エグゼクティブ・サマリー
エンヴァリスは2026年4月30日に、大林 政昭氏(執行役員CFO)より、通期決算及び「中期経営計画2028」発表後の取材機会を得た。ベルシステム24ホールディングスは「中期経営計画2028」を発表し、2029年2月期に売上高1,750億円、営業利益160億円を数値目標として掲げた。経営陣は前中計の未達要因を率直に総括した上で、生成AIを活用した自動化サービスとロールアップ型M&Aによる事業基盤拡大を新たな成長エンジンに据える方針を明確に示した。「Hybrid Intelligence for All」をコンセプトとし、「ヒトとAIの共創で新たな価値の創出」を推進する同社は、コスト構造の抜本的転換と先行者メリットの確保を通じ、業界におけるゲームチェンジャーの立ち位置を志向している。
企業からのメッセージ
我々の強みはAIエンジンを活用して、専門業務知見や顧客基盤とともに全体をパッケージとしたコーディネート力である。40年以上の運用実績とデータの蓄積がそれを支えており、この業界では一歩、二歩、先に行っている。先行者メリットをしっかり取りに行く。
インタビューで示された主な論点
生成AI自動化サービスによる新収益の創出
今期を生成AI売上の「元年」と位置付け、2028年度には、コンタクトセンター自動化の導入拡大により年間100億円の売上収益を見込む。この100億円は保守的な前提に基づくものであり、200億円規模への上振れ余地もある。課金モデルは基本料金+従量制を基本とし、従来型の人時契約を中心としたモデルから抜本的に転換する。生成AI案件の粗利率は、既存事業(約20%)の約2倍と大幅に改善する見通し。当面は新規顧客獲得を中心とし、既存顧客とのカニバリゼーションは大きくは見込んでいない前提。
ロールアップM&Aと事業投資による従来ビジネスとBPO領域の拡大
200億円の事業投資枠を設定し、ロールアップ戦略による事業規模の拡大、および業界特化型・業務特化型の企業を対象としたM&A・提携を推進する。BPO領域の拡大においては、ベルシステム24ホールディングスとレイヤーズ・コンサルティングが共同で設立した、経理・人事分野を中心としたコンサルティング×アウトソーシングを主力事業とするHorizon Oneの成功モデルを横展開し、スマートビジネスサポート(SB)業務で3年間に100億円の売上増(M&Aで50億円、AIエージェント・BPRコンサルで50億円)を計画する。既存事業を上回る収益性またはシナジーが見込める案件に厳選投資する方針。
AVILEN・伊藤忠商事との三社提携によるAIエージェント事業の展開
ベルシステム24はAVILENおよび伊藤忠商事と業務提携契約を締結し、AIエージェントのオーダーメイド開発や実装、AI人材へのリスキリング、BPOを包括的に支援するソリューションを提供開始した。SB業務における事務BPO領域で、単なる人的支援にとどまらないAI融合型サービスを展開し、人手不足を追い風とした市場拡大を狙う。
エンヴァリスの着眼点
インタビュー Q&A ハイライト
- Q
前中計未達の主因と、本中計における成長ドライバーは何か
Aコロナ後にクライアント側のDX推進とエンドユーザーのITリテラシー向上が進み、通信キャリアを中心に問い合わせ件数が想定以上に減少した。eコマース関連の需要も一巡し、外注ニーズの拡大が遅れたことが主因。本中計ではSC業務で生成AI活用とロールアップ戦略、SB業務でM&AによるBPO領域拡大とAIエージェント提供を二本柱とし、ミニマム100億円の生成AI売上を固めの想定で見込んでいる。
- Q
生成AI自動化サービスの課金モデルと収益構造はどのように設計しているか
A基本料金+従量制をベースとし、一部は完全固定も想定する。人件費に代わるコストはAIエンジン使用料とアプリケーション開発費、プロンプター等の人材コストが主な構成要素となる。生成AI案件の粗利率は既存事業の約2倍、既存事業は約18〜20%を維持する想定であり、新規100億円の売上が実現した場合、約40億円のグロスプロフィットが純増する計算となる。
- Q
250億円の戦略投資の配分と回収見通しはどうなっているか
Aデータ活用の拡張(生成AI関連)に40億円、AI人材育成に10億円、事業投資(M&A)に200億円の配分。40億円のうち約半分がアプリ開発(CAPEX)、残り半分がAI人材の採用・人件費(OPEX)。事業投資の200億円は現状の利益率以上(税後約6%)のリターンを想定。AI人材は3年間で約100名の増員を計画し、年間30〜40名ペースで採用する方針。配当性向50%との両立は、必要に応じて借入金を増やすことでキャッシュバランスを調整する。
- Q
AIエンジンプロバイダーに対する構造的な参入障壁はあるか
AAIエンジンはあくまで車のエンジンであり、それだけでは走れないという認識。40年超の運用実績に基づくパッケージ化能力、クライアントとの信頼関係、業務プロセスの設計・運用ノウハウが同社固有の強みであり、エンジン提供だけでは代替できない領域と位置付けている。伊藤忠・TOPPANとの関係は排他的契約ではないが、主要株主としての相互利益の観点からパートナーシップは堅固に機能している。
- Q
1人当たり利益+20%の目標達成に向けた内訳と人材戦略の方向性は
A稼働率の向上と業務効率性の改善の組み合わせで実現する方針であり、細かい要素分解は行っていない。オペレーター数は約3万人を維持しつつ、同水準の人員で売上・利益の増加を目指す。高付加価値人材は2,500〜3,000名の規模を大きく変えず、AI活用によるクオリティ向上に注力する。BPRコンサル人材の育成投資は3年間10億円の人材育成枠に含まれている。
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