3Q決算を踏まえた評価点
9M営業利益27,507百万円(前年比+32.0%)と2桁増益。AI需要を受けたファインカーボン、中東情勢を受けたスメルティング&ライニング、MLCC向け発熱体の工業炉が伸び、利益は複数事業から上積みされた。3Q単独では売上総利益率27.3%、営業利益率12.4%(当レポート試算)と、四半期を追うごとに収益性が切り上がっている。
- 売上総利益率25.7%(+0.6pt)、販管費の伸びは同+10.7%と売上総利益の伸び+18.2%を下回り、営業利益率10.1%(+1.3pt)に改善
- EBITDAマージン20.2%(当レポート試算)と、Vision 2030で掲げる目標20%の水準に9M累計で到達
- セグメント利益の増加7,152百万円(当レポート試算)のうち、スメルティング&ライニングが+3,315百万円、ファインカーボンが+1,723百万円を占め、成長ドライバーが分散
- 黒鉛電極は減収下でも構造改革の効果で増益、米国の電極価格が3Qから上昇に転じ、事業環境が反転局面入り
- 中間配当20円(前年15円)、FCSRによる15,001百万円の自己株式取得と8,831,200株の消却を実施し、株主還元を強化
3Q決算を踏まえた懸念点
営業増益に対し、親会社株主に帰属する四半期純利益は16,259百万円(+0.8%)にとどまった。前年の投資有価証券売却益・事業再編引当金戻入額の剥落、支払利息の増加、非支配株主に帰属する四半期純利益の+44.3%増が営業段階の伸びを打ち消しており、最終利益への転化率が課題となる。主力カーボンブラックは増収ながら利益率が低下しており、収益性の持続性を確認する必要がある。
- カーボンブラックは売上高+16.6%に対し営業利益+6.4%、タイヤメーカーの生産調整による数量減を新規開拓とスポット取引で補う構図
- 2025年4Qに連結化したタイ拠点の上乗せは4Qで前年同期比較の一巡を迎え、カーボンブラックの増収寄与は縮小する見込み
- スメルティング&ライニングの増益にはRuC®のライセンス料収入を含み、一過性要素の比重は未開示
- 有利子負債206,728百万円(当レポート試算)と前期末比+4.3%増、支払利息は+42.5%と金利上昇の影響が顕在化
- ホルムズ海峡封鎖の長期化に伴う原油・エネルギー価格の高止まりが継続し、原料・燃料コストへの波及リスクが残る
注目点/今後確認したいポイント
- 4Q計画が示す営業利益は7,493百万円(当レポート試算)で、3Q単独実績の6割程度。保守的な前提か、季節性やコスト増を織り込んだものかの見極めが焦点。
- ソリッドSiCフォーカスリングのメモリ向け需要拡大が、生産能力と価格面でどこまで持続するか。ファインカーボンの成長の持続性が中期の利益水準を左右する。
- 米国での黒鉛電極価格上昇の4Q以降への波及と、スメルティング&ライニングにおけるライセンス収入を除いた実力値の確認。
- 3Q単独の利益水準と4Q計画が示す水準の乖離の要因、および4Qのコスト・需要前提
- ソリッドSiCフォーカスリングの受注動向、生産能力増強の計画と時期
- RuC®ライセンス料収入の9M計上額と今後の継続性
- カーボンブラックの利益率低下要因と、タイ新工場への移転に伴う立ち上げコストの見通し
- 政策保有株式の縮減方針下での投資有価証券残高増加の内訳と、今後の売却計画
主要業績ハイライト
| 勘定科目 | 数値 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 273,674百万円 | +15.3% |
| 売上総利益 | 70,437百万円 | +18.2% |
| └ 売上総利益率 | 25.7% | +0.6pt |
| 販売費及び一般管理費 | 42,929百万円 | +10.7% |
| 営業利益 | 27,507百万円 | +32.0% |
| └ 営業利益率 | 10.1% | +1.3pt |
| 減価償却費 | 24,371百万円 | +23.7% |
| 支払利息 | 2,419百万円 | +42.5% |
| 経常利益 | 26,148百万円 | +27.0% |
| 特別利益 | 3,013百万円 | ▲42.5% |
| └ 投資有価証券売却益 | 3,001百万円 | ▲27.9% |
| 特別損失 | 837百万円 | +324.9% |
| 非支配株主に帰属する四半期純利益 | 3,390百万円 | +44.3% |
| 親会社株主に帰属する四半期純利益 | 16,259百万円 | +0.8% |
| EPS | 78.02円 | +3.3% |
| 3Q単独売上高 | 99,946百万円 | QoQ +8.6%(当レポート試算) |
| 3Q単独営業利益 | 12,405百万円 | QoQ +41.7%(当レポート試算) |
