アクセルスペースホールディングス 通期 決算説明会速報

GRUS-3 7機打上げ成功と防衛省436億円案件の通年寄与で来期売上90億円へ、 30機体制構想と定期便化が次の焦点

配信日2026年7月29日 18:46 JST

サマリー

2026年5⽉期通期は防衛省向け衛星コンステレーション整備‧ 運営等事業の開始によりAxelGlobe事業が急伸し、 売上⾼は前期⽐+58.1%の2,508百万円。 ⼀⽅、 GRUS-3αや⾼分解能衛星の研究開発費増加により経常損失は▲3,712百万円に拡⼤した。 決算発表直前の7⽉7⽇にGRUS-3 7機の同時打上げ‧ クリティカル運⽤に成功し、 2026年中の商⽤運⽤開始を⽬指す。 経営陣は2027年5⽉期に売上⾼90億円‧ 経常損失▲150百万円と収益の急回復を計画するとともに、 2031年5⽉期末までに衛星30機体制への拡⼤という中⻑期ビジョンを提⽰した。

ポイント(決算の要点と成長アクション)

  • 経営戦略と市場認識
    • 中分解能市場で⼤⼿プロバイダーの新規打上げ撤退が進み、 寡占を狙える環境と認識
    • ⽇本成⻑戦略会議が衛星製造‧ 運⽤‧ データ利活⽤で2040年約12兆円の需要獲得⽬標を提⽰、 当社2事業がいずれも該当領域
    • 軌道上実証機会の圧倒的不⾜が⽇本成⻑戦略会議で主要課題に挙げられ、 AL Lab事業の追い⾵
    • ⾼分解能市場は地政学リスクの⾼まりで安全保障需要が拡⼤、 中‧ ⾼分解能双⽅を運⽤する企業は世界的に限定的
  • ⾜元の事業進捗と要因
    • AxelGlobe事業売上は前期⽐+278.6%の986百万円、 防衛省案件の4⽉サービス開始が寄与
    • 研究開発費+1,335百万円(GRUS-3α打上げ費‧ ⾼分解能衛星開発費) が損失拡⼤の主因
    • セグメント損益計上⽅法を変更し、 ⾃社商⽤衛星バス部の研究開発費をAxelGlobe事業に移管。 事業実態の透明性が向上
    • 受注残⾼53,375百万円(前期⽐+366.3%) は防衛省契約436億円の計上が主因
  • 戦略的な重要施策や変化点
    • 2031年5⽉期末までに衛星コンステレーション30機体制(中‧ ⾼分解能おおよそ半々) への拡⼤を表明
    • AL Labの定期便化(2030年5⽉期までに年4回) を⽬標設定、 受注前に打上げスロットを先⾏確保する⽅式に転換
    • 2026年3⽉に事業部制から機能別組織へ再編、 営業‧ 事業開発の戦略性と衛星開発効率の向上を企図
    • JAXAとAL Lab提供に関する請負契約を締結(単年度契約⾦額319百万円、 総額638百万円予定)

今後の見通しと戦略

  • 2027年5⽉期は売上⾼9,000百万円(+258.8%) 、 経常損失▲150百万円を計画。 防衛省案件の通年寄与とGRUS-3商⽤運⽤開始が柱
  • AxelGlobe事業セグメント利益は3,400百万円への黒字転換を⾒込む。 限界利益率の高いビジネスモデルが売上拡⼤とともに効⼒を発揮する構造
  • 2028年5⽉期に⾼分解能衛星3機、 2029年5⽉期に同2機の打上げを予定。 打上げスロット8機分を確保済み
  • 5年間で40機以上の製造体制を整備する⽅針。 開発拠点の移転‧ 環境試験機能の集約。宇宙機製造アライアンスとの協業を推進
  • 宇宙戦略基⾦第2期の観測機能⾼度化技術に採択、 CO2排出源別観測による新ソリューション市場の開拓を⽬指す
  • みずほ銀⾏との財務制限条項の黒字維持条項適⽤開始を2027年5⽉期から2029年5⽉期へ変更、 先⾏投資期間の資⾦⾯での柔軟性を確保

