファウンドリ+15%以上。CY2027は全体で20%程度成長するが、構成比に大きな変動はない。
  • Q: 収益性改善に向けた5つの施策について、それぞれの時間軸と効果の大きさを定量的に教えてほしい
    A: 1番目の付加価値の高い次世代装置と2番目のアップグレードは2〜3年周期で新モデル・バージョンアップモデルを継続的に創出し、歩留まり向上やツールアップタイム向上に寄与する。複数の装置ラインナップでスケーリングとアドバンスドパッケージングの両方を提案できるのが強み。3番目の装置立ち上げ効率化は、ファブ建設の急増に対応してモジュール化や自動化により少人数での立ち上げを実現するもので、既に効果が出始めている。4番目のコスト低減はサプライチェーン全体でサプライヤーと協力して継続的に進めている。5番目の価格適正化も含め、5つの施策により粗利率50%超を2年以内に達成する計画。
  • Q: 前回決算からWFEの見通しが上方修正された背景について、何が一番牽引しているのか。市場コンセンサスよりやや強気に見えるがその理由は
    A: WFEの見通しは顧客からのフォーキャストや要望を積み上げた結果であり、特段強気に見ているわけではない。牽引しているのはDRAM、NAND、ロジック、パッケージすべてのアプリケーションが全方位的に強くなっていること。HBM、最先端DRAM、NANDに加え、AIサーバー需要によりCPUや汎用サーバーにもAIの恩恵が波及しつつある。
  • Q: WFEが$250Bや$300Bに近い水準まで拡大した場合、チップメーカーからの適切なフォーキャスト提示があれば装置メーカーとして対応可能か
    A: 日本国内にサプライチェーンクラスターとして開発・生産体制を構築しているのが当社の強み。2年前から長期フォーキャストの確認を取りながら準備を進めている。一方でハイパースケーラーのキャッシュフローやエネルギーのバランスも見ていく必要がある。現時点で最大の数字に即座に対応できるキャパシティがあるわけではないが、2年のフォーキャストの中で着実に顧客要求に対応できるのが東京エレクトロンの強み。
  • Q: 宮城生産革新センターの稼働前後でWFEベースでどのくらいまで対応可能か、ベンチマークになる数字はあるか
    A: 宮城生産革新センターが立ち上がると現在のキャパシティの3倍の生産能力を確保する。当初2030年代を想定していたが、マーケット動向に合わせて前倒し・加速させていく。3倍に持っていくメソッドは出来上がっており、需要に合わせてタイミングを早めればよいため、かなりアップサイドまでカバーできる。
  • Q: 価格設定の適正化について、既存価格と比べてどのくらいのパーセンテージで引き上げられるのか
    A: 各社と同時並行で進めている関係上、具体的なパーセンテージの回答は控える。
  • Q: 来期はWFE見通しに価格変更分が加わり大きな増収幅になるという理解でよいか。短期的には価格設定が利益率改善で一番大きいという理解でよいか
    A: トップラインとしてはその理解で正しい。短期的には価格設定の効果が大きいが、価格設定だけに頼るのはよくないため、継続的に1番から4番の施策もしっかり進めていく。
  • Q: 営業利益1兆円が視野に入ったというのは今期達成が見えてきたという話か、もう少し先の話か。2Qの営業利益率が1Qから低下する要因は何か
    A: 営業利益1兆円は今期の話。2Qの利益率低下については、7月の昇給や業績連動賞与の増加といった人件費要因、プロダクトミックスの影響がある。ただし現在の計画数値を超える水準を目指している。
  • Q: 来期以降の営業利益率の方向感について、WFEの大幅成長を踏まえるとトップラインの伸びだけでも35%に近づけるのではないか。新中計ではどのような水準を目指すのか
    A: 35%は足元の話であり、はるかに超えるような形で取り組んでいく。既存事業の成長、効率化への投資、SAMの拡大を含め、プラズマ技術・熱制御技術・圧力コントロール・ケミカル・ボンディング装置・ウェーハトータルソリューション等の技術を活用し、利益率としてもワールドクラスを常に目指していく。
  • Q: 過去5年間シェアが低下傾向だった要因は何か。これからは何が違ってシェアが上がるのか
    A: 過去のシェア低下要因は3つ。1つ目は為替で、2020年の115円から昨年146円、足元160円台と円安が進行した。2つ目は米中規制の影響で、米国産装置の先行購入によるスロット入替が発生した。3つ目はシェアの高い特定顧客の投資縮小。今後の対応として、価格適正化を全社的に推進すること、特定顧客に依存しない形で極低温エッチング・DRAMハーフエッチング・低抵抗成膜装置など新しいアプリケーションで新装置を展開すること、ウェーハtoウェーハボンディングなど当社が先行する技術を立ち上げることで、シェア回復を目指す。
  • Q: 今回の粗利率改善に寄与した要因について、価格適正化以外にプロダクトミックスや為替の影響はあるか
    A: 粗利率改善の一番大きな要因は為替の影響。プロダクトミックスでも利益率の高い製品の売上が伸びている。価格適正化も徐々に効果が出てきている。
  • Q: 来期の粗利率について、さらに改善する方向か、為替次第でフラットになるのか
    A: 為替の影響は不透明な部分があるが、5つの施策を確実に実行することで粗利率50%超を目指して改善を続けていく方向。
免責事項

