横浜フィナンシャルグループ インタビューレポート

RORAを軸に規模・金利・流動性・資本を一体運営、ROEは27年度11.5%超および28年度12%を目指す横浜フィナンシャルグループ

配信日2026年10月19日 13:35 JST

エグゼクティブ・サマリー

エンヴァリスは、代表取締役 小野寺 伸夫氏ならびに経営企画部長 鈴木 佐緒子氏による「横浜フィナンシャルグループ IR Day」に参加する機会を得た。 金利が戻った今、銀行経営の論点は量の確保から、限られたバランスシートと資本をどこに、どの規律で配分するかへ移った。これが同社経営陣の基本認識である。横浜フィナンシャルグループは、規模・金利・流動性・資本の4要素をRORAという一つの判断軸で一体的に運営する方針を示した。貸出金利と預金金利の追随率の差、低収益資産の入れ替え、営業店評価へのRORA指標の組み込みを積み重ね、金利上昇だけに頼らずにROEを持続的に高める道筋を描く。中計最終年度のROE11.5%超はストレッチ目標と位置づけつつも、意志を持てば届く水準との見方を示した。

企業からのメッセージ

金利のない世界では、いかに量を確保するかが銀行経営の論点だった。金利が戻った今問われているのは、限られたバランスシートと資本をどこに、どれだけ、どのような規律で配分するかである。規模・金利・流動性・資本を一体でコントロールし、RORA向上を軸に持続的なROE成長を実現する。"(代表取締役 小野寺伸夫氏)

インタビューで示された主な論点

  • RORAを判断軸とするバランスシートの一体運営

    貸出を伸ばせば流動性と資本を使い、預金金利を動かせば利鞘が変わる。このため4要素は個別に管理できない、というのが同社の考え方である。リスクアセットの伸びが3%にとどまる一方で国内資金利益は12%伸び、規模の拡大より利益の質で成長する方向が鮮明になった。営業店には新規実行RORAという独自指標を与え、RORAは本部だけでなく現場にも根付く指標となりつつある。

  • 預金基盤の強化と利鞘拡大の両立

    政策金利の上昇に対し、貸出金利の追随率は78%、預金金利は44%にとどまる。この差が利鞘改善の源泉である。個人預金が約7割を占め、給与振込や決済に使われる流動性預金が厚いことが、低い追随率を支えている。営業店評価では基盤預金のウェイトを約1割から3割へ引き上げ、支店長から店頭・事務人員まで全員で預金に取り組む体制へ切り替えた。

  • 低収益資産の再配置と規律ある資本活用

    利回り約0.3%と逆鞘状態にある満期保有円債は新規投資を止め、2031年までの償還資金約5,640億円を貸出や機動的な円債運用に振り向ける。政策保有株式は2030年3月末までに連結純資産の10%未満とする目標を掲げ、経営層も交渉に加わって縮減ペースを上げる構えである。資本の使い道は、オーガニック成長、戦略投資、株主還元の順に優先する。資本をため込まず規律を持って生かす姿勢を一貫させている。

エンヴァリスの着眼点

インタビュー Q&A ハイライト

  • Q

    国内貸出の収益性が上がるなか、自社株買いよりも貸出に資本を振り向ける方向に変わるのか。PBRのディスカウントをどう解消するのか。

    A

    優先順位は従来どおり、オーガニック成長、戦略投資、株主還元の順である。調達コストを差し引いても十分なRORAが取れるアセットがある限り、資本は優先的に貸出に使う。戦略投資は、自らマネージでき、PMIまで担える金融および近接領域に絞り、のれん償却を踏まえてもROE向上につながる案件だけを選ぶ。還元を先行させるといったメッセージを出すつもりはない。この資本循環を目に見える実績として積み上げることが、資本政策をめぐる不透明感を晴らす唯一の方法と考えている。

  • Q

    2027年度ROE11.5%超は、住宅ローン金利への反映の遅れを考えると高い目標ではないか。

    A

    ストレッチした数字であることは認める。ただし、営業部門の案件在庫は今年度も積み上がっており、試算には債券の再投資・入れ替えによるキャリー収益の改善を含めていない。政策保有株式の縮減加速も合わせれば、意志を持てば到達できる水準と考えている。

  • Q

    満期保有債の償還資金や日銀当座預金を円債に振り向ける際、年限と量はどう判断するのか。

    A

    金利上昇局面のため、経営としては慎重に臨む方針を市場部門に示している。足元は2年債など中期ゾーンが中心で、水準が上がってきた10年債にも少しずつ手を付け始めた段階である。基本は2年から5年のラダー型ポートフォリオの構築を目指す。有価証券は預貸の余資運用と位置づけており、日銀当座預金の所要額を除けば、理論上は全額を円債に振り向けることも可能である。

  • Q

    与信費用はどのアセットクラスから先に出てくるのか。

    A

    出るとすれば、まず法人部門のうち従業員数十人規模の中小企業である。価格転嫁や人材確保の可否で二極化が進んでいるが、小口に分散しているため大きなイベントにはならないとみている。むしろ、こうした企業のM&Aや事業承継のマッチングを先回りして支援することが与信費用のコントロールにつながる。1件当たりの損失が大きくなり得るLBOローンは、審査段階での多面的な選別に加え、ミドル・バックのモニタリング体制を強化して対応する。

  • Q

    政策保有株式の縮減が目標に対して進んでいないのではないか。

    A

    ご指摘は真摯に受け止める。支店長から経営トップまで、取引先の階層に合わせて交渉を重ねている。CGコードの浸透もあり、かつて岩盤とみていた先からも売却応諾を得られるようになった。出来高やブロック売却先の確保、資本業務提携との兼ね合いなど個社の事情に合わせて時間を分散する必要はあるが、応諾先は着実に増えており、ここから縮減を加速させていく。

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