前年同期の数値は、2025年12月期4Qに確定した企業結合の暫定的な会計処理を反映した修正後の値。特別利益では前年計上の事業再編引当金戻入額1,078百万円が剥落し、特別損失には特別退職金611百万円と災害による損失160百万円を計上した。EPSは自己株式取得による期中平均株式数の減少(213.5百万株→208.4百万株)を受け、純利益の伸びを上回った。
事業セグメント別の業績
全5報告セグメントが増益を確保。半導体・AI関連(ファインカーボン、工業炉)と中東需要(スメルティング&ライニング)が利益成長をけん引し、主力カーボンブラックは増収寄与が中心となった。
セグメント別業績表
| セグメント名 | 売上高 | 前年同期比 | 営業利益 | 前年同期比 | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| カーボンブラック | 129,366百万円 | +16.6% | 12,430百万円 | +6.4% | 9.6% |
| ファインカーボン | 52,391百万円 | +24.5% | 8,020百万円 | +27.4% | 15.3% |
| スメルティング&ライニング | 50,588百万円 | +21.6% | 4,053百万円 | +448.9% | 8.0% |
| 黒鉛電極 | 26,610百万円 | ▲5.5% | 2,168百万円 | +31.9% | 8.1% |
| 工業炉及び関連製品 | 8,285百万円 | +16.0% | 2,153百万円 | +63.6% | 26.0% |
| その他 | 6,432百万円 | ▲13.6% | 24百万円 | ▲94.5% | 0.4% |
| 調整額 | - | - | ▲1,343百万円 | - | - |
| 連結 | 273,674百万円 | +15.3% | 27,507百万円 | +32.0% | 10.1% |
(売上高は外部顧客への売上高。利益率は外部顧客売上高ベースの当レポート試算)
- ファインカーボン:メモリ半導体向けソリッドSiCフォーカスリングの販売数量が大幅に増加。中国のSiCパワー半導体需要の回復も加わり、利益率は15.0%から15.3%へ上昇。
- スメルティング&ライニング:アルミ電解炉用カソードの需要が中東情勢を背景に拡大し、次世代カソードRuC®のライセンス料収入も計上。利益率は1.8%から8.0%へ上昇。
- 工業炉及び関連製品:AIデータセンター向けMLCC市場の拡大で、日本と中国向け発熱体がけん引。送配電網整備に伴う電力インフラ向け抵抗器も堅調。
- 黒鉛電極:主力市場である米国の電炉鋼生産は堅調、日本の粗鋼生産も微減にとどまった。TOKAI ERFTCARBONの連結除外で減収となったが、構造改革の効果と3Q以降の米国価格上昇で増益。
- カーボンブラック:タイヤメーカーの生産調整で販売数量が減少。2025年4Qに連結化したタイ拠点の寄与で増収増益を確保したものの、利益率は10.5%から9.6%へ低下。
- その他:負極材・不動産賃貸等の売上高は187百万円(▲87.4%)。摩擦材はインドネシアの石炭採掘量減少で鉱山向けが低調、二輪車・産業機械・建機・農機向けで補い6,244百万円(+4.8%)。
- 工業炉の一部用途:エネルギー関連業界でLiB関連設備投資に一巡感があり、MLCC向けの伸びで吸収する構図。
業績予想比の進捗率
営業利益の進捗率は78.6%で、前年同期の80.6%(修正後9M実績÷前期実績、当レポート試算)をやや下回る水準。通期計画が示す4Q営業利益は7,493百万円で、3Q単独実績を大きく下回るため、3Qの収益水準が続けば計画達成の確度は高い。一方、売上高は進捗率70.9%(前年同期73.5%)で、4Qに112,326百万円(当レポート試算)の計上が必要となり、売上面のハードルは相対的に高い。
| 勘定科目 | 数値 (第3四半期累積) | 通期計画 | 進捗率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 273,674百万円 | 386,000百万円 | 70.9% |
| 営業利益 | 27,507百万円 | 35,000百万円 | 78.6% |
| 経常利益 | 26,148百万円 | 34,300百万円 | 76.2% |
| 純利益 | 16,259百万円 | 22,000百万円 | 73.9% |
| EPS | 78.02円 | 108.73円 | 71.8% |
- 会社による季節性の説明はない。前期の4Q営業利益は5,018百万円(当レポート試算)で、1-3Qの四半期平均を下回った実績がある。
業績予想の変更有無
今回の業績予想の修正はない。通期計画は5月・8月の2度の上方修正後の水準で、売上高386,000百万円(+19.5%)、営業利益35,000百万円(+35.4%)を据え置いた。8月の上方修正はソリッドSiCフォーカスリングの需要急増と、米国を中心とする黒鉛電極需要の回復を反映したもので、3Q実績はこれらの前提に沿って推移した。
株主還元への言及
