イビデン インタビューレポート

河間Cell6への1,510億円投資で30年度計画に上積み余地、AI向け高機能基板の供給力拡大で次の成長局面へ

配信日2026年11月4日 18:27 JST

エグゼクティブ・サマリー

今回の中間決算における同社の転換点は、Cell6・Cell7の意思決定に先立って、河間Cell6の残り半分弱をCPU向けEMIBで埋める追加投資(約1,510億円)を決めた点である。新棟建設には最低4年を要し、顧客の要求する時期に間に合わないため、まず既存建屋の残り空間を使ってSAP能力を早期に確保する判断を下した。30年度計画(売上高1兆円、営業利益3,000億円)を据え置いたのは、今回の投資に後続の大型投資を加えて一括で更新するためであり、見通しへの不安を理由とするものではない。生産能力の制約を逆手に取り、CPU向けEMIBも強い需要がある中、顧客需要と収益性の両方を見ながら配分する方針が鮮明である。

企業からのメッセージ

投資をするかしないかを迷っているのではない。投資は大前提であり、残るのはどの設備をどのタイムラインで実行するかの詰めだけ。30年度の数字を据え置いたのは、大きなリスクがあるからではない。続く投資を含めて、Cell7・Cell9の扱いは、きちんと26年度中に開示する方針。これをポジティブに評価する投資家も多くいる。

インタビューで示された主な論点

  • 先行投資で供給の空白を埋める河間Cell6投資

    新棟を建てる投資は、今年度に決めても量産ライン稼働は30年度頃、業績貢献は31〜32年度にずれ込む。顧客から遅すぎると指摘されたため、河間工場の残り約40%の空間に約1,510億円を投じ、SAP能力を先に確保する判断に至った。29年度から順次稼働し、30年度の売上に寄与する計画である。

  • 30年度計画は投資を含めた一括更新を前提に据え置き

    現行の30年度計画には、今回の1,510億円投資も、大野工場の建屋容積を最大限に使う検討中の投資も入っていない。同社は投資額と同額程度の売上増を投資効率の目安としている。部分的な修正は避け、後続投資の意思決定と合わせて全体を更新する考えである。

  • 能力の制約下で高付加価値品を優先する製品戦略

    SAP工程はどの顧客・製品にも使えるため、ライン認定さえ取れば顧客の需要に合わせて柔軟に振り向けられる。難しい基板ほど同社に任せたいという顧客の評価を背景に、収益性の高い製品をできるだけ多く取り込む方針。具体的にはAIサーバー向けGPU用基板、ASIC向けEMIB-T、汎用サーバーCPU向けの最先端世代EMIBを流す。

エンヴァリスの着眼点

インタビュー Q&A ハイライト

  • Q

    今回の決算発表で投資家に最も伝えたいことは何か

    A

    30年度計画の据え置きは、後ろ向きな判断ではない点である。Cell7・Cell9への投資は実施が前提で、設備構成とタイムラインの詰めが残っているだけ。今年度中に意思決定する方針に変わりはない。顧客の要請に応えるため、まず河間工場で約1,510億円の投資を先行させた。後続の投資と合わせて30年度以降の計画を一括で更新する予定で、市場環境は決してネガティブではない。

  • Q

    Cell7・Cell9の最終判断で最も重い条件は何か

    A

    顧客のタイムラインに合わせられるかどうかに尽きる。最大のネックはエンジニアリングリソースで、顧客からはさらなる前倒しを求められており、最終調整を経て契約・発表へ進む流れになる。次の課題は一部の製造装置のリードタイムが長くなっている点である。ガラスクロスなどの資材は確保が進み、リスクはかなり下がった。

  • Q

    27〜30年度の販売価格の前提をどう見ているか

    A

    30年度計画には価格下落や適正化前の価格が残っており、アップサイドは十分ありうる。一方、需要に供給が追いつかず第三のプレイヤーが参入する見通しで、新規参入者が市場を乱すリスクも織り込んでいる。27年度は一定規模のバッファーを持たせた保守的な計画と理解してよい。

  • Q

    能力に制約がある中で、どの製品・用途を優先するのか

    A

    生産は顧客の需要に基づくのが大前提で、儲かる製品だけを選ぶことはできない。ただ、難しい基板ほど同社に任せたいという顧客の評価があり、収益性の高い製品をできるだけ多く取り込むよう顧客と議論している。新しい能力は、AIサーバー向けGPU用基板、ASIC向けEMIB-T、汎用サーバーCPU向け最先端世代EMIBに充てる方針である。

  • Q

    大型設備投資が続く中でのキャッシュ創出とセラミック事業の見通しは

    A

    今期のフリーキャッシュフローは大幅なプラスを見込む。来年度以降は設備支払いが膨らむが、マイナスにはならない想定である。手元資金は月商3カ月分を最低限の目安としており、その水準は十分に上回って維持できる見通しである。セラミック事業は今期が最も厳しい局面で、今期を底に来期以降は回復に向かうとみている。

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