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2158・東証グロース・サービス業

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本コンテンツは、ENVALITHが2026年9月に実施した、株式会社FRONTEO 経営陣への取材(インタビュー)に基づき編集・構成したものです。記載内容はいずれも取材時点における経営陣の見解です。

経営者の「言葉」と「ビジョン」

創業の原点とパーパスの浸透度

FRONTEOはリーガルテックAI分野が祖業である。当時、日本企業が海外で訴訟を起こされた際、これを支援する日本企業は存在せず、海外企業に頼らざるを得なかった。訴訟は証拠に基づいて行われるが、それらは日本語のメールや文書など大量のテキスト上にあり、日本語で正しい証拠を短時間で見つけることは技術的に難しく、誤ったものを証拠として提出する事態も生じ得た。本来「法の下で平等」であるべき訴訟が、技術的な問題で平等でないことはおかしいという認識が、創業した直接の動機である。

この理念は事業領域が広がった今も変わっていない。現在の成長領域であるライフサイエンスAI事業においても、医師の経験や能力、患者の居住地によって認知症や精神疾患が適切に診断されるか否かが左右される状況や、難病・希少疾患に関する薬が開発コストの問題で取り組まれない状況など、本来平等であるべき医療が平等でない事例として捉えている。情報社会における様々なアンフェアな状況をAI技術によってフェアな世界へと変えることが、同社の最上位のパーパスと位置付けている。

同社の多くの社員は、それぞれの分野で問題意識を感じており、例えばリーガルテックでは訴訟・犯罪捜査の領域で、創薬分野では創薬の領域で、ブレイクスルー技術がなく研究の停滞を経験しており、AI技術により「企業のために」「患者のために」課題を解決したいという思いを持った人材が集まっている。

5年後・10年後の世界観

同社は、5年後、10年後の世界は更なるグローバル化の進展により、毛細血管が広がるように複雑に絡み合い、不透明・不確実さが増していくと見立てている。その結果世界は大きく2つに分かれるとしており、1つは大勢の動きに追随する「相関関係」で動く世界、もう1つは原因があり結果が生じる「因果関係」で動く世界である。前者はまさに生成AIが活躍する領域である一方、同社は後者にフォーカスし、因果関係を発見するAIを提供していく模様である。

例えば、病気は「皆がなるからなる」のではなく原因によって生じ、犯罪の証拠探索や経済安全保障のサプライチェーンのネットワーク可視化も因果関係に基づくという整理である。しかし、両者はきれいに分離するものではなく、因果関係も正しく見つけられる独自のポジションを築くことを目指している。

成長ストーリーの考え方

TAM(有効市場)と成長の余白

主戦場の規模感

同社が有望市場と捉えているのはサイエンスの分野である。例えば、創薬の世界において研究済みの領域はわずか5%程度であり、残る95%は未開拓であると認識している。未開拓の領域は、人間の思い込みにより手が付けられず、集団心理の中では見つからない領域である。成長分野の市場規模は、医薬品産業全体のマーケットサイズが関与し得る範囲になるとの見方である。

AIによるアプローチの差異

生成AIやロボットが取り組む領域は業務改善・効率化が中心であるのに対し、同社はそれらの効率化も行いつつ、非連続的発見という人間が持つ閃きや暗黙知を活用し未開拓領域に踏み込むという位置づけである。

隣接市場への展開

当面の重点領域は、創薬・医療機器のライフサイエンスAI事業と経済安全保障分野の2分野であり、これらを成長させる方針である。その成長拡大が見えた段階で次の展開候補として、日本が得意な材料(マテリアル)系(半導体材料やその代替品の探索、建設資材の新材料)、食品・化粧品、エネルギーの効率化といった領域を挙げている。既存事業を成長拡大させ、次の領域に進める考えであり、事業拡大には資金調達を伴う展開になるとの認識である。

独自の競争優位性(Moat)

独自の方程式に基づく技術

現時点の圧倒的な競争優位性は技術であり、特に「AIが何で動いているか」という方程式駆動型AIという独自技術を保有している点にあるとしている。この方程式は他社が真似できない技術であるとの認識である。

サイエンス領域での適用可能性

生成AIは「みんなが知っている情報」からしか出力ができず、誰も知らない新たな発見を求められるサイエンスの世界では使えないとの整理である。因果関係を発見し新しい発見、非連続的発見が出来るのは同社の技術のみと考えている。

実績の蓄積

ようやく実績も出てきており、独自技術と実績の組み合わせが今後の市場における競争優位性を形成していくとの見方である。

KPIの先行指標

KPI備考
導入数・案件獲得数2023年7月にスタートし、初年度の年間1件から3年間で年間22件まで増加
導出数・導出パイプライン数同社のビジネスモデルであり、業績への寄与につながる
米国での案件獲得数今年度1件でも獲得できれば、翌年度以降の拡大につながるとの認識。米国案件は日本と比べ収益規模の桁が異なる。また、日本政府との連携も強化していきたい

収益構造と資本効率

売上高拡大のロードマップ

現状の成長率はライフサイエンスにおいても30%成長〜50%成長程度の水準にとどまるとの認識である。今後はブランドの確立と、米国での案件獲得・導出の実現が伴うことで、100%成長が見込めるとしている。

そのために最も重要な取り組みとして、国内における国策企業としてのブランディングの確立と、米国での大型案件の獲得の2点を挙げている。日本で安定的に案件を獲得することを前提としつつ、現在最も注力しているのはこの2点であるとの説明である。

収益性改善のロードマップ

現状ライフサイエンスAI事業の成長率は、30%〜50%成長程度にとどまっている。今後はブランドの確立と、米国での案件獲得、導出の実現が伴うことで、非連続的成長が見込めるとしている。 そのために最も重要な取り組みとして、国内において国策企業としてのブランディングの確立と、米国での大型案件の獲得の2点を挙げている。