ポジティブ要因

  • 防衛省案件436億円(税抜) は5年間にわたり安定収益を提供。 唯⼀の光学画像提供者としてのポジションを確⽴
  • GRUS-3 7機の打上げ‧ クリティカル運⽤が順調に完了。 2026年中の商⽤運⽤開始により10機以上の体制へ移⾏予定
  • LOI締結企業は国内外30社超、 アジア太平洋‧ 欧州‧ 南⽶と地理的に分散。 インフラ。農業‧ 環境関連と⽤途も多様
  • NASAレポートにホステッドペイロードサービスの提供事業者として3回連続掲載
  • サウジアラビア国家地球観測プラットフォーム「NSG UP42」 や韓国 Nara Space Technology Inc.などとのパートナーシップ締結、海外チャネル拡⼤が具体化
  • AxelGlobe事業は変動費が少なく 限界利益率90-95%を⽬指す構造であり、 売上増加が直接的に利益拡⼤に直結

懸念事項・リスク

  • SpaceXのライドシェア⽅針変更報道があり、 打上げスロット確保の難易度上昇。 経営陣は新興ロケット企業との代替確保を進めるとコメント
  • 2026年5⽉期の当期純損失は▲4,057百万円。 現預⾦5,815百万円に対し有利⼦負債5,269百万円(流動2,007+固定3,262)
  • 30機体制構築に伴う追加資⾦調達の時期‧ ⼿段は未定。 デット‧ エクイティの選択により既存株主の希薄化リスクが存在
  • 防衛省案件は要求⽔準未達時のペナルティ条項が存在。 契約詳細は⾮開⽰であり、 リスクの定量評価が困難
  • GRUS-1の設計耐⽤年数5年を踏まえ、 2028年5⽉期以降は⼀部機体の運⽤終了が⾒込まれ、 コンステレーション機数が⼀時的に減少する可能性

業績ハイライト

2026年5⽉期通期の売上⾼は2,508百万円(前期⽐+58.1%) 。 AxelGlobe事業の防衛省案件開始が増収を牽引した⼀⽅、 研究開発投資の積極推進により営業損失は▲3,822百万円、 当期純損失は▲4,057百万円に拡⼤。 受注残⾼は53,375百万円と前期⽐4.7倍に急増し、 将来の売上基盤が強化された。

セグメント別業績

セグメント名売上高前年同期比セグメント利益(経常ベース)前年同期比
AxelLiner事業1,522百万円+14.8%▲277百万円
AxelGlobe事業986百万円+278.6%▲1,595百万円
  • 受注残⾼: 53,375百万円(前期⽐ +366.3%)
  • 総収⼊(Non-GAAP): 2,995百万円(前期⽐ +29.0%)
  • 調整後EBITDA: ▲3,340百万円
  • 現預⾦残⾼: 5,815百万円
  • コンステレーション運⽤機数: 5機(2026年5⽉期末時点、 GRUS-3 7機は初期運⽤中)
  • 実証衛星打上げ機数(累積): 1機(KPI⽬標: 2028年5⽉期までに累積6機)
  • グループ従業員数: 218名(前期末⽐36名増加)