- 年間配当予想は40円(中間20円、期末20円)で、前期の30円から10円の増配。修正はなく、配当性向は36.8%(予想EPSベース、当レポート試算)。
- 5月に配当性向の引き上げとDOE指標の導入(累進配当)、政策保有株式の縮減方針を公表した。
- 5月13日の取締役会決議に基づき、FCSRで自己株式11,210,700株を15,001百万円で取得した。8月4日に事後調整として2,379,500株を処分し、8月31日に8,831,200株を消却。期末発行済株式数は216,111,904株となった。
財務状況
社債発行による調達の長期化を進める一方、有利子負債は前期末から増加し、自己資本比率は46.3%へ1.6pt低下。自己株式取得で株主資本が減少したが、その他有価証券評価差額金の増加で自己資本は前期末並みを維持した。
- 主要数値
- レバレッジ指標
| 勘定科目 | 数値 | 補足情報 |
|---|---|---|
| 現金及び預金 | 93,470百万円 | 前期末比+3.7% |
| 自己資本 | 316,571百万円 | 前期末比▲0.6% |
| 有利子負債 | 206,728百万円 | 借入金・CP・社債の合計、リース債務除く。前期末比+4.3%(当レポート試算) |
| └ 社債 | 90,000百万円 | 前期末65,000百万円、1年内償還予定社債10,000百万円は残高ゼロ |
| └ 長期借入金 | 65,846百万円 | 1年内返済予定分8,774百万円を含む |
| └ コマーシャル・ペーパー | 42,000百万円 | 前期末47,000百万円 |
| ネット有利子負債 | 113,258百万円 | 前期末107,955百万円(当レポート試算) |
| 投資有価証券 | 54,584百万円 | 前期末比+35.6%、評価差額金は+10,245百万円 |
| 棚卸資産 | 100,128百万円 | 前期末比+7.3%(当レポート試算) |
| EBITDA | 55,260百万円 | 営業利益+減価償却費+のれん償却額。前年同期比+26.0%(当レポート試算) |
| 指標 | 数値 | 補足 |
|---|---|---|
| Debt/Equity | 0.65倍 | 前期末0.62倍(当レポート試算) |
| インタレストカバレッジレシオ | 11.4倍 | 営業利益÷支払利息、前年同期12.3倍(当レポート試算) |
| 自己資本比率 | 46.3% | 前期末47.9%(会社開示) |
決算発表と同時に出た適時開示
該当なし
足許四半期中の主要発表
過去1年間の大量保有報告/重要提案
- 三井住友トラスト・アセットマネジメント: 6.4%→5.8%(2026/10/15) - 投資信託契約、投資一任契約に基づく運用
- 野村證券: 12.4%→10.1%(2026/10/08) - 証券業務に係る商品在庫、信託財産の運用
- 三井住友トラスト・アセットマネジメント: 6.0%→6.4%(2026/09/15) - 投資信託契約、投資一任契約に基づく運用
- 野村證券: 10.1%→12.4%(2026/09/14) - 証券業務に係る商品在庫、信託財産の運用
- 野村證券: 10.8%→10.1%(2026/08/25) - 証券業務に係る商品在庫、信託財産の運用
- 野村證券: 10.4%→10.8%(2026/08/10) - 証券業務に係る商品在庫、信託財産の運用
- 野村證券: 10.5%→10.4%(2026/08/04) - 証券業務に係る商品在庫、累積投資業務の運営、信託財産の運用
- 三井住友トラスト・アセットマネジメント: 6.0%→6.0%(2026/07/31) - 投資信託契約、投資一任契約に基づく運用
- 野村證券: 10.1%→10.5%(2026/07/30) - 証券業務に係る商品在庫、信託財産の運用、純投資
- 三井住友トラスト・アセットマネジメント: 6.3%→6.0%(2026/07/15) - 投資信託契約、投資一任契約に基づく運用
- 野村アセットマネジメント: 10.0%→10.1%(2026/07/03) - 証券業務に係る商品在庫、信託財産の運用、純投資
- 野村證券: 11.1%→10.0%(2026/06/16) - 証券業務に係る商品在庫、信託財産の運用、純投資
- 野村アセットマネジメント: 9.9%→11.1%(2026/06/12) - 証券業務に係る商品在庫、信託財産の運用、純投資
- 野村證券: 11.2%→9.9%(2026/06/09) - 証券業務に係る商品在庫、信託財産の運用、純投資
- 野村アセットマネジメント: 9.2%→11.2%(2026/05/29) - 証券業務に係る商品在庫、信託財産の運用、純投資
- 野村アセットマネジメント: 8.2%→9.2%(2026/05/15) - 証券業務に係る商品在庫、信託財産の運用
- 三井住友トラスト・アセットマネジメント: 6.4%→6.3%(2026/05/15) - 投資信託契約、投資一任契約に基づく運用