株式会社エンヴァリス(以下「エンヴァリス」といいます。)は、国内外の機関投資家、国内の個人投資家に対して、本邦の上場会社への投資を検討する際に必要な情報を提供することで、グローバルならびに本邦資本市場の発展に貢献することを目的として、専属リサーチ・カバレッジ業務を行っております。

  • 目的と投資判断に関する免責

    本レポートは、情報提供のみを目的として作成されたものであり、有価証券その他の金融商品の取得、売却、または保有を勧誘するものではありません。また、特定の投資、財務、または税務に関する助言を構成するものでもありません。本レポートに含まれるいかなる意見、判断、または推奨も、投資活動の誘導を意図するものではなく、投資決定は、投資家ご自身の責任と判断に基づき行われるべきものであり、エンヴァリスおよび対象企業は当該投資決定にいかなる関与もしない点、ご留意ください。

  • 情報源、正確性、および保証の否認

    本レポートは、対象企業からの正式な依頼に基づき、当該企業への取材や提供された情報を利用して作成されています。本レポートの利用にあたっては、以下の点をご承諾いただいたものとみなします。 1. 情報源 エンヴァリスは、公に入手可能な情報、対象企業より開示された情報および取材等で提供された情報が真実かつ信頼できるものである前提で本レポートを作成しています。エンヴァリスにおいて、これらの情報の真実性に関する独自の事実確認や検証は行っておりません。 2. 正確性 本レポートに記載されている提供情報の解釈、分析、およびそれに基づく仮説や結論は、前項の情報を基に、エンヴァリスが独自の視点と分析手法を用いて独立して導き出したものです。 3. 保証の否認 対象企業により開示された情報に誤りや遺漏があった場合、それに起因する本レポートの内容の誤謬について、エンヴァリスおよび対象企業は一切の責を負いかねます。本レポートの正確性、安全性、妥当性、完全性等ならびに対象企業の過去のパフォーマンスや将来のパフォーマンスについて、明示的にも黙示的にもエンヴァリスおよび対象企業はいかなる保証もいたしません。

  • 責任の限定

    本レポートまたは本レポートから得られた情報を利用したことにより発生したいかなる費用、損害、または損失(直接的、間接的、付随的、結果的、または懲罰的損害を含む)についても、エンヴァリスおよび対象企業は一切の責任を負いません。本レポートの利用者は、その利用が自己の責任において行われることを承諾するものとします。

  • 利益相反の可能性

    エンヴァリスは、対象企業と、現在または将来において、取引関係を有する可能性があります。したがって、本レポートの客観性に影響を及ぼす可能性のある利益相反が存在する可能性があることを、投資家の皆様はご認識ください。

  • 報告内容の変更・更新義務の否認

    本レポートの内容および意見ならびに本レポートの作成の前提とした情報は、作成日時点のものであり、今後、予告なく変更される場合があります。エンヴァリスは、本レポートの内容を最新のものに更新する義務を負わず、投資家の皆様は情報の最新性についてご自身でご確認いただく必要がある点、ご留意ください。

  • 言語の優先順位

    本レポートは、日本語、英語および中国語で作成されていますが、各言語版の内容に相違または解釈上の差異が生じた場合には、日本語版を正本として取り扱い、日本語版の内容が優先されるものとします。

  • 著作権

    本レポートに関する一切の権利(著作権を含む)はエンヴァリスに帰属します。エンヴァリスの事前の書面による許可なく、本レポートの全部または一部を複製、再配布、またはその他の方法で利用することを禁じます。

  • 他の投資商品への利用

    本レポートならびにエンヴァリスおよび対象企業の商標および商号は、エンヴァリスが書面により事前に承認した場合を除き、いかなる投資商品(価格、リターン、パフォーマンスが、本レポートに基づいている、または連動している投資商品、例えば金融派生商品、仕組商品、投資信託、投資資産等)の情報配信・取引・販売促進・広告宣伝に関連して使用することを禁じます。