アクセルスペースホールディングス 1Q 決算説明会速報

GRUS-3健全3機の2027年2月商用化目標と不具合4機の低速通信活用検討、CEO直轄の品質改革で防衛PFI基盤の再構築へ

配信日2026年10月16日 21:25 JST

サマリー

防衛省PFI(衛星コンステレーションの整備‧ 運営等事業)の売上計上が始まり、1Qは増収で営業損失が縮⼩した。⼀⽅、GRUS-3の4機で⾼速通信系統のアンプが恒久故障し、減損による特別損失の計上と通期予想の下⽅修正に⾄った。経営陣は、健全3機の商⽤化、不具合4機の低速通信系統による商⽤活⽤、他の衛星データの調達を短期の打ち⼿に挙げた。中期的には衛星機数の回復を最優先とし、CEOが技術部⾨を直接所管する品質改⾰と新株予約権による資⾦確保で成⻑路線を維持する姿勢を⽰した。

ポイント(決算の要点と成長アクション)

  • 経営戦略と市場認識
    • 最優先は衛星機数の回復。実質3機となったGRUS-3体制を中長期でできるだけ早く元の水準に戻す方針。
    • 中分解能光学はグローバルでもプレイヤーが限られる。顧客ニーズに基づくタスキング撮影を差別化の軸として事業を進める考え。
    • 原因究明、再発防止、量産を見据えた品質・信頼性向上を経営上の重要課題に位置づけ。
    • 中村代表が衛星開発部門と調達・生産部門を自ら所管し、技術強化に割く時間を増やす意思決定。
  • 足元の事業進捗と要因
    • • AxelGlobeは2026年4⽉開始の防衛省PFIが計画どおり進み、セグメント黒字に転換。
    • AxelLinerはPale Blue社との契約に係る前期売上を取り消したため、売上高がマイナス計上。
    • Pale Blue社の解除申入れは同案件向け衛星固有の技術課題によるもので、GRUS-3不具合とは無関係との説明。
    • 健全3機はXバンド通信を実施済みで、同様の不具合は出ていない。GRUS-3Cで通信テストを進行中。
    • GRUS-3不具合によるAxelGlobeのLOIや提携関係への影響はないと言及。
  • 戦略的な重要施策や変化点
    • 他の衛星データの調達を検討。AxelGlobeのグローバル全顧客への供給体制づく りが⽬的。
    • 不具合4機は撮像機能が正常なため、低速通信系統で送れる画像やテレメトリデータの商用活用を検討。
    • 高分解能2機の後ろ倒しと中分解能3〜4機の前倒しを検討。防衛省の要請ではなく自社の事業判断と明言。
    • 第12回新株予約権で4,303百万円を調達予定。GRUS-3以前から検討していた計画との説明。

今後の見通しと戦略

  • 通期予想は売上高6,700百万円、経常損失▲1,700百万円へ下方修正。1Q売上高の進捗率は14.2%(当レポート試算)で、例年4Q偏重の構造。
  • 2Qには2025年度の検査完了に伴い、NEDO補助金1,209百万円を営業外収益に計上予定。
  • 健全3機は1機ずつアンプの消費電力を抑えて運用し、商用運用開始は2か月遅れの2027年2月を目標とする。アドバイザリーボードの最終報告は11月末に公表予定。
  • 5年後に目指す姿として、2031年5月期末に30機体制、2030年5月期までにAL Labの年4回定期便化を掲げる。
  • AL Labは搭載率が約6割に達すれば利益化できる想定。宇宙戦略基金の採択企業が増えていることを商機と捉える。
  • 調達資金は機数拡大に2,303百万円、海外事業とAL Labの運転資金に2,000百万円を充当する計画。経営陣は希薄化の影響を上回る企業価値向上を経営責任と明言。

ポジティブ要因

  • AxelGlobe受注残高は43,396百万円。防衛省PFIには唯一の光学画像提供者として参画し、契約総額は436億円(税抜)。
  • AxelGlobeは限界利益率90〜95%を目指す低変動費モデル。1Qは売上増で研究開発費や保険料の増加を吸収。
  • Airbus Defence and Space社、NSG UP42と販売パートナーシップを締結し、海外販路を拡充。
  • 健全3機が加わればGRUS-1単独体制より機数が増え、再訪頻度の不足で取りこぼしていた需要を取り込める見込み。
  • アドバイザリーボードに中須賀教授やJAXAの電源・通信・熱分野の専門家が参画。開発プロセスや組織体制も評価対象とする。
  • 光学の中・高分解能画像データサービス市場(SAM)は2030年に6,507億円規模となる見通し。

