トリプルアイズ 通期 決算説明会速報

過去最高益で第二創業期へ、ゼロフィールド売却後はトヨタ商流の設計AIとAIラボで利益成長を加速

配信日2026年10月16日 00:45 JST

サマリー

2026年8月期はIFRS適用の初年度。売上収益と営業利益はともに通期で過去最高となり、前期の赤字からV字回復した。経営陣は、新卒採用費用、決算賞与、評価損、引当金をすべて計上した上での最高益であると強調し、利益体質が一過性ではないとの認識を示した。2027年8月期の連結業績予想は、ゼロフィールドの売却手続きが進行中のため非開示。代わりに継続事業ベースの参考値を示し、中期的には自動車設計AIプロダクトのサブスクリプション化により、人員数に縛られない成長モデルへの転換を目指す。

ポイント(決算の要点と成長アクション)

  • 経営戦略と市場認識
    • M&Aで売上規模を広げる段階から、利益を生み出す段階へ移ったことが通期実績で示されたとの認識。当期を第二創業期と位置付けた。
    • ゼロフィールドの全株式譲渡は、外部環境に左右されない経営基盤を築くための前向きな判断。本業への集中で、これまで以上の利益成長を実現できると経営陣は確信している。
    • 自動車の意匠デザインではAI導入が進む一方、設計業務は空白地帯であることを営業現場で実感。設計業務とAIの双方を理解する企業が少ない点に勝機を見る。
    • 生成AIによる攻撃の高度化やシャドーAIの広がりで、AI活用と情報保護の両立が企業の喫緊の課題に。クラウドを見直す動きから、エッジ・セキュリティ領域の需要が再び高まっていると認識。
  • 足元の事業進捗と要因
    • 9月期首のため3〜8月の下期に業績が落ち込む季節性が長年の課題だったが、当期の3Q・4Qは売上拡大と利益改善の両面で成果。
    • 春にグループ過去最多となる新卒39名を採用し、その人件費・研修費を下期に吸収。4Qには社員還元として決算賞与33百万円も計上した上で最高益を確保した。
    • エンジニアリングの売上水準は、1Qの前期比80%から90%付近まで回復。人員減は完全に収束した。
    • AIプロダクトでは、3Qに見込みとして案内した大型案件が4Qに結実。大手製薬会社やカーディーラーから正式に受注した。
  • 戦略的な重要施策や変化点
    • ゼロフィールドでは9月7日に佐藤仁氏が代表取締役に就任。売却の実効性を高める施策と位置付け、全株式譲渡の方針は変えない。
    • エンタープライズ営業出身の執行役員2名が就任し、大企業向けの開拓体制を強化。
    • 元トヨタ紡織副社⻑の⼭本氏が技術顧問に就任。トリプルアイズからBEXへの出向も開始。トヨタ商流で案件受注を実現。
    • 自動車領域では、Copilotエージェント、図面生成AI×CAD、外観検査用の画像認識AIの3製品をパイプラインとして推進。

今後の見通しと戦略

  • 2027年8月期の連結業績予想は、譲渡の完了時期と価額が確定していないため非開示。条件確定後、速やかに開示する方針。
  • 継続事業ベースの参考値は売上収益5,030百万円、営業利益190百万円(前期比+19.5%)。決算賞与、営業強化、自動車設計AIへの投資を織り込んだ数値であり、経営陣は十分に達成可能な水準と説明。
  • 増益の源泉は粗利を積み上げる3つの施策。AIインテグレーションの粗利は755百万円から909百万円へ、エンジニアリングは425百万円から521百万円へ拡大する計画。
  • 自動車設計AIプロダクトは、2028年8月期中に主要Tier1の現場でプロトタイプとPoCを完了させ、その後サブスクリプション型SaaSとして本格投入する計画。
  • AI駆動開発リーダーを2028年までに100名育成するKPIを設定。AT20を基盤に、エンジニアのFDE(顧客現場で課題解決まで担う人材)化を進める。

ポジティブ要因

  • AIラボ・コンサル売上は4四半期連続で増収。PoCから本開発、次フェーズへと続けて受注する再現性のあるモデルが定着した。
  • 商流改善によりAIインテグレーションの生産性とビジネスパートナー粗利率が上昇。経営陣は、単価アップやプライム案件化の余地がSI領域にまだ残っているとみる。
  • アルろく for LINE WORKSは、Web広告が奏功して利用IDが急増。マネーフォワード、勤次郎、クロスキャットとのAPI連携も受注チャネルとして機能している。
  • トヨタ本体と主要Tier1で取引口座を開設。BEXへの出向・常駐を通じ、東海地区でAI開発案件2件を受注済み。
  • BEXが40年超にわたり蓄積した図面データと特許の知見は、AIに与える学習データとなる。経営陣は、他社が獲得しにくい差別化要素と位置付ける。
  • GPUサーバー事業は、販管費を835百万円から590百万円に削減。3Q・4Qの営業利益は棚卸資産評価損計上後で63百万円となり、売却前に事業価値を高めた。

懸念事項・リスク

  • 連結業績予想が非開示のため、通期見通しの可視性は限られる。当期利益は譲渡価額次第で未定。
  • ゼロフィールド売却は相手先、時期、価額がいずれも未確定。複数の候補先との交渉の進み具合を確認する必要がある。
  • AIソリューション事業は4Q単独で営業損失△12百万円。下期の新卒費用や賞与による季節的な負担が引き続き論点となる。
  • AIプロダクト以外は労働集約型の事業で、人員数が成長の上限となる。生成AIによる開発工数の減少で人月・SES型モデルの前提が揺らいでおり、採用とエンジニアのシフトの成否が鍵。
  • 台湾企業から購入した在庫の不備に関わる未回収債権について、貸倒引当金38百万円を金融費用に計上。期中には暗号資産の減損や棚卸資産評価損も発生した。
  • 現金及び預金は期末1,474百万円で、前期末の1,914百万円から減少。経営陣は十分な安全性を確保していると説明するが、BEXに関わるのれんの減損リスクも残る。