資本配分(キャピタル・アロケーション)の方針

優先順位配分先詳細
1オーガニックな成長投資成長分野であるライフサイエンスAI事業と経済安全保障分野への投資を最優先で進める
2株主還元(配当・キャピタルゲイン)配当は安定的に利益を出せる状況になれば実施していきたい。加えて企業価値向上によるキャピタルゲインでの還元を掲げる
3M&A現時点では想定していない

ROE/ROIC目標: 現時点では指標として使用しておらず、今後検討する可能性があるとの認識にとどまる。

リスクへの向き合い方とレジリエンス

事業領域の構造的安定性

創薬・医療機器分野は人間の生死に関する領域であり、どのように世界が変化しても人間が生きている限り需要環境は変わらないとの認識。同社がブレイクスルーする技術を持つ限り、マクロ環境の変動による大きな影響は受けにくい、圧倒的に安定した分野であるとしている。

難度上昇が生む機会

創薬において、容易に取り組める領域は既にやり尽くされ、新しい発見が求められ難度の上昇が進んでいる。海外のAI創薬企業は巨額の投資を行うが成果は出ない中、同社は技術によるブレイクスルーが可能であるため、他社には見えない領域がブルーオーシャンになるとの見方である。

市場認識とのギャップ

AI創薬には巨大なGPU購入やデータセンター構築、巨大なラボなくして成功しないという投資家の見方に対し、サイエンスの成功は全く別のところにあるとの認識を示している。

ダウンサイドシナリオの想定

最悪のシナリオは、技術者の流出であるとしている。技術が競争優位性の源泉であるため、人材の流出が最大のリスク要因との位置づけである。

もう1つのリスクは、掲げるKPI(導入数、導出、米国案件獲得)の達成が想定より大幅に遅れ、競争優位性を確立できずに企業として大幅に停滞する可能性である。

これに対するセーフティネットとして、ライフサイエンスAI事業と経済安全保障分野という2つの成長分野を保有している点を挙げている。両方が同時に立ち行かなくなる可能性は低く、一方がカバーできるとの認識である。現時点では将来の見通しと足元の感触に大きな乖離はないとしている。

ガバナンスと執行体制

役員報酬体系

現在は業績連動の報酬体系であり、業績に対するモチベーションが働く仕組みとなっている。株式報酬についてこれまでは、ストックオプション等で対応してきたが、今後最適な方法を検討していく方針である。

サクセッションプラン

経営者育成は重要課題と位置づけ、内部からの昇格と外部からの登用の双方を継続的に検討・実行している。定期的に社外取締役とのミーティングを設定し、意見交換を通じた経営陣の教育を行っている。新規事業で成長を目指す企業として、新しい分野へ飛び込み、リスクをコントロールし成長させることが重要だと考えている。営業・技術・財務・法務などの視点を持ち、バランスを取って遂行できる人材を育成・採用することが重要との認識である。

ESG・サステナビリティ

マテリアリティ(重要課題)と業績の連動

社会(S): 同社は事業そのものがESGであり、事業の成長がそのまま社会貢献になるとの認識。情報社会におけるアンフェアな状況をAI技術でフェアにするという創業来のパーパスが、訴訟における証拠発見、医師の経験に依存しない診断支援、難病・希少疾患の創薬といった形で具体化している。

「ESGで投資をしても株価が上がらないと言われる中、我々の事業が社会貢献であり、完全に業績と連動している。ESG特化型企業だと考えている」
— 代表取締役社長 守本 氏
環境(E)

将来の展開候補としてエネルギーの効率化や新たな材料の探索を挙げているものの、現時点で環境領域における特段の重点テーマへの言及はない。

ガバナンス(G)

社外取締役との定期的なミーティングによる経営陣との意見交換を実施している。詳細は「ガバナンスと執行体制」に記載の通り。

人的資本経営

人材の流動性が高まる現在の環境において完全な定着は難しいとしつつ、足元ではまずまず定着しているとの認識である。技術者の流出を最大のダウンサイドリスクと位置づけていることからも、人材の維持が経営上の中心課題となっている。

20年以上の事業の中で「優秀な人が優秀な人を呼び寄せる」という循環が働いてきたと認識しており、今後も会社のブランディングをさらに向上させ、成長軌道に乗せ、魅力的な会社という発信を通じて優秀な人材の採用を継続する方針である。

インセンティブプランについては、一般的な社員向けの制度を運用しているものの特別なものはなく、今後新たに設計していきたいとしている。定着率等の具体的な数値の言及はない。

補足:AIの細分化とサイエンス領域における技術の非代替性

投資家に最も伝えたいテーマとして、AIに対する市場の画一的な見方への問題提起を挙げている。OpenAI、Anthropic、DeepSeek等の話題やNVIDIAのGPU・データセンターへの巨額投資に投資家の関心が引っ張られ、資本力の乏しい企業は勝てないと見られている現状に違和感持っている。

これに対し、AIは1つではなく、技術が進展するほど細分化され用途ごとに異なるものになるとの見方である。ゴルフで真っ直ぐ飛ぶドライバーがあってもそのドライバーでパターは打たないように、生成AIのように巨額を投じて作られたモデルでAI創薬を行おうとするのは全く別物であると説明している。フィジカルAIの登場でAIの能力に加えロボットの能力が必要とされ始めたのと同様に、創薬・医療機器を含むサイエンスの世界では全く異なる仕組みのAIでなければ使えないとの認識である。

同社の技術が評価され、掲げるKPIを達成すれば、世界に全く新しい分野を作り出し、1つの大きなプラットフォームになり得るとの見通しを示している。