Q&A 一覧

  • Q: 合計30機を製造するとのことだが、 なぜ30機なのか。 ⾼分解能と中分解能の内訳はどのようになっているのか。
    A: 中分解能衛星は、再訪頻度1⽇1回を保ちつつ運⽤に余裕を持って画像提供できる体制を検討している。⾼分解能衛星は再訪頻度と撮像ニーズを鑑みた適切な体制を検討中である。内訳はおおよそ半々の想定だが今後調整の可能性があるため具体的な数字は控える。
  • Q: グローバル市場での成⻑を⽬指すには30機ではPlanet社に対して⾒劣りするように⾒えるが、どのような違いを打ち出せるのか。勝ち筋を考えているのか。
    A: ⼀般に機数が多い⽅が優位に⾒えるが、必要な撮影ニーズを満たせる範囲であれば機数が少ない⽅が利益は⼤きい。 Planet社は撮り溜めた画像から販売するアーカイブビジネスだが、当社は顧客ニーズに基づき撮影して提供するモデルであり、そのニーズを満たす機数を目標として設定している。ソリューションは今後注⼒する分野だが、 特定のニーズに基づくため、当社が得意とするタスキング⽅式の⽅が有利と考えている。
  • Q: AL Labで定期便化するほどの需要はあるのか。現在のリード案件数や協議段階の状況を教えてほしい。 いつ頃それが感じられるのか。
    A: 宇宙戦略基金を獲得したコンポーネントメーカーから「宇宙戦略基金に基づくコンポーネントを製造したい」という複数のコンタクトをいただいており、我々もそのような企業に対してコンタクトを開始している。また、国内需要だけでなく、海外の展示会などでも引き合いがある。
  • Q: SpaceXのライドシェア抑制の⽅向性が出てきているが、定期便化のボトルネックになるのではないか。 リスクとしてどのように考えているか。SpaceXが確保できない場合は撤退もあり得るのか。
    A: SpaceXに関する報道は認識しており、打上げスロット確保の難易度が近年上がっているのは事実である。価格等の⾯からSpaceXが第⼀候補であることは間違いないが、 最近は新興ロケットが世界中で⽣まれており、こうした企業とも積極的にコミュニケーションを⾏っている。SpaceXのみに依存せず、その時のニーズに基づいて最適な打上げ⼿段を選択できるようにしていく ⽅針である。
  • Q: 2027年5⽉期の営業利益予想は保守的に⾒ているのか。保守的に⾒込んでいる点があれば教えてほしい。
    A: 発表している数値が現時点での当社の⾒⽴てである。
  • Q: 18機の増強は防衛省の次期コンステレーションに向けた準備なのか。投資回収の目算を教えてほしい。
    A: 次期の防衛コンステレーションについては回答を差し控える。投資回収については、18機の増強によりデュアルユース、防衛、⺠間、海外をしっかり取り、トップラインと利益の成⻑を考えている。 打ち上げ費⽤は使⽤開始後に減価償却が発⽣し、キャッシュアウトの時期は製造のタイミングによるため開⽰は差し控える。
  • Q: AxelLinerの⾚字拡⼤の理由は何か。何が起こると⾚字が減るのか。
    A: ⾚字拡⼤の最⼤の理由は、 当セグメントに属する研究開発費の増加である。 AL事業にはKプログラムとAL Labの2つのビジネスラインがあり、Kプログラムは利益率が⼀定のため、今後いかにAL Labの数を増やせるかが重要となる。定期便化に向けて顧客を獲得し事業基盤を安定させることでセグメント粗利が改善し、⾚字は減っていくと考えている。
  • Q: Exolaunchが買収されたが、今後の打上げや業績計画に影響はあるのか。
    A: 現在Exolaunch社との関係性に変化はなく、継続して友好的な関係を維持している。
  • Q: 宇宙戦略基金の売上および補助金収入は、2027年5月期の計画にどの程度含まれているのか。
    A: 正式な契約締結には至っていないため、現時点では開示を控える。
  • Q: 今発表している『GRUS-3』および高分解能衛星3機、追加の2機で、合計どれくらいの設備投資が発生する想定か?この設備投資には何が含まれるのか?
    A: 「GRUS-3」は約40億円の規模です。高分解能の人工衛星は、最初の3機で約41億円、追加の2機で約35億円となります。これらの費用には、製造費用および打上げ費用がすべて含まれている。