懸念事項・リスク

  • 防衛省PFIの年度別売上への影響やペナルティ(返納等措置)の有無は、契約の詳細に関わるとして開示されず。
  • 撮像キャパシティは稼働機数に応じて減る。2028年5月期にコンステレーション14機とするKPIの達成時期は進捗確認が必要。
  • 新株予約権の最大希薄化率は24.78%で、下限行使価額は156円。純資産は前期末6,993百万円から4,244百万円に減少。
  • 健全3機もアンプは同じ設計のため、電力を抑えた運用がデータ取得量や商用化時期に影響する可能性。
  • Pale Blue社との協議は継続中。AxelLinerの通期セグメント損失見通しは▲1,240百万円に拡大し、新規契約の獲得が課題。
  • AxelGlobeの顧客構成は政府系機関が99%。民間・海外需要をどこまで掘り起こせるかが試される。

業績ハイライト

防衛省PFIの寄与で売上総利益は374百万円の黒字に転換し、営業損失、経常損失ともに縮小した。一方、GRUS-3不具合に伴う減損損失1,879百万円を特別損失に計上し、四半期純損失は▲2,784百万円と前年同期の▲1,422百万円から拡大した。

セグメント別業績

セグメント名売上高前年同期比セグメント利益(経常ベース)前年同期比
AxelLiner事業▲63百万円―▲615百万円―
AxelGlobe事業1,014百万円+3,302.2%234百万円―
連結(調整額含む)950百万円+208.3%▲902百万円―
  • 受注残高: 51,759百万円(前年同期比 +363.4%)
  • 調整後EBITDA: ▲793百万円(前年同期比 ―)
  • 現預金: 3,402百万円(前期末は5,815百万円)
  • コンステレーション運用機数: 4機(2028年5月期に14機が目標)
  • AxelLiner実証衛星打上げ: 累積2機(2028年5月期までに累積6機が目標)

Q&A 一覧

  • Q

    GRUS-3の不具合を受け、PFI案件で予定していた5年間の年度ごとの売上減少の詳細はどうなるのか。

    A

    PFI案件を含め、AxelGlobe全体で60億円と見込んでいた売上は42億円に減る見込み。防衛省案件を含む個別案件への影響の程度は答えるのが難しく、ご容赦いただきたい。

  • Q

    受注残高がすべては消化されない状態という認識でよいのか。

    A

    個別案件への影響の程度は答えるのが難しい。AxelGlobe事業として短期的には、不具合のない3機の商用運用をしっかり始めること、不具合の生じている4機も商用活用を実現すること、他の衛星の調達も含めて事業への影響を減らすあらゆる施策を検討することに取り組む。

  • Q

    GRUS-3について、残り3機の運用状況を教えてほしい。

    A

    高速通信系統に不具合が出ていない3機は初期運用を続けている。Xバンド通信はできており、不具合が確認された4機と同様の不具合は起きていない。現時点では7機のうちGRUS-3Cで通信テストに取り組んでいる。

  • Q

    AxelGlobe事業の今期売上高計画は42億円で、会計期間のずれを考慮しても防衛省事業の2026年度契約金額60億円とは距離がある。天候等を考慮せず、GRUS-1の4機とGRUS-3の3機が最高の条件でフル稼働すると仮定した場合、2027年度は売上高60億円規模に届く可能性はあるか。

    A

    現時点は3機の初期運用を進めている段階のため、撮影キャパシティについて具体的に答えるのは難しい。撮影キャパシティには機数に応じた影響が出ると考えている。

  • Q

    2028年度の90億円についても、最高の条件で衛星が稼働する前提で、充足できる撮像キャパシティがあるのか。

    A

    撮影キャパシティには機数に応じた影響が出ると考えている。AxelGlobe事業全体として、他の衛星の調達なども含め、撮像キャパシティを確保する施策を検討しているところ。

  • Q

    AxelLiner事業は今期見込みが4.6億円減っているが、すべてPale Blue社の影響か。それ以外に業績予想修正の要因はあるか。

    A

    AxelLiner事業の数値はKプログラムとAxelLiner Laboratoryの売上を合算したもの。NEDOのKプログラムの売上と、AxelLiner LaboratoryにおけるJAXA案件の売上を織り込んでいる。

  • Q

    AxelLiner事業はPale Blue社との大型契約が解除見込みとなる一方、新たな契約は獲得できていない。2029年頃からAxelLiner Laboratoryの定期便化を予定しているが、定期便化を実現できる数の契約はいつ頃から顕在化する見込みか。

    A

    個別顧客の具体的な商談内容や状況の開示は難しいが、AxelLiner Laboratoryの引き合いは国内外から数多くいただいている認識。特に国内では宇宙戦略基金を獲得した会社が増えており、当社にとって大きな商機と考えている。

  • Q

    AxelLiner事業の黒字化は中期的に難しくなっているように感じるが、その理解でよいか。

    A

    中長期的に見て、AxelLiner Laboratoryは約6割程度搭載できればしっかり利益化できる想定を置いている。中長期的には利益化できる事業と理解している。