業績ハイライト

売上収益と営業利益はともに通期で過去最高を更新し、営業損益は前期の△522百万円から黒字に転換した。当期純利益は100百万円(前期△467百万円)。4Qには、繰延税金資産の回収可能性を検討した結果として法人税等調整額(益)21百万円を計上している。なお、前期のGPUサーバー事業の営業損失には、IFRS組替により日本基準で特別損失だった在庫評価損319百万円が含まれる。

セグメント別業績

セグメント名売上高前年同期比営業利益前年同期比
連結5,722百万円+1.0%170百万円黒字転換
AIソリューション4,822百万円+4.2%159百万円+190.0%
うちAIインテグレーション+AIプロダクト3,262百万円+12.8%――
うちエンジニアリング1,581百万円▲10.0%――
GPUサーバー912百万円▲13.3%10百万円黒字転換
  • AIインテグレーション社員1人当たり月平均売上高(4Q): 1,641千円(前年同期比+11.0%、当レポート試算)
  • ビジネスパートナー粗利率(4Q): 18.5%(前年同期比+3.2pt)
  • AIラボ・コンサル売上(4Q): 86百万円(前年同期比+120.5%、当レポート試算)
  • AIプロダクトARR: 142百万円(2027年8月期は161百万円、+13%の見込み)
  • アルろく for LINE WORKS利用ID数: 直近1年間で501%増
  • GPUサーバー事業売上総利益率: 62.7%(前年同期比+12.5pt)
  • 連結1人当たり粗利: 4,347千円(前年同期比+12.7%、当レポート試算)
  • 連結従業員数: 437名(前年同期比▲2.7%、当レポート試算)

Q&A 一覧

  • Q

    ゼロフィールド社の株式譲渡の進捗状況と完了時期の見通しは。

    A

    現時点でも、複数の相手先候補との間で、条件交渉等を含めた売却プロセスを着実に進めている。NDAの関係上、具体的な相手先や譲渡価格の詳細な公表は差し控えるが、交渉は前向きに進んでいる。先ほど説明した通り、条件合意に至った時点で速やかに適時開示する。

  • Q

    新体制への移行が売却に与える影響は。

    A

    9月7日の佐藤氏の代表取締役就任は、売却活動の実効性をより高める施策である。大手商社や上場企業での経験を持つプロ経営者をトップに据えたことで事業構造の転換をやり切り、足元で営業利益6,300万円を稼ぎ出すまで収益体質を変えた。下半期で価値を最大化した状態で最善のパートナーへバトンを渡すための前向きな体制強化であり、全株式譲渡の方針に変更はない。

  • Q

    2027年8月期の連結業績予想を非開示とした理由と、正式な開示時期は。

    A

    説明した通り、現状ではゼロフィールド社の譲渡完了時期が不明瞭である。このタイミングで正式な予想を開示すると、投資家の判断を誤らせるリスクがあると判断した。譲渡条件が確定し、合理的な算出が可能になった時点で、速やかに正式な業績予想を開示する。

  • Q

    参考値の達成確度は。

    A

    今回の参考値は、本業であるAIソリューション事業の成長イメージを持ってもらうために示したもの。単なるコスト削減による利益創出ではなく、決算賞与、営業への投資、自動車設計AIプロダクトの開発投資といった未来への成長投資をすべて盛り込んだ数字である。足元の生成AIやAIの引き合い、商流改善を勘案すれば、十分に達成可能な水準と認識している。

  • Q

    AIソリューション事業において、売上収益の伸びに対し営業利益が+19.5%と大きく伸長する計画の背景・メカニズムは。

    A

    売上の伸び率以上に利益が拡大する最大の要因は、スライドで示した粗利を積み上げる短期の3つの打ち手である。まずAIインテグレーションでは、SIでやりきれていない領域がまだあるため、下請け案件からプライム案件への移行や単価アップ交渉をひたむきに進め、AIの開発案件も獲得していく。これが非常に大きな要因となる。加えてプラットフォーム事業として、従来のシステム開発から、生成AI、セキュリティ要件、エッジの顔認証といった世の中の開発需要に合わせた高付加価値の先端開発案件へシフトし、利益改善につなげたい。

  • Q

    自動車領域におけるAI開発案件2件受注済みの具体的内容は。

    A

    今回の受注案件は、当社メンバーがBEXに出向・常駐し、東海地区の自動車メーカーやサプライヤーの現場業務に入り込んだからこそ獲得できたものである。NDAの観点から企業名や仕様の詳細は開示できない。内容は、自動車業界の現場特有の業務フローを効率化するエージェント、ローカル生成AI、フィジカルAIの実装案件であり、すでに実利ベースで業績に貢献し始めている。

  • Q

    中期的な新規AIプロダクトの事業化スケジュールは。

    A

    中期の柱となる図面生成とCADの新規プロダクトでは、BEXが40年間蓄積してきた図面データや設計特許の知見が大いに生きる。AIにどのようなデータを与えるかが今のAIの賢さに直結するため、ここが他社には獲得できないノウハウだと考えており、スピード感を持って共同研究開発を進めていく。スケジュールとしては、2028年8月期中に主要Tier1の現場でプロトタイプとPoCを完了させ、2028年8月期以降にサブスクリプション型のSaaSとして市場へ本格投入する計画である。

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