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ: 8.8%→8.1%(2026/04/27) - 政策投資、純投資、商品有価証券等
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ: 9.2%→8.8%(2026/03/30) - 政策投資、純投資、ディーリング目的、商品有価証券等
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ: 8.1%→9.2%(2026/01/12) - 政策投資、純投資、ディーリング目的、商品有価証券等
- 三井住友トラスト・アセットマネジメント: 6.6%→6.4%(2025/12/31) - 投資信託契約、投資一任契約に基づく運用
株式会社エンヴァリス(以下「エンヴァリス」といいます。)は、国内外の機関投資家、国内の個人投資家に対して、本邦の上場会社への投資を検討する際に必要な情報を提供することで、グローバルならびに本邦資本市場の発展に貢献することを目的として、専属リサーチ・カバレッジ業務を行っております。
- 目的と投資判断に関する免責
本レポートは、情報提供のみを目的として作成されたものであり、有価証券その他の金融商品の取得、売却、または保有を勧誘するものではありません。また、特定の投資、財務、または税務に関する助言を構成するものでもありません。本レポートに含まれるいかなる意見、判断、または推奨も、投資活動の誘導を意図するものではなく、投資決定は、投資家ご自身の責任と判断に基づき行われるべきものであり、エンヴァリスおよび対象企業は当該投資決定にいかなる関与もしない点、ご留意ください。
- 情報源、正確性、および保証の否認
本レポートは、対象企業からの正式な依頼に基づき、当該企業への取材や提供された情報を利用して作成されています。本レポートの利用にあたっては、以下の点をご承諾いただいたものとみなします。 1. 情報源 エンヴァリスは、公に入手可能な情報、対象企業より開示された情報および取材等で提供された情報が真実かつ信頼できるものである前提で本レポートを作成しています。エンヴァリスにおいて、これらの情報の真実性に関する独自の事実確認や検証は行っておりません。 2. 正確性 本レポートに記載されている提供情報の解釈、分析、およびそれに基づく仮説や結論は、前項の情報を基に、エンヴァリスが独自の視点と分析手法を用いて独立して導き出したものです。 3. 保証の否認 対象企業により開示された情報に誤りや遺漏があった場合、それに起因する本レポートの内容の誤謬について、エンヴァリスおよび対象企業は一切の責を負いかねます。本レポートの正確性、安全性、妥当性、完全性等ならびに対象企業の過去のパフォーマンスや将来のパフォーマンスについて、明示的にも黙示的にもエンヴァリスおよび対象企業はいかなる保証もいたしません。
- 責任の限定
本レポートまたは本レポートから得られた情報を利用したことにより発生したいかなる費用、損害、または損失(直接的、間接的、付随的、結果的、または懲罰的損害を含む)についても、エンヴァリスおよび対象企業は一切の責任を負いません。本レポートの利用者は、その利用が自己の責任において行われることを承諾するものとします。
- 利益相反の可能性
エンヴァリスは、対象企業と、現在または将来において、取引関係を有する可能性があります。したがって、本レポートの客観性に影響を及ぼす可能性のある利益相反が存在する可能性があることを、投資家の皆様はご認識ください。
- 報告内容の変更・更新義務の否認
本レポートの内容および意見ならびに本レポートの作成の前提とした情報は、作成日時点のものであり、今後、予告なく変更される場合があります。エンヴァリスは、本レポートの内容を最新のものに更新する義務を負わず、投資家の皆様は情報の最新性についてご自身でご確認いただく必要がある点、ご留意ください。
- 言語の優先順位
本レポートは、日本語、英語および中国語で作成されていますが、各言語版の内容に相違または解釈上の差異が生じた場合には、日本語版を正本として取り扱い、日本語版の内容が優先されるものとします。
- 著作権
本レポートに関する一切の権利(著作権を含む)はエンヴァリスに帰属します。エンヴァリスの事前の書面による許可なく、本レポートの全部または一部を複製、再配布、またはその他の方法で利用することを禁じます。
- 他の投資商品への利用
本レポートならびにエンヴァリスおよび対象企業の商標および商号は、エンヴァリスが書面により事前に承認した場合を除き、いかなる投資商品(価格、リターン、パフォーマンスが、本レポートに基づいている、または連動している投資商品、例えば金融派生商品、仕組商品、投資信託、投資資産等)の情報配信・取引・販売促進・広告宣伝に関連して使用することを禁じます。