  • Q

    防衛省PFI事業で他の衛星の調達を検討するとはどういう意味か。基本的に国産衛星が求められていると思うが、他の衛星を調達できるのか。

    A

    防衛省PFI事業のために調達するということではない。AxelGlobe事業はデータをグローバルの顧客に広く提供しており、AxelGlobe事業として顧客にデータを提供できる体制を用意する必要があるとの考えで検討を進めている。

  • Q

    事業基盤となる衛星の打上げ数が実質的に減った状況で、競合他社との競争にどう勝ち抜くのか、経営としての考えと方針を教えてほしい。

    A

    衛星の機数が実質的に7機から3機になったため、中長期的にはなるが、機数を改善し、拡大し、元に戻すことが戦略的に大事と考えており、できるだけ早く機数を戻したい。光学衛星の市場は中分解能と高分解能の大きく2つに分かれ、顧客の属性や求めるものが違う。中分解能のセグメントでは競合他社は実はそれほど多くない。その中で、顧客ニーズに基づいて撮影するタスキングという当社の強みを生かして事業を進めていく。

  • Q

    他社とのアライアンスなど、現状を打ち破る大胆な経営方針の打ち出しが必要ではないか。

    A

    説明したとおり、AirbusやUP42など、当社だけでなく幅広い事業者と協業して事業を広げてきている。この路線は今後も幅広く検討していく。

  • Q

    防衛省PFI事業には、顧客の要求水準を達成できない場合にペナルティの支払い等が発生し得るとある。今回の不具合でペナルティの発生予定はあるか。ある場合、どの程度の金額になるのか。

    A

    契約内容の詳細に関わるため、回答を差し控えたい。

  • Q

    防衛コンステに関して、高分解能衛星2機と中分解能衛星の入れ替えは防衛省からの要請なのか。

    A

    AxelGlobe事業は、官民を問わず、国内外を問わず、広く顧客に光学画像を提供するサービス。このサービスを成長させるうえで、できるだけ早くキャパシティを増やすことが非常に重要な検討論点と考えている。したがって防衛省からの要請ではなく、当社事業を進め拡大するために検討が必要と考えているもの。現段階では検討中で確定した事実ではなく、確定した時点で速やかに開示する。

  • Q

    GRUS-3で4機も不具合が出ているのは、設計か部品のどちらかに構造的な欠陥があるのではないか。

    A

    前半で説明したとおり、4機の不具合は設計に課題があったと考えている。具体的には、高速通信系統の送信機内のアンプモジュールの放熱設計に問題があった可能性が高い。今後打ち上げる衛星は、対策を講じたうえで試験も行ってから打ち上げる計画としている。

  • Q

    CEO自身が衛星開発と調達を所管するとのことだが、何が問題だったと考えているのか。

    A

    開発の過程でなぜこうした設計となっったのか、詳細を調査している段階。課題が確認された場合には、しかるべき改善を⾏っていく。

  • Q

    これからどのように変えていく予定か。

    A

    今回の所管変更は、私自身が技術力の強化により多くの時間を使うための意思決定と考えていただきたい。足元の技術の信頼性を高め、次世代に向けて衛星の量産を主導していくところで、私自身がリーダーシップを発揮して全力を尽くしたい。

  • Q

    中分解能衛星のニーズは高いとの話だが、GRUS-1の5機を運用していたときは大きな売上を得られていなかった。GRUS-3の3機の追加でニーズを顕在化させられるのか。

    A

    GRUS-1だけでは、再訪頻度の面で、顧客が一定期間内に撮影したいデータ量に対応しきれなかった。今回は7機が3機になったが、それでもこれまでの体制より機数は増えるため、満たせなかった顧客ニーズに応えられる部分もあると考えている。そのため顕在化は十分可能と考えている。

  • Q

    他の衛星調達も実現して初めて民間ニーズを顕在化させられるというイメージか。

    A

    中分解能のプレイヤーはグローバルで見ても非常に限られている。この限られたプレイヤーの市場で当社がデータを提供し続けることで、民間ニーズを顕在化させて取り込み、今後も拡大できると考えている。

  • Q

    Pale Blue社との契約解除は、GRUS-3の不具合が原因なのか。

    A

    Pale Blue社との契約解除に関する協議と、GRUS-3の通信系の不具合はまったく別の事象であり、別の話と理解いただきたい。

  • Q

    GRUS-3不具合によるAxelGlobe事業とAxelLiner事業の売上・パイプラインへの影響を改めて説明してほしい。

    A

    AxelGlobe事業には、説明したとおり機数に応じた影響が出る。AxelLiner事業は別の事業であり、影響は生じていない。

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