  • Q: 30機分の資金はいつ、どのような手段で調達するのか。
    A: 一時期に全て確保するものではない。事業から上がる営業キャッシュフロー、手元の現預金、借入枠等があり、全体の収益・資金の状況を見ながら適切なタイミングで、デット・エクイティ両方を含む複数の選択肢を検討し柔軟に対応していきたい。
  • Q: 30機で量産が進むと衛星製造コストは下がっていくのか。
    A: 量産化が進めば⾒込みとしてはそのように考えているが、具体的な⽔準はコメントを差し控える。
  • Q: Kプログラムで取り組んでいる衛星間光通信はSpaceX社が展開している。 新規参⼊して優位性はあるのか。⽇本政府以外に顧客はいるのか。
    A: Kプログラムを通じて開発した光通信技術を使った事業化については当社ではなく 、 Kプログラムにも参画するスカパーJSATとNTTの合弁会社であるSpace Compass社が主体となって検討している。⼀般論としてSpaceXの光通信は独⾃仕様に基づくもので業界標準を指向したものではない。加えて、様々な国が独⾃の国家インフラとしてコンステレーションを整備する傾向が明確になっており、まず⽇本政府が投資し、確⽴後に⺠間や外国へ事業展開するケースが多い。Space Compass社と協議しながら事業展開を検討していきたい。
  • Q: アライアンスと引越しの関係性はどうなるのか。 移転後は設計から製造、 検査まで内製化するのか。
    A: 今回7機の製造が実現し、この規模であれば問題なく ⽣産できると考えている。 しかしアライアンス・量産パートナーとの協⼒は引き続き重要であり、今後⽣産台数の増加も想定されるため、協⼒しながら製造体制の効率化‧ 強靭化に取り組んでいきたい。
  • Q: 海外からのニーズについて教えてほしい。特に欧州、アジア、⽶国ではどのようなものがあるのか。
    A: AxelGlobeはこれまでの活動により、かなり⼤型の案件まで提案できるところまで来ている。 案件は豪州や欧州であれば農業系や広域のマッピングがメインである。そして「GRUS-3」の投入により撮影キャパシティが広がり、より広いエリアを短期間で撮影できるようになることで、提案力が高まると考えている。AxelLiner事業に関しては、展示会などで海外のコンポーネントメーカーから「AxelLiner Laboratory」の実証を希望する引き合いをいただいている。今後は打上げまでの期間をより短くするなどして、海外のニーズも確実に捉えていきたい。
  • Q: 今期のAxelLiner事業の宇宙戦略基金に関係する開発費はどれくらいを見込んでいるのか。
    A: AxelLiner事業の宇宙戦略基金の開発費に関しては、現在契約が締結がされていない段階のため、詳細の開示は差し控える。
  • Q: 5年後の売上‧ 利益の規模感はどのように考えているか。
    A: 具体的な数字は控えるが、現状確定している安全保障‧ 防衛省向けコンステレーションに加え、AL Lab、AxelGlobeの海外案件が伸びており、これらを元に⼒強い成⻑を実現していきたい。
  • Q: 変更後のセグメント別損益の⾒⽅と各事業の実⼒‧ 収益性、投資家が注視すべき指標は何か。
    A: 従来AxelGlobe向け⾃社衛星のバス部をAxelLiner事業に計上していたが、より実態に即してAxelGlobeに計上するよう変更し、⾃社衛星向けの費⽤が⾃社衛星側に寄る形となった。指標については、AxelGlobe事業は固定費ベースの事業であるため売上の成⻑が⾮常に重要である。防衛案件は開⽰できない指標が多いが、 ⾮防衛領域は今期は海外事業拡⼤に向けた準備が肝であり、これらの進捗や海外案件の確保を注視してほしい。AxelLiner事業はAL Labの顧客獲得が重要であり、今後のプロジェクト数を⾒ていただきたい。
  • Q: 防衛コンステレーションの売上は資料19ページ記載の通り、要求通りに納⼊されているのか。ペナルティはあったのか。今後の納⼊に対する⾃信を教えてほしい。
    A: ペナルティ等は契約の詳細に関わるため回答を差し控えるが、 当社の想定に対してほぼ計画通り進捗している。
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